前後左右囲まれました

「ねぇ名前今年はどうする?」
「私はなんでも。萌衣は何食べたい?」

「私去年の名前のローストビーフ食べたーい!!」
「中抜きも焼くよ?」
「食べれるわよそれぐらい。名前は?今年のケーキ何がいい?」

「フルーツ一杯のタルトがいい!!!!」
「じゃぁ名前の大好きな桃一杯乗せるわね」
「イェエアアァアアアアアアア!!!……おい何見てんだよ」


「俺らも仲間に入れろください」
「萌衣との時間を邪魔するな断る」


萌衣の前の席の人の椅子を借り私は其処に腰をおろしていた。後ろの席の萌衣の机の上で今年のクリスマスについてクリスマス料理特集の本を見せあいながら今年のディナーの予定をたてた。ありがたいことに我が学園の寮は小さいながらキッチンつきである。二人でクリスマスパーティーをするのに必要な料理位作れるほどには余裕がある。毎年のことながら私は料理を。萌衣はミニスカタンクトップエロサンタ衣装とお菓子担当である。萌衣ちゃんの手作りお菓子が食えるとあってイベントごとには毎度の事感謝せねばならない。バレンタインとかまじ天国。

「お前らは食堂のパーティー参加しろよ」
「そっちに誘ってよ」
「嫌どす」

そんな私たちの会議を興味ありげに、萌衣の後ろからこっちを見ていたのは、言わずもがなクラスメイトであり友人の三之助と作兵衛と左門である。

うちの寮では男子寮女子寮に別れてはいるが、クリスマスには双方どちらかの食堂にてクリスマスパーティーをすることになっているのだ。参加は自由だがほぼ立食。業者が入ってあの広い食堂がパーティー会場を化すのだ。花やらなんやらをド派手に飾り付けられる。まぁあれも学園長先生の趣味なんだろうけど。

「作兵衛たちって毎年クリスマスあれ参加してんの?」
「こいつらが暇だっていうから仕方なくな。でも俺らは行ってもすること何もないから飯食って帰ってくるだけだ」

「ホモ乙」
「ホモじゃねぇよ!!」
「ほんじゃぁ早く彼女ぐらい作れや」

机の上にあるポッキーを口に運びながらチキンとローストビーフ以外に何を作ろうかとメニューをぱらぱらめくっていた。

「名前、僕はこれ食べたいぞ!」
「左門静かに」
「なんでだ!!作ってくれ!!!」
「今度な」

「クリスマスに食べたいんだーー!!」
「うううるせぇお前らの分はないのー!!!」

私と萌衣は今まで、その食堂のクリスマスパーティーに参加したことはない。いや、一度はあった。だけどクリスマスの日は食堂のおばちゃんが帰省しているためあそこは空。その日の料理は学園長先生のポケットマネーにより全て出前なのだが、まぁそれが美味しくない事楽しくない事。一年目は尾浜先輩と鉢屋先輩に誘われたから行ったが、料理がおいしくなくてやめた。私たちは食堂のおばちゃんの料理により舌が肥えている。出前も美味しいっちゃ美味しいんだが、大川の食堂で食べる味ではない。みんな場の空気に酔っているからか料理の味など気にもとめないのだろうが、萌衣も同じような事を感じたらしくつまらなそうな顔をしていた。キモい男にたかられてて本当に可愛そうだった。全員殺したかった。
その日はドレスコードだったためちょっと派手な格好だったにも関わらず、二人でパーティーを抜け出し近所のスーパーに駆け込み料理に必要な材料を全て買い込み、二人だけで改めてクリスマスパーティーを執り行ったのだった(何故か尾浜先輩たちにバレて部屋に奇襲をしかけてきた)。

それにより、去年もクリスマスパーティーには参加していない。今年ももちろん、そのつもりだ。


「みんなー!今年のクリスマスパーティーの招待状貰ってきたよー!ビンゴの用紙も入ってるから無くさないでねー!」

先生から預かって来たのか、クラスメイトの女子が赤い封筒を手に教室に入ってきた。皆待ってました!と言わんばかりにその子に群がったのだが、私たちは知らぬ顔でメニュー選びを続けていた。子犬の様な顔して机にてをかける左門のベビーフェイスには絶対に騙されない。っていうか萌衣が死にそうだからやめて。

「と、富松くんたちも、どう?」
「あぁ、貰っとく」
「ありがと」
「すまんな!」


「う、ううん。名前達は?今年はどうするの?」

「パス。バイトあるし、冬休みの宿題終わらせるから」
「私も今年はパスぅ。宿題教えてもらうのぉ」

「名前も萌衣も去年も出て無かったよね?いいの?」

「ごめんね、冬休みは後半忙しいから早く終わらせたいの」
「私も名前に見てもらわないと危ないからぁ。終わったらもちろん、ちっちゃく二人でクリスマスするよ」

「そっか、それならいいけど。真面目だねぇ。じゃ、これは先生に返しとくね」
「しくよろ」

料理が不味いからクリスマスパーティーには参加しないなんて、言うわけがない。そう言えたらどれだけ楽な事か。友人は本当に私たちが勉強するとでも思ってるのか招待状の封筒を持って教室から出て行った。


「萌衣ー……」
「あぁんごめんね左門くん、クリスマスはいっつも名前と二人で過ごしてるから……」

「やめろ左門、テメェそれ以上その顔で萌衣誘惑したら殺すぞ」
「名前…」
「死ね三之助、テメェの上目使い汚ぇんだよ」
「びっくりするほど冷たいな」

「名前と萌衣のクリスマス料理食いてぇ」
「ははっ、いつかな」


冷たい酷いとぶーぶー飛ぶ苦情を右から左へ受け流し、お菓子を口に含みながらチャイムが鳴るのを待った。チャイムが鳴って先生が入ってきてまずまずの成績表を受け取り、HRも終わったところで私と萌衣はさっそくスーパーへ買い出しに向かうため駐輪場へ急いだ。

「あ、名前!萌衣ちゃん!ねぇクリスマスなんだけどさぁ、」
「ごめん数馬藤内孫兵、詳しいことは作兵衛たちに聞いて!」

「え!?ちょっと!?」

廊下ですれ違った三人にも適当に別れを告げ、玄関へ。自転車に跨りながら風をきっていると、萌衣は左門とも過ごしたかったなぁと今世紀最大に寂しい台詞を口にしたのであった。寂しいこというなよ、今まで二人で楽しくわいわいしてきたじゃないの。男がいても私優先してたじゃないの。恋とは恐ろしいなぁ……。左門まじで恨もうっと。




そして当日、とりあえず口には出したので午前中は二人で冬休みの宿題を片づけることにした。そんなに量ないし簡単に終わる物だらけだけど。
終わってすぐ、各自の部屋に戻り私と萌衣は夜の準備に取り掛かった。六時間もあれば出来上がるだろう。萌衣もお菓子作るの大変そうだしな。午後丸々使った方がいいいでしょう。

作業中に『本当にパーティー来ないの?』と孫兵からメールが。行かないよと返事をすると『二人が来ないとつまんないじゃ〜ん><』と女子かと言いたくなるほどの可愛いメールが数馬から。『今からでも招待状貰ってきなよ!』と藤内から来た時点で、あ、この3人今一緒に居るなと察した。多分部屋で映画鑑賞会でもやってるはず。そういえば次は天使にラヴソングをを見るとか言ってた。今日はそれかな。一斉送信で『はやく彼女を作りなさい』と送信してマナーモードに。ケツのポケットにケータイをしまって私は料理を再開した。


時間がたつのは早いもんで、あっという間に日は沈んでいた。

萌衣じゃない反対側の部屋からドアを開く音が聞こえた。もう食堂のパーティーの時間だろうか。ヒールの音がしたってことは、隣の部屋の友人は出かけたという事かな。チンッと電子レンジが鳴り、開くといい感じに焼けた肉が。おほほ私事で大変恐縮なのですが、めっちゃ美味そうですはい。


「名前ー!ケーキ焼けたわよ!開けて開けて!」
「待ってましたー!」

インターホンという存在を無視してドアを叩く萌衣ちゃんの声に急いで私はドアを開けた。皿に乗った無駄にデカいケーキを手に持ち部屋に入ったかと思いきや、また自分の部屋に戻って別のお菓子を次から次へと持ち込んだ。まぁこんなに作っちゃって向こう二日ぐらいお菓子には困らないな。私はというと中々早い段階でできあがっていいため部屋を掃除して申し訳程度に飾り付けをしていた。ちっちゃいツリーもテレビの横に飾ったし、完璧。

「じゃーん、どう?今年はガーターもおまけで買っちゃった」
「俺の一眼は何処だ!!!!」

トイレから出てきた萌衣ちゃんは毎年のことながらエロい足とおっぱいを晒すいやらしいサンタ衣装を身にまとっていた。死ぬほど可愛い。俺のシャッターが火を噴いてる。ベッドに寝転んで撮影に応じる萌衣の心の広さヤバイ。犯しそう。

食べよう食べようと萌衣がテーブルに這い寄り料理をみて目を輝かせた。炭酸ジュースをカップに注いで、メリークリスマス!とカップをぶつけて一気に飲んだ。

「いやーん美味しい!これ本当に美味しい!」
「いやー萌衣のお菓子相変わらずヤバイ」
「先に食事済ませたら?」
「萌衣の料理から食べたいの!!」

己の作った食事より萌衣のお菓子から。シュークリームを口に運んで幸せな気分になるなんて萌衣が作ったからに決まってる。萌衣のお菓子にミニスカエッチな萌衣。此処が私の天国か。


「あ、そろそろクリスマスプレゼント交換しよ!」
「おけー!ちょっととってくるね!」

萌衣がそこそこ大きい紙袋を取り出して私にそう言った。そういえば私も用意していたのだった。キッチンに隠しておいたからとってこなければと腰を上げたのだが、




ピンポン




と、控えめにインターホンが鳴った。時計を見ると、時刻は19:30。非常に嫌な予感がする。不思議そうに玄関を見つめる萌衣を背に、ゆっくりドアを開くと


「動くな、手を上げろ、寒い、大人しく部屋にいれるんだ」
「闇討ちとは卑怯なり……!」


開いたドアの隙間から、ぬっと刀の切っ先が入ってきて私の喉元を捕らえた。

「なにしてんだよ孫兵…」
「もうあそこ飽きたよ。名前と萌衣の料理が食えるならこっちに来たい。お邪魔します」

「よう邪魔するぞ名前」
「お邪魔します!」
「いい匂いする」
「萌衣ちゃんやっほー」
「腹減ったー」

「あ〜〜!左門くん!!」
「コラコラコラコラコラ〜〜〜〜!!!」


どうやって女子寮のセコム突破したどうやって部屋にたどり着いたどうして今お前らここにいるんだ!
ぞろぞろと勝手に我が聖域に侵入してくるドレスローブに身を包む男子六人に頭痛が痛くなった。無理。なんでこっちきちゃったわけ…。


「おぉ!萌衣はサンタさんか!可愛いぞ!」
「もっと言って!見て触っていいのよ!!」

「障るな馬鹿左門!触った瞬間手首切り落とすぞ!!」

「落ち着けよ名前。ほらビンゴで当たったシャンパン持って来たぞ」
「食堂の飯まずいから手土産に菓子も買ってきた」
「大丈夫僕ら此処に来たこと一応小松田さんの許可とったから」
「まぁ先生方にバレたらそこそこまずいけど」
「プレゼント交換用のプレゼントもあるから。頼むからこっちに混ぜてくれよ」

孫兵の腰にぶら下がった刀はどうやらビンゴで当たった景品らしい。なかなか高そうな模造刀だが、いらないとたった今私のベッドの上に投げ捨てた。殺すぞ持って帰れ。

話を聞く限り、この六人がそろったことが非常に珍しかったらしく、会場がちょっとザワついていたらしい。あ、三年のあの連中揃ってる、みたいな目で見られていて、居心地が悪かったんだそうな。まぁ本人たちはこうおっしゃっておりますが、恐らくそれ、女子はナンパしようと、男子は話しかけようとしていただけでしょうね。残念だけどお前らイケメンだから、ドレスローブに身を包んで魅力がアップしただけだよ。安心しなよ。だからこっち来なくてもよかったのに。

ビンゴ大会も途中で段々残念な商品になってきたため、ついに退場を決意。そのまま手土産を買いに買い込み私の部屋に突撃したらしい。いい迷惑である。

「……あぁ解った解った…。じゃぁもう……いいよ好きに座りなよ…」

「よし!名前の許可が出たところでプレゼント交換しよう!」
「安心して名前、こういう時のために予習はしてある!」

「黙れ藤内、確実に此処に来る予定で買っておいたんだろう許さない!!」

萌衣の許可もとり、結局こいつらを交えてクリスマスパーティーは再開することになったのだった。


あぁ、やっぱりこういうことになるのな………。

早く彼女作ってください……。






Happy? Merry Christmas




「おっ、これ誰のだ?」
「アッー!それ萌衣用に買ったプレゼントだったのにwwwよりによって作兵衛の手にwwwwww」

「えっ中身なんだったの?」
「メイド服」

「!?」

「着るしかないよ作兵衛」
「おぉ見たいぞ作兵衛!」
「ジュンコも見たいって」
「早く来て見せてよ」
「化粧してあげようか?」
「富松くん化粧は私に任せて!」
「部屋貸してやってんだ、着ろよ」

「うわああああああああ!!」

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