国家試験お疲れ様でしたご褒美 りん 様リクエスト
「「悪鬼首無輪舞曲」三郎、勘ちゃんと桜先輩の初夜」






























「あ?筆下しの相手をしてほしいだと?」

「……はい」
「…そうです」

「……何故俺だ…」

「いや、だって桜先輩…忍たま、ですけど……」
「お、女、ですし…」

「……いやそれにしてもなぜ俺だ…」







それは木枯らしとともにやってきた無茶苦茶な願いだった。

風にガタガタと揺れる部屋の扉。本を読むとどうも集中しすぎてしまうのはいけないな。これではもし何かあったら迅速な反応はできまい。もう日が落ちたのかと時間が流れるのを早く感じ、本を閉じ目を一度固く閉じ、部屋の蝋燭に火を灯そうと腰を上げたその時、明らかに風の力で鳴る扉の音ではない喧しい音が廊下から聞こえて来た。足音。これはなんとも、忍びの住む学園の者とは思えぬような喧しい足音だ。
これほどの足音、恐らく文次郎の処の二年神崎か、はたまた小平太のところの次屋か…。それとも迷子を捜しに来た富松か、いや、伊作の処の三反田やもしれんな。なににせよ私の処の後輩ではあるまい。


「桜先輩おられますか!!」
「お願いしたいことがあるのです失礼します!!」



………うちか……。



「…なんだ情けない。上級生の忍の卵ともあろうものが一年の様な足音を立てて五年長屋を爆走するなど言語道断。貴様ら再び下級生に戻されたいのか」

音を立て勢いよく開いた部屋の扉は壁にめり込むように横に動かされ、紫色の制服に身を包む後輩二人は部屋の中へ顔を覗かせた。火をつけるため部屋の隅にいた私に視線を当てると、それはもう不機嫌そうな顔をしている私と私から出る叱りの言葉に、二人は肩をすくませた。

「し、失礼しました…!」
「火急の用事でして…!」

「…入れ」

恐る恐るといったように私の部屋に入り、三郎は入口を閉め、勘右衛門は私の机の上に置いてある本を覗き込んでいた。蝋に火をつけ部屋に灯りを灯したところで、私は二人に背を向けるよう机に向かって座った。借りた本の内容で参考になる部分を巻物に書き移す作業をしようと思っていたところだったのだ。二人の話を聞きながらでもそれぐらい出来るだろう。



「で、何の用だ?」



ここで話は冒頭へ戻る。


それはあまりにも藪から棒過ぎて私は思わず筆を止めた。巻物には大きな墨の塊の跡がついてしまい、一度筆を硯に置いて、体を二人の方向へ向けた。

馬鹿なやつらだとは前々から思っていたが、冗談も此処まで来ると笑えない。一度生活指導をした方がいいのかと一瞬頭をよぎったのだが、二人の深刻そうな顔、そしていつものふざけた態度もなく、少々私も戸惑ってしまった。いつもならこの辺で冗談ですよ、とか言ってくるはずなのに、二人は一向に動こうとしない。

そういえば、もう四年も半ばを過ぎた。実習で殺しや、女を抱くような機会もそろそろあるやもしれん。だが殺しはかなり前に戦場に行ったと血まみれで楽しそうに帰って来た二人を見た記憶がある。ようやく色の授業に突入したのか。

だが、何故私だ。


「くノ一に頼もうにも今校外実習中で上級生たちは色町に潜入調査に出ているとユキちゃんに教えてもらいまして」
「あぁ、そういえば遊女用の化粧の仕方を教えてくれとシナ先生に詰め寄っているところを見たな。そうか今は実習中か」

「下級生に頼むわけにも行かないですし…」
「なら、お前らも遊里へ行ったらどうだ?運が良ければ学園の人間に当たるかもしれんぞ」

「……そこ、なんですよね…」

「…どこだ」


チラリと三郎と勘右衛門は目を合わせ、正座している袴をギュッと握った。


「…正直、忍びの卵ともあろうものがこんなこと言うのもなんですけど……」
「は、はじめては、その…知ってる人がいいといいますか……」

「俺ら、桜先輩以外に上級生に知り合いのくノ一とかいないですし…」
「忍務以外で…遊女抱くのも……なんか嫌ですし……」

「なんだお前ら…本当に童貞だったのか……」

「だっ、!さっきからそう言ってるじゃないですか…!」
「いや、お前らは五年で一、二を争うレベルで女遊びが激しいと思っていたんでな」
「一番の節操無は雷蔵ですよ」
「嘘だろ…!?」


同室の私が言うのだから間違いはないですと続ける三郎からの衝撃の事実に身を震わせた。あれは偽りの爽やかなのか。不破雷蔵侮りがたし。

二人の話によれば、今まで用事という用事が重なり「色」というものにかかわる忍務は悉く外れてきたのだという。ある時は緊急の委員会で。ある時は実習で。ある時は怪我で。伸ばしに伸ばして、ついに今回「色」に関する忍務を任されてしまったのだという。

本当はこの忍務、三郎と久々知に任される予定だったのだが、久々知はその日港へ火薬を受け取りに土井先生と出かける用事が出来ているため行くことが出来ない。そこで同室の勘右衛門に託したのだという。最初は勘右衛門も拒否したらしいのだが、二人はまだ「色」の忍務へ出たことがないだろうと半ば押し付けられる形で此度の忍務を任されたらしい。先生に言われては行くしかないと腹をくくったのだが、いかんせん未経験。女を抱き、快楽に身を任せる標的から情報を収集するためにはどれだけ女の身体を知っているかが重要となってくる。実習ではなく、これは忍務。失敗は許されないとプレッシャーは自然と己にかけていたようで、不安に煽られるようにして、二人は私の部屋へ駆け込んでいたのだという。


「っていうか今更ですけど、桜先輩はそのような御経験は」
「あるに決まっているだろう」
「ちなみに初めてのお相手って」

「大木雅之助先生だ」

「えっ、大木先生ですか?」
「大木先生も桜先輩が女だってご存じだったんですか?」

「いや、その時初めて告げた。もう学園をお辞めになっているのだから教師と生徒というマズい関係でもあるまい。予め手紙を送りそれを受諾してくださり、俺が杭瀬村まで足を運んだのだ。まずはお世話になっていた期間があった身だ。性別を偽っていたことを心から謝罪し、その後は偽っていた理由は全て話した。背中の傷の事もな。先生は同情してくださり涙を流して、女であるということはド根性で守り切ると約束すると誓ってくださってな、私は安心して身を任せることが出来た。いや、やいのやいの言いはしたがやはり俺も当時は知らぬ男に抱かれるよりは知った人間の方がいいと思っていた。お前らの気持ち解らんでもないさ」


男に偽っている身とはいえ、私は女だ。初めてというものは女であるのなら好いた男に捧げたいというのが町娘などの普通の思考だろう。少なくとも私も下級生の時まではそう思っていた。だが上級生ともなり忍術の授業が本格的になってきたあの時、好いた男などいるわけもなく、だが女だということは学園内でバレてはいけない。そう思いたどり着いたのが、大木雅之助先生という存在だった。断じて恋愛感情があったわけではない。知った身であるし、重ねて年が離れている。学ぶべきことも多いと判断したのだ。大木先生には無理を言ったかと思ったのだが、丁度女に飢えていたと冗談交じりに受諾してくださり、女を知るという目標は無事功を成した。



「…そうだなぁ…。お前らには背中の傷も知られている。なおかつ女であるという事を秘密にしてくれている。お前らには恩がある。こんな俺でよければ、その願い受け入れよう」



膝を叩いてそういうと、二人は曇らせていた顔を笑顔にかえた。秘密を守ってくれているという感謝は大きい。何も返せていないのが心に引っかかっていた。そんな二人が私に出来る願いを持って来たのだ。断るわけがない。


「ありがとうございます!いやもうぶっちゃけ桜先輩に抱かれたいって思ってたんです!!」
「何言ってんだ三郎」

「正直言うと桜先輩にならぐちゃぐちゃにされてもいいと思ってます!!」
「お前も何言ってんだ」


ただし条件が二つある、と私は一つ付け足した。
今夜は少々苦手な課題が出ているためそれを終わらせるのに徹夜覚悟でいる。そのため相手をするのは明日以降がいいと。そしてもう一つは、二人を一度には相手にしないということだった。

私はくノ一でなければ遊女でもない。くノ一の上級生は色を使うため度々郊外へ出るだろうが、私は違う。色を積極的に学んでいるわけでもないのでそうやり手というわけでもない。恐らくこいつらは艶本やら春画やら危絵などで知識が暴走しているに違いないと私は踏んだ。この時期まで未経験では、恐らく。私の身体に負担が出るのだけは避けたいと考え、私はこの条件を付きつけた。

「でも俺は三人で乱交したいです」
「勘右衛門、寝言は寝て言え。何が乱交だ童貞拗らせた馬鹿が生意気言うんじゃない」
「ウィッス」

なら明日はどうでしょうと三郎に言われ私は頷いた。忍務は一週間後なのだと。それなら早く済ませた方がいい。此処でやるわけにもいかない。場所は裏々山にある山頂付近の山小屋でいいでしょうかと勘右衛門に言われ、私はそれにも頷いた。そんな場所に山小屋があったのか知らなかった。山賊の塒だったりしたのなら寝具もあるやもしれん。誰からやるかと聞けば三郎が手を挙げたので、勘右衛門は次の日ということにした。



そして次の日、無事課題を終えやることを全て済ませ、私は皆が夕食を食べている間に風呂に入って、身支度を整え学園を出た。小松田さんへの出門表には「友人が近くに来るので食事に行く」と書いておいた。これなら疑われることはあるまい。まぁ一晩食事をとらんでもなんとかなる。快楽に身を任せれば食欲どころではあるまいよ。
学園から離れ、月明かりを頼りに山を駆け上がって行った。寒い。やはり夜になると此処まで温度が落ちるのか。早く風をしのげる場所へ入りたい。三郎に教わった通り走り続けると、其処には小さな山小屋がちょこんと建っていた。ほう、こんなところにこんな小屋があったのか。知らなかった。


「三郎いるの?私よ、御代志桜よ」

「あ、っ!ちょ、待ってください…!す、すぐあけますから!」


中から三郎の声がする。ガタン!と大きな物音が鳴り、どさどさと何かを落とすような音も聞こえた。はて、小屋の中で何をしているのか。
しばらく待っていると物音は無くなり、風の音だけが耳に響いた。寒さに腕をさすっていると、カタンと扉が鳴り、小屋の入口がすっとあいた。


「こんばんは三郎。もう入っていいかしら?」
「えぇどうぞ。お待たせして申し訳ありません」

中に入ると囲炉裏の火は消えていたが、一本の蝋燭に火がついていた。さっきまで囲炉裏がついていたのか不思議と部屋の中は暖かく、敷かれた布団に私は腰を下ろした。ついで私の真横に三郎も正座し、ゆらりと揺れる蝋燭の火を眺めた。

「今夜はやけに寒いわね。もう少しで雪でも降りそうだわ」
「そうなり雪が溶ければ、桜先輩ももう最上級生ですね」
「時が経つのは早いわね」
「はは、本当ですね。あ、桜先輩ももう風呂お入りになったんですか?」
「えぇ、皆が夕食をとってる間じゃないと、入るすきがないと思って」

「そんなことだろうと思いましたよ。はい、おにぎり作ってきたんで、良かったら食べません?あ、大丈夫ですよ。変な物入れてませんから。腹が減っては戦は出来ぬと言いますし…形は、その、不格好ですけど…」
「気が利くのね。どうもありがとう。ありがたくいただくわ」


まるで雷蔵の様な優しい顔。これから事に及ぶというのにその前に食事をとるなど笑ってしまう。だがまぁ三郎のいう事にも一理ある。腹に何か入れておいた方がよかったなぁと山中思っていたところだ。これはありがたい差し入れだ。疑うわけではないが一瞬で臭いをかぎ、何も入っていないことを確かめた。少し硬めの米を口に含む。ただの塩むすびと、もう一つは梅干。美味い。どうぞと差し出された茶を口に含み喉を通し、






私は湯呑を床に落とした。






「…………何を入れた…!?」
「さすが桜先輩!一口で気付くとはさすがですね!」

「おま、っ!」


一瞬にしてビリリと痺れた手先。次いで心臓が勢いよく跳ねあがり、体中の熱という熱が外へ出たがるかのように全身が熱くなった。浅い息を繰り返し心臓に手を当てたのもつかの間、その手は三郎に掴まれ体は布団に叩きつけられるように横になった。


「三郎……お前…っ!かんえ、っ!?」
「さすが善法寺先輩特性強力媚薬!えげつない物作ると評判が高いですけどまさかここまでとは!」
「きっ、様…!」

「食満先輩が言ってたんですよ。コーちゃん印のツボは色の忍務に善法寺先輩は必ず持っていくんだと。中身が何かは知らないとは言ってましたけど、冷静に考えて媚薬以外の何物でもないでしょう。さすが四年い組の学級委員長の名推理!ドンピシャですねこれ」

ヒラリと舞った白い紙はおそらくその薬を包んでいた物で、ぱさりと私の目の前に落ちた紙にはうっすらと赤黒い粉末がついていた。これは確かに、伊作の薬だ。


「少し硬めの握り飯。塩と梅干。食えば必ず口の中の水分は激減します。其処へ出された温かいお茶。握り飯に何も入っていないことを確認し、尚且つ目の前にいるのはこれから事に及ぶ後輩だと信用しきっている貴女なら、この茶は全く疑わずに飲むと思ったんです。予想通りでしたね。悪鬼と呼ばれる桜先輩が此処までとは。伊作先輩は敵に回さない方がいいって再確認しましたよ」

「三郎っ、…は、なせ……!」
「勘ちゃんがどうしても三人がいいって言ってきかないんですよ。俺は止めましたからね?お叱りは勘ちゃんにだけしてくださいね」


「裏切るのかよ三郎」
「俺は桜先輩と二人がよかったもんねー」


頭の上に束ねられた手は三郎に押さえ付けられ、動かぬ足は勘右衛門に押さえつけられた。心臓が喧しく息も深く吸えない。段々意識は朦朧としはじめ、全身の熱が、信じられないほどに熱い。伊作のヤツ、なんてもん作りやがったんだ。












「それじゃ桜先輩!」

「ご指導のほど、よろしくお願いいたします!」














何がご指導だ馬鹿野郎ども…!

こいつら、必ず殺す……!!








後日、お前は素晴らしい後輩を持ったな!と
先生方に褒められたのは、

おそらく忍務の結果がすこぶる良かったという意味なのだろうと察して、溜息を吐いた。



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りん様に捧ぐ


すまないがここから先はR-18だ!!!!!!!!
(どーん)

え???こっから先が重要だって????
乱交に乱交を重ねて二人は大人の階段を上るんだよ言わせんな恥ずかしい!!!!!!

国家試験お疲れ様でございました!!!!ご褒美でございます!!!!!
結果が良い方向へ行くことを心からお祈り申し上げております!!!!!

素敵なリクエストをありがとうございました!
これからも「嗚呼、桜か。」を何卒オナシャス!!!!!!!!

りん 様のみお持ち帰り可

伊呂波


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