社会科見学に行ってきます! | ナノ

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「卿には私をくれてやろう」
「いらねぇwwwwwww」







こうして私は松永軍に就職した。







「社会科見学は」
「我々ではなく」
「主に相談しろ」
「それが嫌だから三好に聞いてんでしょ」

長男に肩車されている所に届いた忍術学園からの手紙。中身は後輩をここへ社会科見学に行かせてくれないかという御願いの手紙だった。そういえばそんな話を聞いたことがあったなぁ。先輩方はこぞってこの手紙を拒否されていたとか。別に私はこの手紙を断ろうとも思ってないし、むしろ可愛い後輩たちにまた会える機会があたえられるというのなら喜んで受けたいぐらいだ。だがそれを松永様に相談しろ、というのならば話しは別だ。松永様は私から感じる限り生粋の暴君。鬼とまでは例えないが、あの人はギブアンドテイク精神であり、おそらくこの申し出を受けるとなると代わりに何かを要求されるのは手に取るようにわかる。卿のなにかちょうだいとか言うから面倒くさいのだ。

「あんたたち私が松永様に今迄何を捧げてきたか知ってんの?」
「言わすのか」
「それはあの晩」
「貴様が泣きわめいて」
「ああああああああやっぱり言わなくていい!!」

女の扱いには慣れてそうだなぁとは思ったがくのいちとして失格だと私はあの晩涙をのんだのを覚えている。まさか松永様の皿を割った如きであんなことをされるとは思わなんだ。就職先失敗したかなとも考えたが、主は冷酷非道の松永久秀と悪名高い人。今更転職しようなんて口に出したら首掴まれて爆破されるに決まってらぁ。

「仕方ないなぁ…松永様に聞いてこよ」
「そうしろ」
「我らは此処で」
「続報を待つ」
「ついてきてはくれないのか」

長男に降ろしてもらって、私は仕方なく松永様にお願いすることにした。勝手にOK出して勝手に後輩連れて来て勝手に爆破されたくないし。一年生入ってなきゃいいけど。一年生がここきたら怖くて泣いちゃうんじゃないかなぁ。

「あっ小太郎。松永様見なかった?」
「…」
「えぇっとね、後輩を此処に社会科見学させたいから、そのお願い」
「…」
「流石小太郎!持つべきものは友達だわ!」

小太郎は私が此処へ就職してからしばらくして来た伝説の忍。伝説だか何だか知らないけど私より後に入ってきたら後輩だぞと胸はってそう言ったら小さく頷いた。それ以来小太郎とはよく話すし一緒に遊びに行ったりもする。松永様とか三好にそんな話をすると多少驚かれるが。小太郎は元北条家に仕えていたらしいが、何があってこんな薄暗い所に来たのか。北条の方が良い場所だろうに。

小太郎は松永様は自室におられると行ったので私は其処へ向かう事に。一緒についてきてくれるらしく、小太郎を引き連れ私は松永様の部屋に向かった。

「松永さ……あっ、義輝公!」
「おぉ!紅涙之朋よ!久しいな!」
「ちょっと!もうその呼び方やめてください!」

「ははは!久秀なぞに奪われたその貞操、実に惜しい事をしたな!あのまま予の元へ来ればよかったものを」
「卿も少しは口を慎むことを覚えるべきだ。この名前は私の磨き上げた忍なのでね」

「なんなのこのおっさんたち怖いよ小太郎」
「…」

部屋におられたのは松永様だけではなく、恐らく暇つぶしに遊びに来ていたであろう義輝公もだった。全くどこから入られたのか。さっきまで三好と門の警備してたのに。

過去をたどれば、私は松永様よりも義輝公の方が関わりが長かった過去がある。私は戦争孤児であり忍術学園は自分でバイトして金を稼ぎながら在学していた。その最中、とある忍務で遠出していた時のこと。まるで戦があった直後のように廃れた廃墟を見つけた。私はこういうところには目がないのだ。何がいいってこういうところには死んだ兵士たちが残した刀や鎧やら、売ればかなりの金になるようなものばかりが放置されているからだ。こりゃぁ中々酷い荒れようだ。どれほどの人が死んで散っていったことか。単独忍務だったため此処で生きているのは私だけだろう。なんという仏の数か。見ているのもつかれるな。

「はじめまして。民草の挨拶はこれであっているかな?」

「ぎゃぁっ!!」
「ははは、そう飛び跳ねるな。予は唯の人であり、霊魂などではない」
「あ、そ、そっすか…」

後ろから突然声をかけられて驚かないヤツなどいないよ例えそれが忍者だったとしても!!存分にびっくりして肩を揺らして振り向けば、そこにいたのは私の頭二つ分は大きいであろうナイスミドルがにっこり微笑んで私を見下ろしていた。いつからいたんだ。全く気配なんて、気付かなかった。

「其の方は此処で何をしている。此処はもう戦場ではない。…もしやここに輩でも」
「あ、いや違います。この戦には何も関わっていない人間で」
「ほう。では何故」
「ただの追い剥ぎですよ。使わなくなった刀とか鎧を売って、生計を立てているんです」

追い剥ぎ、という単語にこの人は首をかしげた。何故そのような事をする、と、興味を持ったように訪ねてきたので、学び舎への学費を払うためですと正直に答えた。この人が何者なのかは知らないけど、身に着けた物を見る限りお金持ちの人なんだろうなぁと思った。

「そうまでして、朋はその学び舎というところへ通いたいのか」
「友?あ、えぇ、生きる術を身につけるためにです」
「素晴らしい!未来のため、今を犠牲にするとは」

なるほど、将来生きていくためにしている追い剥ぎという行為は今を犠牲にすると考えるのか。このナイスミドル鋭い所をついてくるな。はははと愛想笑いを零しながらも私はとっとと転がる屍についた刀を持って帰りたいと言うことで頭がいっぱいだった。

「はは、そう急くな。其の方に良い事を教えよう」
「良い事?」
「予の知り合いに、実に珍妙な奴がいる。其の者は宝を集めるのを趣味としている。骨董品から武器まで。欲した者はどんな手を使ってでも手に入れるような奴だ。其処へ行って好きなだけ盗めばいい。此処に転がる物より、余程の価値があるだろう」
「宝っ!」

「…生きて帰れればの、話だがな」

最後の一言が気にはなったが、私の頭の中は宝という単語でいっぱいだ。これでもくのいちの端くれ。忍んで逃げられないなど忍者の恥。だが知り合いの宝を差し出すような真似をしていいのか問いかけたのだが、ナイスミドルは微笑むだけで返事らしい返事を返してくれはしなかった。とにかくそこへ行こうと場所を教えてもらい私はナイスミドルを残し一人飛び立った。学園長先生に忍務報告もせずに私は寄り道に専念してしまっていた。たどり着いた其処は薄暗い館で、いかにもそんな趣味の人が住んでそうな場所だ。此処ならいろんな骨董品とかありそう。屋根から楽々忍び込みナイスミドルに教えてもらった場所へ一直線。降り立ったその場所は確かに宝物庫のように珍しい物ばかりだった。見たことのないような武器、刀、壺。これら一つだけでもかなり価値はありそうだ。委員会の後輩たちを連れて来たら辞書やら辞典やらをとりだして興味津々に眺めている事だろう。

だがその中でもかなりの輝きを放っていたのは一つの茶器。かなり丁寧に手入れしていあるし、おそらく相当の値打ちもんだ。あまり多くは持ち帰れないし、とりあえずこれだけでも失敬しようかな。そう思い腕を伸ばした時に感じた殺気に、思わずゆっくり、その両手を上に挙げた。

「鼠の分際で平蜘蛛の美しさが解るとは、卿は中々良い目をしている」

「…さーせんした」
「悪いがこれはやれんな。私のお気に入りなのでね」

肩をぐいとひかれ無理やり後ろを振り向かされた。今度はダンディーなおじ様かよ!なんて考えているのも束の間。何者だと刀を首にあてられただの追い剥ぎ者だと言えば、おじ様はふむと呟き刀を下した。

「見たところ15程の忍か…。卿は忍術学園という単語を知っているかね」

思わず肩を揺らした。何故忍術学園を知っているのか。学園が危機にさらされるか私が殺される。咄嗟に武器を構え距離をとったのだが、おじ様に攻撃の意思はないらしく刀は下げっぱなしのまま。

「学費のためかね」
「鋭いですね…」
「気概気概。ここにある宝でも売れば確かに在学できようが…。しかしこう盗人を捕らえて逃がすのもどうか…」

まるで捕らえられているという感じはない。宝物庫の中でにらみ合う私達。おじ様はそうだと思いついたように刀を収めて


「卿には私をくれてやろう」


「いらねえwwwwwww」
「そうは言うな。意味が違う」

そう言った。おじ様は己を差し出すと言った。流石にそれはいらないですといえばそう言う意味ではないよと口を塞がれた。つまりはこういうことだ。その忍術学園を辞めて松永軍へ所属しろという、スカウトではない。脅しだ。

「断ったら?」
「そうだなぁ、卿は生きて此処から出られはしないだろう。いや、私も女性を甚振る趣味など毛頭ないが、それを受ければ解脱だと思わないかね」
「まぁ…。あ、私名字名前と申します」
「礼儀正しい子は好みだよ。松永弾正と言う。久秀という方がいいだろうか」

確かに、言われてみればそうである。生きるすべを見つけるために忍術学園へと通っていたが、就職先がこうもポンとみつかるのならそれはそれで良い事だ。しかも松永久秀といえばボンバーマンと名高い大名じゃないか。あぁこれはとんでもない所に忍び込んでしまったもんだ。断れば死。受け入れれば生。こんな選択肢なら選ぶのは簡単だろうが。

「私此処には、赤毛のおじ様にオススメされたんです。好きなだけ持っていけって」
「ほう。恐らくそれは足利義輝じゃあないのかね」
「あしかがよしてる!?!?!?!??!」

「そうとも知らずに話をしていたのか。卿は実に憐察だな」

その後なんだかんだと話をしているうちにこの人実はいい人だわと勘違いして、私は松永様の脅しに乗ることにした。後輩たちと最後の別れすら出来なかったからそこはちょっとさみしかったけど、まぁ生きていればいつかまた会えるだろうと軽い気持ちで、私は学園に向けて手紙を送った。これこれこういう理由で松永軍に捕まりましたが、軍に入れば殺されないらしいのでこのまま自主退学するから安心してください、と。向こうに親がいるわけでもなし、その辺の断ち切りはあっさりしている私だ。


まぁまさか、そんな学園から社会科見学の御願いが来るとは思っていなかったわけで。まだ忘れられてはいなかったんだなぁと、ちょっと嬉しく思ったり。


「社会科見学。卿はそれを望むのかね」
「松永様が良いと言えばですけど。久しぶりに来た学園からの手紙だから嬉しくって」
「それはそれは祥慶だな。まぁ良いだろう。風魔、名前の手伝いをしてやれ」
「…」

松永様からのご許可をいただく事ができたので、私は急ぎお返事を書くことにした。頭を下げて部屋から出ようとしたのだが、その身体は足利公の手により一度止められてしまった。


「名前、傷痍を増やすぐらいなら今からでも遅くない。足利に来ないか?」
「その選択肢の答えは明晰ですけど、生憎ここが気に入ったものですから」

「其れなら仕方ない。また語らおう、紅涙之朋よ」
「えぇ、今度は私から遊びに行きますね」

頭をぐしゃりと撫でて、義輝公は部屋から出ていかれた。かっこいいおっさんだなぁ!!やっぱり足利にいけばよかったかなぁ!!

「卿は可愛い顔をして何人の男を侍らすのかね。そのように罪な忍とは聞いたことがない」
「ちょ、何をそんな誤解を招くような物言いして。勘違いですよ。ねぇ小太郎?」
「……」
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