「名前、勘右衛門くん、入るz………あれ?勘右衛門くんは?」

「勘ちゃんなら私のブレザーの中ぞ!」
「平仮名ねえちゃんたべれたー?」
「残念ながらそこは私のほっぺだ!」
「あれー」

「なにやってんだお前ら…」


おやつにと出されたケーキを今勘ちゃんと必死で二人羽織で食べいているところに、ガチャリと扉が開き、利吉兄ちゃんが部屋に侵入してきた。私の背中がもぞもぞと動き、ぷはっと声が聞こえた。多分勘ちゃんが顔を出したんだと思う。
座っている私の座高と立ってる勘ちゃんの身長が一緒ぐらいとか可愛すぎてハゲる。ツラい。

二人羽織は見事に失敗しまくり、私の口の周りは今生クリームだらけである。それを見た勘ちゃんが「もったいないー!」と食べようとしたがそれをすると私の理性がブレーキをかけられなくなってアグネスが動くと察して私は大丈夫だよとティッシュでふきとった。


「名前、話がある。降りてきなさい」
「ん?」

「かんちゃんはー?」
「勘右衛門くんはちょっとここで待っててくれるかい?名前の分のケーキも食べてていいから」
「らめぇ!!」

「平仮名ねえちゃんのはたべないよ!」
「勘ちゃん良い子!!ほんじゃちょっと待っててね」
「はいー」


天使を部屋に残し、少々怒ってるのかな、と思っちゃうような利吉兄ちゃんの後ろを追った。扉を閉める瞬間手をふる勘ちゃんの可愛さに私の心拍数は5ぐらい上がった。

階段を下りてリビングに入ると、おぉ名前、と父さんが口を開いた。帰ってきてたのか、気付かなかった。
座れと利吉兄ちゃんに椅子をひかれ、私は着席した。なにこれ私怒られるの?また?男?今度は何持って来たの?チェーンソー?ごめんね?


「これがなんだかわかるか?」


父さんにスッと出されたもの。それはチェーンソーではなく、ただの封筒だった。差出人は、


「……叔母さん…!?」


勘ちゃんの、お母さんからだった。


「…さっきポストに入っていたのを見つけたの。中身がどんな内容だろうと、これは私たち家族で見るべきだわ…」
「それで勘ちゃんは部屋で待機なのね」

「勘右衛門くんはどうしてる?」
「今日も天使だよ」
「そうか」


そうかじゃねぇよ。

開けるわよ、とお母さんが封筒を手にして、ぱりぱりと封筒を開いた。なぜか緊張する。
引き取りに行きますとか、書いてあるのかな。なんだかなー。それもそれでどうなんだろう。やっと仲良くなれたのにおばさんの都合でまた勘ちゃんあっちいったりこっちいったり。私が言える立場じゃないと思うけどそれもかわいそうだなぁ。

父さんは腕を組んでお母さんからの言葉を待ち、利吉兄ちゃんはまだ少々怒っているように眉間にしわを寄せっぱなし。そして私はまだ少々口の周りに生クリーム。なにこれ私だけ場違い。ティッシュどこ。

腕を伸ばしティッシュで生クリームをふき取りゴミ箱にそれをポイッと捨てると、お母さんははぁとため息を吐いて便箋をテーブルの上に置いた。



「……今、福岡にいるらしいわ…」

「What!?」


なんでそんな遠いところに…!?

置いた便箋を利吉兄ちゃんがかっさらうように奪い取り、中身を読んだ。父さんはハァと同じようにため息をはいて頭に手を当て、うーんと声を漏らした。
お母さんが何も言わないということは、近いうち迎えに行くという内容でもないのだろう。

手紙の内容が気になるわけじゃないけど、なぜ勘ちゃんをほっといてそんな遠くに行ってしまっているのか。さっきはあぁ考えたけど、勘ちゃんを迎えに来る気持ちはないの?なんなの?あんたの子供でしょ?なんで早く迎えに来てあげないの?

これじゃ、お母さんを待ってる勘ちゃんがかわいそうだ。


「…私、迎えに行った方がいいかしら……!」


お母さんがそう言うと、父さんもそうだなぁ……と小さく声を出した。




…のだが、






「行かなくていいです!!」






便箋と一緒にテーブルをバンッ!と叩いたのは、隣の利吉兄ちゃんだった。



「一体叔母さんは何を考えておいでなのですか!子供をこんなに長い間ほっといて…!迎えに来るという内容かと思いきや、遠くにいる!?だから勘右衛門くんを今しばらくみていてくれ!?これはあまりにも無責任すぎるのではありませんか!!」

「り、利吉、」

「相手は母上の妹の手前勝手なことは言えませんが、勘右衛門くんは叔母さんの自分の実の子供でしょう!それなのに手紙を出すだけで早く迎えに来ようという意思すらも見せない!?こんないい加減な人に、まだ先の長い小さい子供を引き渡すわけにはいきません!!」

「利吉…」

「せっかく勘右衛門くんが心を開いて、幼稚園でも友達ができて、こうして名前とも仲良く過ごしているというのに、こんな人、母上自ら探すなどおかしい話です。本当に勘右衛門くんを愛しているというのなら、叔母さん自分から迎えに来させてください。それぐらいの誠意を見せてこないなんて……これでは今まで自分の時間を削って必死で世話をしてきた名前が報われないではありませんか」


「利吉兄ちゃん…」


「これ以上、まだ心身小さい彼に負担をかけるなんてことは絶対にさせません。養育費が足りないというのなら足りない分は私が出します。そして今まで通り、彼は名前が面倒を見ます。……な?」

「ウィッス」


最後の「な?」は9割脅しだったが…………今回ばっかりは利吉兄ちゃんの意見に賛成だった。叔母さんのことは小さいころに逢ったぐらいで記憶は正直言って曖昧なのだが、とても優しかったというのだけは覚えている。なのに勘ちゃんをほっといて遠くで暮らしているなんて。信じられない。勘ちゃんはどうするのよ。一人で叔母さんを待ってるのに?それなのに迎えに来ないの?
手紙を読んだら内容によってはブチ切れてしまいそうなので、利吉兄ちゃんのこの態度で内容は大体把握できた。利吉兄ちゃんがマジで怒るなんて私に斧が届いたとき以来だ。


「では、この話はこれで終わりでいいですね。今まで通り、勘右衛門くんは名前が世話をします。私はこれで」


利吉兄ちゃんは椅子から立ち上がり、ギシギシと階段を上がっていった。


「…利吉があんなに怒るとはなぁ」
「しょーがないよ父さん。利吉兄ちゃんも勘ちゃんのこと気に入ってるし」
「今回は、利吉の意見でいいわね」


じゃ、そゆことで、と私もリビングを出て部屋へ戻った。んー、このことを勘ちゃんにも伝えるべきなのだろうか。伝えた方がお母さんは無事だと安心させられるけど…でも早く帰りたいという無駄な期待させちゃっても申し訳ないしなぁ……。



「かーんちゃんっ」
「平仮名ねえちゃん…」

ひょっこり扉から顔を出すと、さっきの元気な勘ちゃんとはうってかわって、凄くどんよりした顔をした勘ちゃんが座っていた。
どうしたと声をかけようとすると、勘ちゃんはぶわっと一気に涙を目にためて私の腹に飛び込んできた。


「か、勘ちゃん?」

「やだー!!かんちゃん平仮名ねえちゃんと離れたくないー!!」

「か、」

「かあちゃんかんちゃんのこときらいになっちゃったんだ…!だからっ、だからかんちゃん、平仮名ねえちゃんとっ、いっしょに、いるのに…!!かあちゃんのとこっ、!いきたくない!平仮名ねえちゃんがいい!!平仮名ねえちゃんがいいっ…!!」


もしかして、さっきの会話を来ていたのかもしれない。私は一瞬にして体が強張ってしまった。
まさかあのディープな話を聞かれていたのは。多分トイレに降りてきてとかで聞いちゃったのかな…oh……そりゃ大変だ…。

抱き着く勘ちゃんの頭を撫で撫でしながら名前を呼ぶも、もう勘ちゃんは私の家から追い出されるとでも思っているのか今までにないレベルにギャン泣きしていた。それを聞きつけた利吉兄ちゃんと父さんとお母さんが私の部屋の前に集まるが、勘ちゃんは一向に泣きやむ気配がなかった。


「勘ちゃん、」
「やだやだ…!かんちゃん平仮名ねえちゃんといっしょがいい……!!」

「…勘ちゃん、勘ちゃんの母ちゃんは勘ちゃんのこと嫌いになったわけじゃないよ」

「うそだよー…!かんちゃんのこときらいになっちゃったんだよ……!」
「んーん、嘘じゃないよ。だって、勘ちゃんのこと必ず迎えに来るって平仮名姉ちゃんたちと約束したんだもの。勘ちゃんのお母さんは嘘つかないでしょー?」
「……っ、」


涙と鼻水で制服が汚れてしまったことなど気にしない。どうせブレザーは生クリームだらけなんだから。もうクリーニング出してくるわ。


「勘ちゃんのお母さんは絶対に勘ちゃんのこと迎えに来るよ」
「…」

「…勘ちゃんはお母さんのこと嫌い?」

勘ちゃんは私の服をギュッと握ったまま、首を思いっきり横に振った。

「じゃぁ勘ちゃんがお母さんのこと信じてあげなきゃだめじゃん。お母さんは勘ちゃんのこと大好きなのに、勘ちゃんがお母さんのこと嫌いじゃ意味ないでしょ?でも勘ちゃんは、お母さんのこと大好きなんでしょ?じゃぁ、お母さんのこと信じて待ってよ?ね?絶対に迎えに来てくれるから!」


後ろのテーブルに残っていた私のケーキのイチゴをフォークで突き刺し、勘ちゃんの口元に持って行った。勘ちゃんは洋服の袖で涙と鼻水をぬぐって、

「うん!」

いつもの笑顔でぱくっとイチゴを口にした。


「よーし!!ケーキを食べたら三郎くんと雷蔵くんとハチくんと兵助くんを呼ぼう!!そしてコヘレンジャーごっこをするのだー!!」

「コヘレンジャーごっこするー!!」

「勘ちゃんなにがいい?」

「かんちゃんブルーがいい!!さぶろーはレッドでー、らいぞーはグリーンで、へーすけはパープルでー、はっちゃんはイエローね!」

「じゃぁ名前姉ちゃんはショッカーでいいや!!!!」

「平仮名ねえちゃんはかめんらいだーセンゾウね!」

「こ、孤高の堕天使を名前姉ちゃんがやっていいの……!!」





………こうして笑顔で私のことを大好きと言ってくれているけど、きっと本当のお母さんが戻ってきたら迷わずそっちにいっちゃうんだろうなー。

悲しいけど、おばさんには勘ちゃんのためには早く迎えに来てほしいなー、なんて。




「……あんま遠く行かないでね…」

「へー?」

「んーん、勘ちゃん大好きだよーって!!」

「かんちゃんも平仮名ねえちゃんのことすきー!!」



ッックアァァァアアーーーーーーーーーーー!!!!!

私の天使ィイイィイァッァアアアアアアーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!!!














愛してるぜマイ・ボーイ!

ずーっとずーっと愛してあげる!











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ちなみに私の中で勘ちゃんはレンジャーよりライダーより
pkmnとかゆーぎohとかトレーディング系が好きかなーなんて!!

好きーー!!勘ちゃん大好きーーー!!!!!!!!
ショートケーキ頬張る勘たんペロペロペロペロペロペロ!!!!!!!!!!!


てなわけで第一位おはまかんえもんくんでした!
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