たとえ敵が暴君でもオンラインでなら勝てる気がするんです | ナノ


▼ Mission2:暴君とのランチを回避せよ

「日和、どこ行くん?便所飯?」
「食堂です」
「は??食堂でぼっち飯とか死にたいの??」
「ぼっちじゃないし…」
「日和に友達とか嘘乙wwwww」

嘘なんかついてない。私はこれからぼっちじゃない飯をすることになってる。乙と笑いながら私の肩を叩いて別の教室に行ってしまったやつこそ本物のぼっち飯だ。あいつこそ友達作ればいいのにってずっと思ってる。私たちは此の学園に入学した初日最初に誓ったのだ。ここで新しい友人をつくるために私達は一緒に飯を食うのはよそうと。そんなことしてたら確実友達なんかできないぞと自分たちに鞭を打つために。あんなくだらない約束なんかするんじゃなかったと今になって後悔してる。ヤツらと一緒にご飯食べたい…。

と、いうよりも、今は私が誰と飯を食べるかについての問題がある。誰って、そりゃぁ、さっきの休み時間に私の可愛いPSPちゃんを持って行った暴君様だ。私と七松先輩には一切のかかわりなどなかったはず。それなのに、非常階段で偶然同じゲームをやってて偶然オンラインで繋がってしまい偶然私が勝利してしまったという偶然が重なってしまい、私は暴君様に目を付けられた。昼飯一緒に食べようとか言ってたから、私はこの誘いに背いたら確実に明日の下駄箱に赤紙貼られる。足に紐くくりつけられて暴君様のあのビッグバイクに引きずり回されるんだと思う。無理。私の人生詰みすぎ。あぁ神様、私は一体何の悪さをしたのでしょうか。助けてください。こんな運命望んでいません。

結局あの後、私は平くんに連絡先さえ教えなければ七松先輩に筒抜けになることはないと思い断固として平くんに私のアドレスおよび電話番号を教えなかった。七松先輩から聞いてほしいと言われたのだがと死の宣告を真顔言う平くんの顔面殴りそうになった。死ね超絶美形ナルシスト。テメェに俺のアドレス教えたら自動的に七松先輩に転送されるシステムってナメてんのかコラ。怖すぎだろ。七松先輩とは今日の今日まで一切お話なんてしたことないし関わったこともないけれど、七松先輩の暴君伝説は良く耳にしているし目にしている。ここら一体の学校の不良はほとんどが七松先輩の傘下だとか、舎弟だとか、ライバルだとか。生傷が絶えない日はないとか。あと此の学園の高等部第三学年のクソビッチは七松先輩のセフレだとか。嫌。もう本当に不潔。あのジャラジャラしたピアスも無理。ズボンのチェーンも無理。茶髪も無理。怖い。鉢屋輩レベルに無理。あの人たち怖い。なんでこの学園進学校の癖に不良多いの。私こんなスクールライフ望んでなかった。なんで学園一の暴君なんかに関わってしまったんだろう。あんなところでゲームなんかやるんじゃなかった。

ハバネロさんってゅぅのゎ。。。

七松せんぱぃのこと。。。

マジ無理。。。

リスカしよ。。。

連絡は来ずとも、PSPちゃんは取り返したい。昼飯食べようと言うのなら教室か食堂におられるはず。まず避けるべき三年のフロアを散策してみたが、七松先輩のお姿は見られなかった。っていうか、一年如きが三年フロアうろつくとか恐縮。とっととこんなとこおさらばしたい。

「おっと、悪い。ん?一年生が何の用だ?」
「アベシッ!!!」

二組の教室をひょこりと覗いてみた瞬間、私の顔面にボフリとぶつかった鍛えられているであろう腹筋。素敵な経験を致しましたと思った途端、ふらつく私の肩を掴んだのはああああああああああああああああああああああああああけまてんぱいではありませんかほんとこのひとかっこいいとずっとまえからおもってたけどあなたのぴあすとかそういうのもほんとうにこわいんでそのおててはなしていただけませんでしょうかへあfだふぁhしだwせdfrtgひゅjきお!!!!!!

「ヒィイイイイイ」
「一年生だろ?その上履き。誰かに用事か?」
「なななんnnあn七松先輩は…」

「小平太?小平太なら今いないみたいだぞ。俺も用事あったんだけどな」
「はい!本当に貴重な情報をありがとうございましたこれにて失礼いたします!!!」
「あ、おい、」

イケメンは女の寿命を吸い取って生きてる気がする。怖い。イケメン怖い。助けて。

食満先輩から貴重な情報をいただき、私は食堂へダッシュした。第二学年のフロアで尾浜先輩とすれ違った時一瞬目あったけど私死亡フラグ建築士だわ。一級だわ。二年の階走りやがってあの一年ブス女殺さなきゃって思ったに違いない。ほんとやだ。死にたい。無駄な汗をかきながらやっとのことさたどり着いた食堂は、スカートの短いビッチと茶髪のリア充であふれかえっておられた。そんな中弁当を持参して食堂にいる私の存在感っていったい何なの。なんで私こんなことになってるの。本当嫌。食堂とか初めて入った。なにここ凄い綺麗。ラーメン食べたい。


「日和!日和ー!」
「アァァァアアア!!」


食堂の上にはロフトのような空間がある。噂じゃ此処は一部の許された最高学年しか使っちゃいけないスペースになっているんだとか。多分委員会の委員長とか生徒会長とか、そういう人しか使えない場所であろうに、七松先輩は其処から私を見下ろしブンブン手を振っておられた。大声で名を呼ばれたって事だけでも心臓に悪いのに、周りの女子から「は?」みたいな目で見られたのも心臓に悪い。あと茶髪の不良たちは肩を揺らしてガタガタと体を震わせた。ぼ、暴君の恐ろしさよ…。みんなどんな目にあったって言うのよ…。

「こっちだこっち!上がって来い」
「………ッス…」

あぁどうしよう、私こんな聖域に立ち入っていいのだろうか。一年の分際でこの聖域に足を踏み入れるだなんて。こ、殺される。ただのブスオタが聖域に足を踏み入れるだなんて…い、一大事件よ……。

「よぉ日和!遅かったな!昼飯買ったか?」
「イ、イイエ…オベントウガ…」
「そうか!なぁこのステージどう行けばいいんだ?」
「……は?」

「あ、そうか私が預かってたまんまだったな。すまんすまん!ここ座れ」
「お、お邪魔致します」
「なははは!そう緊張するな!」

テーブルに足を乗っけてゲームをしているのは私を呼びつけた暴君様その人である。嗚呼いと恐ろしや…。こんな不良とゲームをする仲になるとは…。七松先輩の手によりテーブルに置かれたのは間違いなく私のPSPちゃん。和風な錦鯉のシールでデコレーションされた愛しい赤いPSPたそ。お、おかえり私の相棒!七松先輩に乱暴されなかっただろうね!電源を入れ、正常にゲームが起動すると、七松先輩は満足げに笑ってまた画面を見た。

「ここだここここ。このステージの終了条件が解んなくてな」
「あ、えっとそこ、前のステージでの暗号文が必要で…」
「何?そんなの何処にあった?」
「洞窟とかありませんでした?」
「日和もうこのステージクリアしたのか?」
「結構前に…」
「何!?早いな!」

格ゲーなのかRPGなのかなんなのか解らない糞ゲーだと密林では散々罵られていたけど、いざ手に取ってみれば結構面白いゲームだった。最近はレビューで決めつけてやらない人が多いけれど、私はそれでも面白そうだと思ってポチッた。これが案外面白いゲームだったのだが、いかんせん仲間がいない。皆スマホゲーかDSばっかでこれをやっている人に出会ったことがない。それは七松先輩も一緒だったようだ。

「私以外にこれやってるやつあんまり見かけなくてなぁ。っていうか、女でこれやってるやつ見たことなかったからつい声かけてしまった!迷惑だったか?」
「あ、えっと、その、」
「悪かったなぁ持ってっちゃって。授業中暇だったろ?」
「い、いいえ、あの、ほんと、大丈夫ですから」

授業中暇だったとか。なんで私が授業中にやってること前提で話すすめてんだこの人。


「なんだ、ゲームの話してた時は普通にしてくれたのに、普通の会話は挙動不審だな!」


やめろーーーーー!!!コミュ障にそんな酷な事言うんじゃぬえーーー!!相手が暴君で普通に会話できるわけなかろう!!

「そ、んなこと、ないですけど…」
「じゃぁ暗号文の場所教えてくれないか?」
「洞窟の奥にある祠の裏調べたら出てきますよ」
「ほらみろ」
「んんんんんんんんん」

七松先輩と普通に会話とかミッションきつすぎ。このゲーム終わらないと思う。詰んでる。


「小平太……」

「おぉ長次遅かったな!」
「……?」
「あぁこいつか!あのゲームやってることを知ってな!招待した!」

「…中在家長次だ…」
「アッアッ…エット……」

「日和だ!久保日和!一年で滝夜叉丸のクラスの女らしいぞ!」

何で私の名前を、と思いきや平くんからフルネームを聞いたらしい。やばい平くん早い段階で殺さなきゃ。

中在家先輩はどんと大きな弁当箱をテーブルの上に置いた。委員会で遅れたとそういい弁当箱を開くと、七松先輩は嬉しそうに受け取った割り箸を割った。えっ、なに中在家先輩七松先輩の分までお弁当作ってる系男子なの?まじで?っていうか中在家先輩料理上手くね?これ中在家先輩の手作り?なんなのこれ?女子?女子なの?どうする兄ちゃん、処す?処す?お前も昼飯食え!と七松先輩に背中を強く叩かれはぁなんて軽い返事をし、バッグを開けてお弁当箱を取り出した。中在家先輩の重箱お弁当に比べたらこんなお弁当地味ですよねこんなのが一緒に飯食っちゃってすいませんっていうかなんで私こんなVIP席で地味なお弁当広げることになったんだろう。

「……美味そうだな…」
「いいえ本当に中在家先輩のお弁当に比べたらそんなこんなクソお弁当なんかそのjfふいふぁいhぢう」
「…そんなこと…ない……」
「ヒェェエエエエ」

中在家先輩優しすぎツラい。

むしゃむしゃと手を止めず中在家先輩の重箱をあさる七松先輩はゲームをやりながら箸を進めていった。マナーに厳しそうな中在家先輩もこれにはもう慣れたのかなんなのか解らないけど普通にいただきますと手を合わせて箸を取った。アッ中在家先輩実はピアス空いてんだ怖い。なにこの顔の傷知らなかっためっちゃ怖い。これ切り傷ですか刀傷ですかなんなんですか。

「お!日和のエビフライ美味しそうだな!」
「あ、どうぞどうぞ」
「いいのか!ありがとう!」

弁当箱に横たわった一番メインだったエビフライは暴君様の口の中に吸い込まれていった。す、すげぇ、あのエビフライ一口で食いやがった。し、尻尾まで。こ、この野郎と少し恨みながら己のお弁当に箸を向けると、中在家先輩はズイと中在家弁当を突き出してきた。何が何やらと思いながらも箱の中には私のよりも大きいエビフライが入っていた。ま、まさか代わりにこっちのを食えと言うのか。中在家パイセンまじパネェッス!!!!!!鬼カッコイイッス!!!!!!!!!!!抱いてくだーーーーーさーーーーーーーーーーー!!!!!!

「日和ここか?」
「あ、そこですその裏に」
「あぁあったあった!これどうするんだ?」
「さっきのステージで宝箱出現するんでその謎解いた答え入れて…」
「それはどこにあるんだ?」
「それはランダムで出てくるみたいなんでどこだかはわかんないッス」

そうかと言いながら七松先輩は紙ナプキンにボールペンで計算式を書くように謎解きを始めた。答えは覚えているけど言わないでおこう。答えを聞かないところを見る限り七松先輩割と真面目だ。偉いと思う。

しかし箸をおいた中在家先輩は、制服の内ポケットからPSPを出して、



【 長次 さんが ミッションに 参加 しました 】




「!?」




私と七松先輩がつけているゲームと同じ画面をつけたのだった。



「……私も…一緒に…」
「アッアッ……」


「長次は強いぞ!私よりレベル高いからな!」




Mission失敗

prev / next

[ back to top ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -