だが、今はお前の相手をしている暇はない。

そういい刀を鞘へおさめた。



今はお前の始末より、こいつらを何とかせねばならんのだから。

懐に手を忍び込み、あるものを取り出す。


「俺の手元にある物、これが何かわかるか」


視線は私の手に集まる。私が持っているものは、ただの紙ではない。

ヒラヒラと動かし視線を動かす。全部で8枚。


「現委員長、及び委員長代理の権限を剥奪することの出来る申請書だ」


六年、五年の目が見開かれた。まさか、と言いたそうな顔だ。
庄左ヱ門も彦四郎も、もちろん三郎も勘右衛門も、このことについては誰にも話をしていない。四人も驚き顔を見合わせた。


「嘘だと思っているのだろうが、これは本当だ。学園長先生直々にお書きになられた。
現委員長及び委員長代理の働きがあまりにも酷い様ならば、ここに現在の状況を書き委員会の顧問に提出しろ。その後先生方が学園長先生に提出し、それが受理されれば、委員長はそれ以外の一番最高学年のものとする。」


「ま、待て!」
「なんだ文次郎」

さすがにここまでくれば黙っているわけないか。


「何故お前がそこまでやるんだ!!」
「俺は学級委員だ。クラスの手本となるべき存在。そして、俺は学級委員長委員会の委員長だ。クラスの代表となっている者の代表、つまり、この学園の代表を背負っている。腑抜けたお前等を更生させるために日々奮起しているだけだよ」

「それはあまりに横暴すぎるのではないのか!」
「横暴…ねぇ………」

「俺たちの意見もなにも無しにそこまで勝手に決めたってのか!!」
「………」

「お前のやり方があまりにも身勝手だといっているんだ!!」
「身勝手なのはどちらだというのだ!!!」



文次郎の発言ももう飽いた。


先ほどからお前等は、自分の都合のいいようにしか発言しない。

自分を守護するようなことしかいわない。


何故委員会を放っておいたことを謝らない。
何故下級生を放っておいたことを謝らない。


何故、自分の間違いを認めようとしない。



「お前らはこの短期間でどれほどの罪を重ねていたと思っているんだ!!忍者としての心を忘れ!三禁も忘れ!あろうことか己に任された委員会委員長という大事な役目を放棄したんだ!!

これがプロの忍として任された仕事ならば!お前等は"抜け忍"として殺されても文句はないのだぞ!!

自分の仕事を忘れ、あまつさえ"未来"から来たという意味の解らないこのバカげた女に溺れたのは誰だ!!

お前らは一度でも委員会の後輩に頭を下げたか!?一度でも自分の過ちを認めたか!?認めていないだろうな!怒りの原因に気づかず、そこへ突然俺の名が出て、全ての原因は俺だと、そう思い込んでいるのだろう!だが、この怒りの混沌の全ての原因はお前たちだ!お前たちが委員長をいう役目を果たしていれば、こんなことにはならなかったんだ!
何故上級生にもなってそんな簡単なことが解らないんだ!!

俺が横暴だと!?俺が身勝手だと!?ふざけるのもいい加減にしろ!!
委員会のリーダーとして下級生を今まで引っ張ってきていながら、たった一人の女の尻を追いかけるために仕事を放棄し下級生たちに多大な迷惑をかけてきたお前らが、よくそんな口をきけたものだな!そんないい加減な気持ちならば委員長なんかやめてしまえ!忍を志すのもやめて酔生夢死してしまうがいい!

最高学年の忍の卵ともあろう者がこのザマか!恥を知れ!!」






そこまで言い切ると、私は肩で呼吸をするほどに今までためこんでいたことを吐き出していたのだと気づいた。

三郎と勘右衛門と刃を重ねていた仙蔵も、小平太も、もうやめろ。
お前らが何をしようと、その二人には勝てない。



今のお前らでは。





「…立花、潮江、七松、中在家、食満、善法寺。お前らなんかと六年間、友だと、仲間だと思っていた自分が恥ずかしいよ」

「「「「「「!」」」」」」






いつ以来だ。お前らを苗字で呼んだのは。




もうお前等とは友でもなんでもない。







「…桜……」
「やめろ、立花。馴れ馴れしく俺の名を口にするな」

「おい、」
「貴様なぞ、もう何も関係もない。」






ここから、一度やり直そう。


忍になるというのに、俺はお前らに情を入れすぎたのかもしれない。






「三反田、浦風、次屋、神崎、富松、能勢、池田、来い」


目の前に集まる、今、委員会委員長代理を務める後輩に、先ほどの紙を渡した。



「これはお前らに渡す。煮るなり焼くなり、好きにしろ」

「でも、桜先輩、」
「言うな神崎。…こんなことでしか、この学園を、…お前らを救うことが出来ないんだ」





無力な俺を許してくれ。






悲しいな。

ずっと一緒に活動してきた憧れの先輩を

そんな薄っぺらい紙切れ一枚で

突き放すことが出来るなんて。







「これにて、緊急委員会活動報告会議を終了とする。各自解散。必要とあらば今後のことについて話し合え。

 ……俺は部屋に戻る」





一通り、委員長代理達の頭を撫で、私は部屋へ向かった。









「桜先輩」
「来るな勘右衛門」
「いえ、付いていきます」
「来るな」
「側にいさせてください」
「…来るな」

「先輩の部屋で学級委員会を開きましょう。俺がお茶を入れて、お菓子も持ってきますから。」

「……勘右衛門…」



「……庄左ヱ門、彦四郎。部屋に戻ってな。書記お疲れさん」

「…鉢屋先輩、僕等がお茶を入れてきます」
「僕等も、桜先輩のお側にいたいんです…」

「…あぁ、そうだな。…じゃぁ、頼んだよ」
「「はい!」」


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