「あぁっ…!彦、四郎…っ!そこっ、ぁっ、!」
「ここですか?」

「そこっ…!あ、んっ!もっと…!」
「こう、ですか?」

「あぁっ…!ま、って、…!ん、あぁ、あ!」
「春日先輩、気持ちいいですか?」

「気持ち、良いわ…!すごく、いいっ…!あぁっ!」







「………ちょっと…総統…」

「まじで勘弁してください…」







「何勝手におっ勃立せているの!この下郎!!」

「ありがとうございます!!」
「ありがとうございます!!」


「全くこれだから五年は…。嗚呼、ありがとう彦四郎、もういいわ。すごく気持ちよかったわよ」
「はい!お役にたてたようで何よりです!」

両手を広げて春日先輩の背中の上を歩いていた彦四郎は、バランスを崩すことなく差し出された庄左ヱ門の手を掴んでその背から降りた。お疲れ様と庄左ヱ門に出されたお茶に彦四郎は口をつけ、ついで机の上にあった饅頭にも手を伸ばした。春日先輩はそのまま背伸びをして状態を起こしながら背伸びをし骨をバキバキならし、どうぞと自分の膝を叩いた庄左ヱ門のそこを枕に再び体を横にされた。一方俺たちは引っぱたかれた息子を宥めるのに必死だった。三郎に至っては涙目だし。笑顔で。キモい。あ、俺もか。

「総統、彦四郎にマッサージがてら踏まれて悦にひたるのは結構ですけど!俺らの気持ちも考えてください!切実に!」
「勘右衛門たちの気持ちですって?」

「こんな日が高いうちからそんなエロい声出して!私たちをどうしたい気なんですか!責任とってくだs」
「お黙り三郎!そんなもの厠にいって一人で処理しなさい!」
「仰せのままに!!」

庄左ヱ門の膝枕を堪能している春日先輩は覆いかぶさろうとした三郎の腹に「お黙り」といとも簡単に膝蹴りをかました。ついでと思いきりビンタを食らった三郎は、その勢いを殺さずに学級委員長委員会会議室から出て行った。

「喧しいのが一人いなくなるだけでこんなにも会議室は静かになるのね。三郎は悪い子だから此処には必要ないわ」
「そんなことおっしゃらないでください。鉢屋先輩だって、僕らの大事な先輩です」
「そうねごめんなさい庄ちゃん。私を許して」

「怒ってませんよ。僕の淹れたお茶飲みますか?」
「えぇいただくわ。彦四郎、私の側に来なさい」
「は、はい!」

「春日せんぱぁい俺もぉ」
「お黙り!可愛くないわ!出直しなさい!」
「ありがとうございます!!」

春日先輩は珍しく、膝の上に彦四郎を乗せて庄左ヱ門の茶を手にした。いつもならもっと罵ってと二人にせまるはずなのだが、今日はそんなことを一言も言っていない。おそらくその原因としては、委員会の時間だと此処へ入って来たとき、富松作兵衛たち同様、抱き着かれて泣かれたからだろう。最初は二人まで自分に甘えてきてと罵ってくれないという事実にがっかりしていたが、二人の口から出てきた言葉はこうだ。

『春日先輩も、他の先輩と同じく僕らから離れてしまうのかと思いました』

と。二人は学級委員長だからか、他の委員会で上級生が来ないという相談を何件も受けていたのだという。乱太郎から「伊作先輩が来ない」。金吾から「七松先輩と滝夜叉丸先輩を御見かけしない」。彦四郎は珍しく涙目になった左吉から「潮江先輩と田村先輩が来ない。神崎先輩も限界だ」と言われたのだという。見て解る通り、俺と三郎が何ともないのは二人とも解っていたが、問題となっている六年生と同い年の春日先輩は一体どうなってしまったのだろうと、忍務に出ているとも知らずに探し回っていたらしい。シナ先生に忍務に出ていると聞いてから、ただひたすら「正気であってほしい」と祈っていたと、春日先輩は二人から聞かされた。自分の事を心配してくれていた二人を春日先輩は抱きしめて「ただいま」と一言仰った。俺は抱きしめてくれないんですかと問えばお黙りと脛に鞭をいただいたのは蛇足でありご褒美です。

罵られなかった代わりに背中にのってマッサージしてほしいと頼んだのだろう。言葉責めだけであんだけ興奮すんのに。踏まれるなんて先輩からしたらかなりのご褒美だったに違いない。あの時の春日先輩の顔は完全に絶頂目前だったから。

「失礼します。軍曹おられますか」
「あら、その声は八左ね。私はここにいるわ。何か御用?」

「えーっと、良い知らせと悪い知らせがあるんですが…」

開いていない扉の向こうから聞こえたのは八左の声。良い知らせと悪い知らせと聞いて、頭に疑問符を浮かべた春日先輩は一瞬戸惑ったような顔で俺を見たが、俺も意味を推測することができずに首をかしげてしまった。非常事態に備えてか彦四郎は春日先輩の膝から降り、庄左ヱ門の入口を見つめた。

「それじゃぁ良い知らせから聞かせてちょうだい」
「あ、はい。ここあけても?」
「えぇ、大丈夫よ」

春日先輩のその言葉にガタンと動いた扉。だが開いたその瞬間、中に入ってきた獣が三匹。

「一か月前に無事生まれたんです。ついに走れるようにもなったんでお約束通り軍曹に御目通りをと」
「やっ!あら!まぁなんて可愛いのかしら…っ!」

「うわっ!可愛い!」
「子犬だぁ!」
「おぉ、無事生まれてたんか!」

「まだ歩けもしなかったからな。なんかあっても困るから勘右衛門たちにも言えなかったんだよ」

キャンキャンと高い声で吠えながら首輪の紐を揺らして学級委員長室を駆け回っていたのは灰色の毛をした小さい狼。一匹は春日先輩に抱えらえれ、もう一匹は庄左ヱ門と彦四郎に。もう一匹は俺の顔面に飛びついてきた。

「まぁ、まだ歯も生えてないのにこの私の手を噛むだなんて。お前はいけない子ね」

狼は春日先輩の手をあぐあぐと甘噛みするようじゃれ始めたくそ羨ましい。だがどかりと座ったハチに気付いたのか、子狼は三匹ハチの身体に飛びついた。話によると産後、体に何かあったのか、親の狼は小屋から一向に出てこないらしく、今八左がこうして親代わりに散歩に連れて行ってるらしい。生まれたら春日先輩に見せる約束をしたのを思い出し、此処に寄ったのだという。

「だけど八左、子供は一匹或いは二匹かもって言ってなかった?三つ子だったのね」
「えぇ、あの腹の大きさじゃ最高でも二匹ぐらいだと思ってたんですけど…まさか三匹だったとは…」

首につながる縄を三本手にくるりと巻きつけ、可愛い三匹に顔やら手やらをべろんべろんに舐められているというのに八左は困り果てたように眉毛を下げた。なにをそんなに困っているのかと思ったが、その理由は「そこで…」と出た言葉に続く事だろう。


「軍曹!失礼は承知で!!この度は学級委員長委員会の予算が余っていたら!!是非生物委員会に回していただけないかとお願いに上がりました!!」


鞭を食らうのを覚悟の上だったのだろう。三匹を少し離れた場所へやり床に手をついてそう叫んだ。三匹はくんくんと小さく喉を鳴らしながら右往左往しているが、当の本人である春日先輩は突然の事に豆鉄砲を食らったように驚いていた。予想外に多い子狼の数に、予算が足りないのだろう。

「それが、悪い知らせかしら?」
「あ、いいえ……それはこれとは別件なのですが…」

実はと言いながら、八左は一度頭を上げた。

「飼育小屋にいた孫兵の処にさっき、浦風藤内と三反田数馬が来まして」
「あら、それは珍しいわね」

「…己の委員会に六年生が来ないという相談をしに来たんですよ」
「……あぁ、なるほどね」

「なんだ?お前の事を貸してくれとでも言いに来たのか?」
「いやまさしくその通り。こいつらと最近学園内を散歩するのが俺の仕事だったんだよ。この大きさの内から学園の地形を教えておけば良い番犬になると思って。まだ子供とはいえ狼だし下級生にこの仕事を任せて何かあってからじゃ遅いからと思って全面的に俺が面倒見ててな。多分それで、今の時期は生物委員会は仕事って少ないですか?うちの委員会仕切ってくれませんか?と、こうきたもんだ」

「竹谷先輩って薬学に詳しいんですか?」
「あぁー…薬草の栽培なら、あの菜園の手入れは生物委員会の仕事だから種類は解るが、調合、製薬となると話は別だ…。俺にんなことできるわけねぇだろう…」

原因は、あの女のせいだろう。とりまきは主に六年生だ。俺の記憶が正しければ作法委員会は綾部という四年と立花先輩という六年がいて、保健委員会は善法寺先輩。作法委員会は二人がいなくても特に学園生活に支障はでないだろうが、保健室の主でもある善法寺先輩が委員会に出られないというのは結構痛手になることだろう。薬が足りなくなることは目に見えるし、薬の知識がまだそこまで深くない下級生だけでできることなんて、限られているのだから。

「いててて、なんだこいつら。お、八左来てたのか」
「おう三郎。邪魔してるぞ。何処行ってたんだお前」
「厠」
「おいその手の動きやめろ」

「…三郎、丁度良かったわ。簡易な物でいいの。其処から狼煙を上げてちょうだい」

「え?あ、はい、畏まりました」

部屋に戻ってきた三郎は突然の侵入者に警戒したのか狼三匹から奇襲を食らうかの如く足にじゃれられていた。何かを悩んだように顎に手を当てた春日先輩が三郎に狼煙を上げる様に指示を飛ばすと、三郎は縁側から庭に出て懐から狼煙用の紙筒を取り出し火をつけ、その場に投げ捨てた。もくもくと上がる白い煙。その間に春日先輩は狼を愛でながらも時折何かを考える様に少し遠くを見つめていた。

「なんで狼煙?何かあった?あ、閣下」
「閣下。何かありました?」

「さすが五年生ね。話が早くて助かるわ」

雷蔵と兵助が煙を見上げながら会議室前の縁側に来た。この二人を呼ぶためかと思いきや、学園内で狼煙が上がったことを不思議に思って集まって来たのか、会議室前はあっという間に学園生徒でにぎわってきてしまった。やっと春日先輩が腰を上げ縁側に立ったのだが、集まった下級生たちの視線に耐えきれずに頬を染めて「はぁん!」と艶やかな声を漏らして後ろに倒れた。

「総統お気を確かに!」
「見て三郎…!下級生が全員っ…!私を見つめているわ…!」

「僕も見てますよ閣下!」
「お黙り!雷蔵の目なんていらないわ!」
「ありがとうございます!!」

バチンといつもの平手打ち。それに悦ぶ雷蔵を見て下級生たちは「うわぁ」とドン引きの視線を向けた。庄ちゃんと彦四郎も倒れこむ雷蔵に「流石に気持ち悪いです」と声を揃えて言い放った。狼の手綱を離さないようにと春日先輩は八左に言いつけ、集まってきた生徒全員に言い聞かせるように縁側に立ち

「全員!各委員会ごとに整列!無駄な私語は許さないわよ!」

バチンと地を叩きつけそういった。興味本位で集まってきただけだったのに突然の春日先輩からの号令に全員慌てながらも縦一列にびしっと整列した。おぉ、こりゃぁ軍曹だわ。

「保健委員会!猪名寺乱太郎から番号!」
「は、はい!1!」

ついで伏木蔵、左近。そして数馬。春日先輩は鼻で哂って「一人足りないわねぇ」と言い放った。同様に作法委員会に号令をかけるも、こちらにいたっては二人足りない。体育委員も足りない。会計委員も足りない。火薬も一人足りず、用具も足りなければ体育も図書も足りない。全員そろっているのは学級と生物委員だけ。

「御覧なさい勘右衛門。此れほどまでに六、四年生は馬鹿丸出しよ」
「…狼煙に気が付かなかったんですかね」

「気付くわけないでしょう。同じ視線かそれ以下の大きさの獲物を見つめ続けている獣が、空を見上げるなんてありえないわ。一瞬でも目を離したすきに他の連中に奪われたりしたら、あぁ恐ろしい。そんな馬鹿げたことを考え狼煙に気付かないとは、馬鹿で鈍間の上級生達ですこと。同じ年月を過ごしたなんて信じられないわ」

鞭を握る春日先輩の手がぐぐぐと音を立てた。この人の握力一体いくつあるんだろう。俺の俺なんて簡単に握りつぶされそうだ。いやそれはそれでご褒美なんだけど。

今現在正常に動いていない委員会はどこ?と春日先輩が首をかしげると、手を上げたのは保健、体育、会計、作法の四つだった。

「用具は作兵衛がいるから安心なのね。貴女の仕事ぶりはみていて安心するもの」
「い、いいえ、そうじゃねぇんです。実は、」

「なぁに今の煙!火事でもあったの!?」

ぱたぱたと馬鹿みたいに足音を立てて此処へ来たのは、あの女だ。声のする方向へ下級生たちは全員視線を向けたが、春日先輩は視線も向けずに鞭を持つ手にさらに力を込めるだけだった。一方あの女も、俺たち五年が此処へいることが解った途端顔色を明るくしたのだが、その真ん中に桃色装束の春日先輩がいるのを見て、笑顔を一瞬にして消し去った。

「ちょっとあんたくのいちなんでしょう、なんで忍たま長屋なんかにいんのよ!」

「用具委員会、ゴミはゴミ箱に片づけるのが常識よ。こんなところにこんな馬鹿みたいに邪魔なゴミを不法投棄するなんて、用具委員会はいけない子の集まりなのかしら」
「い、いいえ!申し訳ありません!ちょ、て、天女さま、い、今はあっち行ってくだせぇ…!」
「ちょっと作兵衛くんたちなぁに!私はあの女に用事が…!」


「すまん作兵衛、こっからは俺がなんとかする」


「!」
「け、食満先輩…!」

さすがに突然現れた声に春日先輩も驚いたように顔を動かした。その先にいたのはあの女を俵担ぎする食満先輩の姿。突然の事に暴れるのを止めた女は、食満先輩に担がれ姿を消した。春日先輩は作兵衛に疑問の目を向けるも、実は、と作兵衛が小さく口を動かした途端、その口を塞いだのは、戻ってこられた食満先輩のお姿だった。

「留三郎、あんたあの女の尻追いかけるのに夢中だったんでしょう?さっさとあっちへ行きなさい」
「……すまん、お前には迷惑をかけた。…この通りだ、許してほしい」

地に手を付き頭を下げ、縁側に立つ春日先輩に土下座をしたのは、他でもない武闘派用具委員長として恐れられた食満先輩その人だ。食満先輩が誰かに向かって土下座をするなど、学園長先生以外にはありえない事だ。それがいま目の前で起きている。俺は思わず目をこすって二度見した。食満先輩はどうやら、用具委員会の活動に戻っておられたらしい。

………だが食満先輩が正気に戻った理由など手に取るように解る。おそらくあの時、食堂で頂いた春日先輩からの鞭の衝撃だろう。食満先輩に至っては鞭でしばかれるのにくわえ、春日先輩に踏みつけられてもいたのだから。俺だったらあんなご褒美に重なるご褒美に死んでもいいとさえ思えるかもしれない。春日先輩も大体の事は理解したのだろうが、縁側から降りて食満先輩の前に立ち食満先輩の頭をゆっくりと、踏み潰した!羨ましい!くそ!食満先輩そこ代われ!

「此れで何もかもが許されるわけじゃないっていうのはあなたも理解しているわね?」
「っ、あ、あぁ、」
「聞きなさい。命令よ。あなたは己と同室の失態を取り戻すため用具を仕切りながら保健委員の仕事を手伝いなさい」
「春日!し、しかし俺は用具委員の」



「お黙りこの愚図!!お前如きがこの私の命令に逆らうんじゃない!!」
「すまん!!!!!」



春日先輩が食満先輩と共同開発したというあの高い踵をした履物。まさか自分で開発した物で踏みつけられるとは、食満先輩も思うまい。ガッと勢いよく鋭い踵で踏みつけられた食満先輩の顔は無残にも地面に埋めつけられ、食満先輩は見るも無残な姿となった。富松が恐怖故に泣きそうなのはみなかったことにしよう。

「伊作が役に立たないというのなら同室である留三郎が責任を取るのが筋というものでしょう!そんなことも解らないから留三郎は愚図なのよ!反省なさい!」
「すまん!全くもってその通りだ!!」

ふごふごと地面の中から聞こえる食満先輩の声。己の委員長が地面に顔を埋められているというのに元気そうだなんて、まだこの世界を知らない下級生達には何が起こっているのか解っていないのだろう。そうだ。それでいいんだ。お前たちにはまだ早い。

「勘右衛門、会計委員会室から保健、体育、作法、会計の委員会予算が書かれた帳簿と算盤を盗んできなさい」
「仰せのままに」

誰かついて行っておやりと言うと、一歩出たのは左吉だった。左吉の目の下の隈はみたことのないほどに悪化している。話を聞けば、天女が落ちて来てからというもの、今日という日までまともに寝ていないんだとか。へらりと笑って俺の背にくっついた左吉と一緒に屋根裏に入り誰にも気づかれることなく会計委員会の部屋についた。いつもならここを通るだけで「誰だ!」と潮江先輩に気付かれるというのに、こんなに手薄だなんて笑える。左吉に頼み各委員会の今学期の予算案が書かれた帳簿を探してもらい、俺たちは再び春日先輩の元へ戻ってきた。春日先輩は10kg算盤を手に持ち俺が開いた帳簿に視線を滑らせると、素人では弾くのに苦労すると言われている玉をバチバチと軽く弾き始めた。本当この人どんだけ力ありあまってんだろう。

「八左、体育作法保健会計から生物委員会へ、此れほど予算を移動できるわ。これで納得していただけるかしら」

「…なっ!?こ、こんなに!?よろしいんですか!?ありがとうございます軍曹!!これでこいつらをいい環境で育てられます…!!」

若干涙目で春日先輩が差し出した算盤の玉の位置を見て、八左は狼を抱えて喜んだ。バレずに盗めたということで「いい子ね」と頬を撫ぜて貰えただけで俺は先一週間飲まず食わずで生きていける気がする。今の春日先輩超エロかった。三郎こっち睨むな。


「体育、作法、保健、会計は此れより先、連中が正気に戻るまで委員会活動停止を言い渡すわ。働かざる委員会に回す予算なんて微塵もないもの。当然でしょう?何も活動をしない馬鹿が使っていいお金なんてないものね。保健は留三郎が一人でなんとかしてくれるわ。暇があったら手伝ってあげなさい。その他は活動停止。気が回らなくてごめんなさいね。左門、団蔵、左吉、ゆっくり休みなさい」


春日先輩が優しくそういうと、ふっと気を抜いた三人はその場で意識を手放し倒れるように眠った。

「それもこれも馬鹿で愚図で阿呆のあの連中のせいね。塵にも屑にもなりはしない。生きているだけで迷惑ね。…お前もその一人だったということを忘れないで。留三郎はこれから伊作が戻るまで死ぬ気で働きなさい。昼も夜も、休むことなく、作兵衛たちを助け、数馬たちを助け、そして私の命令で動きなさい。解っているわね?私に逆らう事なんて許さないわよ」
「わ…っ!わかっ……た…!」

パシンと飛んだ鞭は食満先輩の首にぐるりと絡み、食満先輩は犬の様な体勢で息も切れ切れに春日先輩を見上げる形となった。クソ羨ましい。




『食満先輩、俺たち側へようこそ』




こっそり食満先輩に矢羽音を送ると、食満先輩はぐっと親指を立てて俺たちに向けた。やっぱりこの人被虐に目覚めていやがったのか。


「私から視線をそらすんじゃない!何親指立てているの!勝手な行動は慎みなさい!!」
「すまん!!!!」

「おっ、食満先輩も堕ちたな」
「思わぬ仲間が増えたな」
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