キリ番hit ナツキ 様リクエスト
不思議の国のアリスパロ





























事件が一段落ついた。新たに落ちてきたであろうテンニョサマも無事下級生の手によってお帰りいただけたみたいだし、私たち上級生は下級生の行動を高みの見物と洒落こんでいた。
一回目の私達の動きを見てどうするべきか瞬時に判断できるようになったのだろう。ここ数ヶ月で下級生達も随分と逞しくなったもんだ。

「…ふぅ…」

樹に背を預けて木陰で一休み。三郎も勘右衛門もいず、久しぶりに一人でまったりできる時間が出来た。本を膝の上において、私は迫る眠気に身を任せた。




…はずなのだが、






「女王陛下はどっちだー!!」

「…?」


向こうのほうから、凄いスピードで駆けてくる、三年ろ組の……神崎が……………



「…何故、兎耳なんだ……」



兎の耳をつけて、走り抜けていった。


まずい、この先は競合地区だ。何故あんな面白い格好をしているのかはしらないが、あのスピードで駆け抜けて行ったら確実に落とし穴にはまる!危ない!

本を膝から落として私は地を蹴り上げて走り出した。神崎は足が速い。それも暴走しているときはさらに速度を増す。まずい、追いつけないかもしれない。


「止まれ神崎!その辺りは危ないぞ!何処へ行くんだ!」

「うぉっ!?うわあああぁぁぁ………――!



「あの馬鹿野郎…!」


私の声が聞こえないのか、言った側から神崎は落とし穴にはまったのか一瞬にして姿を消した。
一刻も早く落とし穴から神崎を救い出さなければ。綾部に説教はその後だ。


「……!?」

落とし穴のふちで足を止め下を覗き込むが、底が、見えない。
綾部はこれにどれほどまでに時間をかけていたのか。全く底が見えない。覗き込んだ先は真っ暗闇。だとすればかなりまずい。神崎は進退を疑うことを知らない。自力で登るなどという自己判断は出来ないはずだ。

「神崎!聞こえるか!俺だ!御代志桜だ!返事をしろ!」


穴から返事は、返ってこない。打ち所が悪かったのだろうか。まずい、とっとと救い出さなければ。

「三郎!勘右衛門!いないのか!」

二人の名を呼んでもあいつらは姿を現さない。何故だ、今日は忍務ではなかったはずだ。
クルリと周りを見回しても誰もいない。つまり私が担いで上がるしかない。胸にクナイがあることが救いだ。此れを使ってよじ登ればいい。神崎一人ぐらいどうってことない。

私は意を決して穴に飛び込んだ。









飛び込んだはいいのだが、


「……綾部はこれをどうやって出たんだ…」

ポツリと独り言をつぶやけるほどには、全く着地の衝撃が襲ってこない。それどころか風も無い。どうやら私はふわふわと穴を落下しているらしい。それもあぐらをかいて。

それから、多分だが、ふわりと髪が下に向かって靡いているという事はこれはもしかして逆さになっているということなのだろうか。ますます解らない。不思議なこともあるもんだ。長時間落下するとこうなるのか。

火遁の術を使い明かりをつける。やはり回りは土。何もない。だが、ふと気がつくと頭のほうから明かりが見える。やっと到着するのk……


まて、此処は土の中のはずだ。何故明かりがある。


「痛ッ!?……くっそ…!一体なんなんだ…!」

いつの間にか着地したのか、頭を強く打ち付けた。頭を抱えながら光が差す方向へ私は走り出した。


…何処かの部屋の一室か…。樹ではない鉄のような素材の壁床に囲まれた部屋に落ちてきたらしい。綾部は一体何者だ。いや、これを作ったのは本当に綾部か?…此処は一体何処なんだ。




バンッ

「!」



右手のほうから大きな音がした。振り返ると其処には金色の扉が一枚。……かなり小さい。


「……神崎?」

小さいドアに向かって声をかけるのだが、当たり前のように返事は返ってこない。それはそうか。私は一体何をやっているんだ。


さて、背後には何mあるのか解らない穴。前には私の掌ぐらいの大きさしかない扉。これはどうすることもできないな。さてどうしようか。



「あれー?桜様?」

「……つ、鶴町、か?様?どういうことだ?」


足元で扉がギィと開いて、其処から出てきたのは掌サイズの、鶴町だった。


「何をやっているんだお前は。…いや、そんなことよりなんでそんな小さいんだ」
「ふふふー、桜様今日はとーっても大きいですねー」

「…後ろは登れる気のしない穴がある。出来ればその扉を通りたいのだが、」

「僕は桜様をお迎えにあがったんですー」

「…何?」

「そろそろ"赤の女王"が暴れる時期だと思いまして、それを食い止めていただこうかと」

「あかのじょうおう?」
「てなわけで、じゃじゃーん。これ、僕特性の「身体が小さくなる薬」でーす」


胡散臭い。はてしなく怪しい匂いがする。鶴町の薬を飲んで無事でいられるという保障がないのがめちゃくちゃ怖い。以前鶴町を忍務に連れて行ったとき、鶴町の薬を吸い込んだ敵の忍者が泡を吹いて真っ青な顔をして倒れたのをこの目で見た。
鶴町が私に敵意をむけるわけがないというのは理解しているが、あまりにも怖すぎる。


「…本当に身体に支障は無いだろうな」
「大丈夫でーす。僕を信じてください」


足元でふわふわ笑う小さい鶴町から受け取ったビン………に、コーちゃんの印がついていたのは見なかったことにしよう。
ビンを逆さに中の液体を飲み込んだ。予想通り、マズすぎる。


「ぉぇ……」

「わー、大成功ですねー」
「……」


一体どの薬草を組み合わせればこんな薬が出来上がるのか。後で善法寺を後輩の監督不届きで叱らねばなるまい。一年に自由に薬を作らせるだなんて危ないにも程がある。

鶴町に手を引かれて、扉をくぐると


「…なんなんだここは一体……」


扉の向こうは、森だった。

起こる事全てが理解不能だ。深い深い穴に落ちたと思ったらよく解らない大きな部屋に出るわ身体の異常に小さい鶴町に縮められるわ、扉をくぐれば其処は森だ。全く、意味が解らない。
此処は何処だ。忍術学園ではないのか。


「僕はここで薬草を摘んでから戦場に向かいます。桜様はこの道をまーっすぐ行ってください」

「…戦場?それは一体」


なんのことだ、と続くはずだった言葉は、口の中で止まった。鶴町がいなくなっていたからだ。



…さて、鶴町はあとで来るといっていたし、私はまず神崎を探さなくては。あいつは放っておいたら何処へ行くか解ったもんじゃない。神崎を探す途中で富松が見つかればいいのだが、そう簡単に見つかりそうにないな。
それよりこの身体を元に戻したい。扉をくぐったのだからもう元の大きさに戻ってもいいはずだ。

今の自分の身体と同じような大きさにある草をクナイでバサバサと切り落としながら進む。


「桜様!?何処へ行っておられたのですか!」
「陛下!?女王陛下なのですか!?」

「は?…伊賀崎、と、三反田か?」

「城の者総出で貴女を探していたんですよ!何故このような森へおいでなのですか!」
「私達も今貴女を探していたところです!何処へ行ってたんですか!」

「おい落ち着け伊賀崎、三反田。なんでお前ら、そんな身体なんだ」


ふわり、鼻をツンと強く刺激するような臭いがした。煙の方向を辿っていくと、其処には下半身が芋虫のような身体になっている伊賀崎と、明らかに身体に悪いであろう色合いの花の中にたたずむ三反田がいた。伊賀崎に至っては煙草を吸いながら。


「水煙草か?お前にしては悪趣味だな。伊賀崎、ジュンコは何処へいったんだ?この臭いは虫達には悪影響だろう」

「じゅんこ?誰のことです?」

「…何……?蛇だ、蛇のジュンコだ」
「へ、ヘビ!?そんな!僕がヘビと仲良くできるわけないでしょう!芋虫ですよ!?」
「???」

「それより桜様早く城へお戻りを!"赤の兵隊"が攻めてきたら一体どうなさるおつもりなのですか!」
「おい三反田も伊賀崎もちょっと待て、お前たち一体どうしたんだ。此れは一体どういうことだ」


グイと背中を押す三反田の手をとり、私は一旦今どういう状況なのかと問いかけた。三反田は目をパチクリさせながら「御代志桜様、ですよね?」と聞き返してきた。名前はあっている。が、様をつけられるような立場ではない。ただの先輩なのだから。
伊賀崎の首にジュンコがいない。それどころかじゅんことは何かと聞いてくる。下半身は芋虫。手には水煙草。


……例えば、今までの事を総合してみて、此処は私の知っている世界の別の世界だとしたら。平行世界のような場所に落ちてきているのだとしたら。
いや、そう考えるのが妥当だ。そんな不思議なことあるわけがないと思ったが、テンニョサマたちは此処とは別の世界から来たと行っていた。無きにしも非ず。

帰り方は後で考えるとして、今はこの状況を何とかせねば。


「…あー、その、私は何処へ向かえば良いんだ?」

「一旦緑の城へお戻りください。其処でみんな貴女の指示をお待ちです」
「兵士は貴女を探している者以外は全員、城で待機しています」

「そうか。あぁそうだ、神崎を見なかったか?こう、白い耳が長く生えている…」

「…左門ですか?左門ならこの先を真っ直ぐ行ったお茶会の会場の方向へ向かいましたよ」

「ありがとう。まず其処へ行くとするよ。必ず城へ向かう」
「お願いいたします。陛下が戻ってこられたことを僕は森中に知らせてきます」

「じゃぁ僕はこっから行くよ」

三反田が草むらの中へ消えて息、伊賀崎はもくもくと水煙草の煙を吐き出し、伊賀崎は全身を煙で包んだ。ふわと風が吹き、煙の中から蝶の羽を生やした伊賀崎が出てきた。


「っ、伊賀崎!もう一つ聞きたい事がある!」
「なんですか!?」

「俺の身体を元の大きさに戻したい!どうすればいいんだ!」

「それならばキノコをどうぞ!一方は小さく、一方は大きくなります!」


キノコ。

あたりを見回すが、そんなものは何処にも無い。何処だと聞き返そうと空を見上げたが、其処に伊賀崎の姿は無かった。

まぁいい、何処かでまた誰かに聞けばいいのだから。









「陛下!?陛下なのですか!?」

「…富松、それと次屋か」


ズンと現れた大きな足。ソレを見上げると、空にはデカい人間が。この声は富松か。じゃぁ隣は次屋か。


「おい富松!その辺に身体が大きくなるキノコとやらはないか!?」


大声でそう張り上げると、えーっととつぶやいて私の背後に腕を伸ばした。此れですけどと差し出すキノコを口に含んだ。まさかこれも鶴町の栽培しているものではあるまいな。マズい風味が口の中いっぱいに広がるが、我慢して飲み込む。
パチリと目を開くと、次屋と富松はいつもどおり、私の胸の辺りに位置していた。どうやら身体は元の大きさに戻ったらしい。


「すまない富松。恩に着る」

「ほらみろ作兵衛、俺の進んだ道にいたじゃねぇか」
「バカ野郎俺が引っ張ってきた方向だっただろうが!テメェはいい加減に一人で森に入るのをやめろ!!」

「あー、取り込み中悪いんだが……、」


紫とピンクの縞々模様の服、猫の耳と尻尾。あぁこいつらもこっちの世界にいるのか。そしてこんな愛らしい格好をしているのか。


「陛下すぐに城にお戻りを!みんな貴女をお待ちです!」
「知っている。だが先に寄らねばならん場所があるんだ。この辺で茶会をしている場所を知らないか」

「…"イカレお面屋"と"眠り鼠"たちがいるところですか…?」
「今日はどうやら"三月兎"たちもいるみたいッスけど、そこに用事ですか?」

「あぁ、神崎を探している」

「さ、左門を見たんですか!?俺も今あいつを探していて…!」

「茶会の方角へ行ったと聞いた。俺があいつを連れ戻す。お前らは先のその城とやらに行っていてくれ」

「…解りました!左門をお願いします!行くぞ三之助!」
「おう」


富松が次屋の尻尾を引っ張り、木の上へと消えていった。猫の格好のくせに其処はしっかり忍者のような動きをするんだな。



…イカレお面屋。やっとあいつらに会えるか。


















「これはこれは桜様、どうぞこっちの席に」

「あぁ三郎、やっと見知った顔に逢えてホッとしているところだよ」

「ははは、何を面白いことを。お茶でもどうですか?今淹れたばかりですよ」
「すまん、貰おう」

「庄左ヱ門、彦四郎、桜様にお菓子を」
「「はい!」」

「勘ちゃん、桜様が来たよ。そんな無礼な態度では失礼だろう」
「…んー…?…あ!?桜様!?いつの間に!?」

「すまんな勘右衛門、邪魔しているぞ」


テーブルの上には飲みきれるのかと言うほどの茶、そして所狭しと積み重ねられた菓子があった。狐の面をつけた三郎と、テーブルに突っ伏し眠る勘右衛門。
兎の耳が生えていた庄左ヱ門が菓子を運んできて、彦四郎が茶菓子をたくさん私の目の前に並べた。


「お前ら、神崎を見なかったか?こっちの方向へ行ったと聞いたのだが」
「左門ならついさっき縄に繋がれて作兵衛たちが引っ張っていきましたよ」
「…」

三郎にひかれた椅子に腰掛けると、左門の安否が確認できた。そうか、やっぱり捕まったか。


「…直球に聞く。今この国の状況はどうなっている」

「最悪ですよ。陛下がいなくなった隙を狙って、"赤の国"がこの国を侵略しにきています」
「何故」

「理由は単純ですよ。"赤の女王"が可愛い部下が欲しいと貴女の部下を狙っているからです」
「つまり、俺達が狙われているって事ですよ。面倒事は御免なんで、三郎と俺は庄ちゃんと彦にゃん連れてこんな森の奥まで逃げてきましたけど」

「此処がバレて、狙われるのも時間の問題でしょうね」


ズズズと茶をすすって、三郎と勘右衛門は向かいで座り、震えている庄左ヱ門と彦四郎を慰める様な目で見た。


「…今此処は他の国の女王からも狙われています。"青の国"の女王は庄左ヱ門と彦四郎たちを狙っていて」
「"赤の女王"の目的は、ぶっちゃけ俺と三郎の二人なんですけどね」

「ここなら存分に茶が飲めると、兵士達が準備してくれたんですけど…」


「ぼ、僕らはお城に戻りたいです…!きっと伝七も左吉も一平も、僕らを守るために剣を取ったはずです…!」

「団蔵と虎若たちが無茶をするかも知れない…!きっと伊助も、兵太夫も、三治郎も、金吾も、喜三太も、乱太郎も、きり丸も、しんべヱも……!ど、土井先生だって……!」

ポロポロと涙を流して、庄左ヱ門と彦四郎は長い耳を垂らした。



つまりこの今私がいる緑の国というのが赤の国と敵対しているということだな。そして女王陛下と言われた「御代志桜」が不在の間を狙って敵兵が攻め込んでくると。ふん、赤の国は随分と低能集団のようだな。
この世界が私のいる場所の平行世界だとすれば、もう一人の私、「女王御代志桜」がいるはずだが、私を見てあそこまで焦るということはこの世界の「御代志桜」はこの私なのだろう。

……自分で言ってて何がなんだか解らなくなってきた…。

だが私の愛する後輩達と同じ顔をしたやつらが困っているというのだ。あいつらのいう女王のふりをして少々手を貸してやってもバチはあたらんだろう。


「……つまり、お前らが今かなり危険な目にあっていると」


「俺と勘ちゃんは、別にどうなろうと知ったこっちゃないですけど」
「庄ちゃんと彦にゃんが手を出されるのは、黙ってみているわけにはいきませんから」

別の世界であろうと、この二人は後輩をかなり大事に思ってくれているみたいだ。安心した。この世界でも、二人は変わらないのだな。







それならば、私が手を貸さないわけにはいかない。





音をたてカップをテーブルに置き、ガタリと立ち上がった。


「ならば、俺がこの国を救う。可愛いお前らを見捨てるわけには、いかないな」

そう言うと、三郎と勘右衛門は待っていたと言わんばかりに、腰にぶら下げた刀を鳴らして立ち上がった。





「城へ案内しろ。"赤の国"の兵士を、返り討ちにする」

































「女王陛下のおなーりー!!緑の女王陛下の、おなーりー!!」


走り回る左門の喧しいラッパの音が鳴り響き、騒ぐ兵士達はピタリと声を出すのをやめた。

三郎達に案内されるがままに私たちは森を抜けた。
緑色の城にたどり着くと、そこには見覚えのある顔だが、南蛮の甲冑に身を包んだ兵士達に出迎えられた。


「今この国がどういう状況下に在るのか聞かされた!この国が野蛮な"赤の国"に侵略されそうだと言う、由々しき事態であることを理解した!

黙って国をあけてすまなかった!だが、お前らがこのまま"赤の国"に飲み込まれるほどバカな兵士達であるわけがない!俺はそう信じている!!」



ズラリと並んだ兵士達の先頭に在る丘の頂でそう叫ぶ。黙ってこちらを見るその顔は、あの時、覚悟を決め私に助けを求めてきた下級生達と同じ目だった。




「総員、武器を取れ!!"赤の国"を返り討ちにしてくれる!!」




刀を天高く突き上げ、叫ぶ。それを合図に兵士全員が刀を高く突き上げ、高く大きな雄たけびを上げた。

赤と黒の四角が画かれた大地。まるで将棋盤の上にいるようだ。いや、これは南蛮のゲーム、チェスの盤の上か。

駒のようにその上に立つ兵士達は全面戦争を覚悟の上で其処に立っているのだろう。

まるで、本当に、あの時と全て同じだ。下級生達を駒に見立てて動かしていたように、今度は、本当に下級生達が駒になっているようだ。まさかこんなことになるなんて。

だが、誰一人殺しはしない。


「さっすが俺らの桜様。やること言うことカッコイー」
「勘右衛門、お前も戦うのか」

「逆に、桜様は奥で高みの見物でもしていてください。あんなの、俺らだけで十分です」


舌なめずりをして刀を肩に構える勘右衛門の目線の先には、真っ赤に染まり揺れる大地。



「おーおー、あんなに大勢引き連れちゃってまぁ」
「三郎、怪我はするんじゃないぞ」

「…桜様、俺を誰だと思ってるんです?貴女の右腕、"イカレお面屋"の鉢屋三郎ですよ?」


スラリと刀を抜き、投げ捨てた狐面を真っ二つに斬り落とした。


「庄左ヱ門、彦四郎、お前達は引っ込んでいてもいいんだぞ」

「いえ!僕らも戦います!僕達だって、桜様の部下です!」
「この命捨てても赤の女王の首、とってみせます!」


別の世界、別の人間、だが、向こうの学級委員会の連中と同じ忠誠心、同じ覚悟。

私は全てを信じて、腰の剣を抜き取った。



ぴたりと喧騒が止み、赤の国の兵士達は歩みを止めた。





「帰ってたのね緑の!ねぇ、可愛い部下を見殺しなんて出来ないでしょう!それが嫌なら、とっとと三郎と勘ちゃんをこっちの国に引き渡して頂戴!!」

真っ赤なドレスに身を包み扇子で扇ぐあの顔。





「…香山、椿………」




予想通りの人間のお出ましだ。あの時殺したというのに、またこんなところで逢えるとは。


「どうせ私達がやらずとも、近いうち"青の国"も攻め込んでくるわ!赤の国と手を結ぶことにしたの!その前にその二人をこっちに寄越して!」


「三郎!勘右衛門!どうして僕らのところへ戻ってきてくれないの!?」
「何で緑の国を選んだ!俺らと一緒に来い!」
「ずっと一緒だったんじゃないのか!三郎!勘右衛門!」


「…すまんな雷蔵、兵助、八左ヱ門。俺らはそんな女の下に仕えるより、こっちでのんびり庄左ヱ門と彦四郎と茶を飲んでいたほうがましなんでね」
「それに、いい働きをくれたら桜様直々にご褒美をくださるんだ。こんなにいい国他にないだろう?」


見知った顔の敵があちら側にずらり。なるほどな、まさに、あの時と状況が一緒だ。



「赤の女王!貴様のそのふざけた脅しには屈しない!お前らはこの国の兵士の覚悟を甘く見ている!少し前のこいつらとは比べ物にならんほど成長している!

御託を並べずかかって来い!!この国の人間は、一人たりとも渡しはしない!!」


私のその言葉を合図に、両者の兵士は一斉に走り出し武器をぶつけ合った。
高い金属音が当たりに鳴り響き、砂埃は舞い、あちらこちらで叫び声が聞こえた。


「桜!貴様の首は私が貰う!」
「残念だったな仙蔵、お前は俺の視界に入っていない!三郎!」

「心得ました!」


飛んでくる仙蔵の焙烙火矢を避けると、後ろから現れた三郎がそれを真っ二つに斬った。


「立花先輩の相手はこの俺ですよ!」
「ふん、貴様の化けの皮今こそ剥がしてやろう!」
「さーて、あんたなんかに俺の千の顔を見分けられますかね?」


幾人もの兵士の間を駆け抜け、飛んでくる武器を何度も交わす。


「緑の女王!覚悟しろ!」
「勘右衛門!掃討しろ!!」

「かしこまりーっ!!」


飛び掛る久々知、不和、竹谷の顔をした赤の国の兵士三人を、一斉に止める勘右衛門。


「勘右衛門!お前と戦いたくは無い…!」
「悪いな兵助、桜様に手ぇ出すやつは誰だろうと殺すのが俺の中のルールなんでね」

ギンッ!と高い音。それを背後に私は再び走り出した。



「っ、何をしているのみんな!早く三郎と勘ちゃんを連れてきて!そんな女とっとと殺してよ!三郎と勘ちゃんをつれて、一気に撤退するのよ!」

「俺の後輩は誰一人貴様になんぞ渡しはしない!!お前の首、もう一度この俺が刎ねてやる!!」


櫓のようなものの上から高みの見物を決め込むテンニョサマ。貴様はまた、俺の大事な友人を操り、己の私利私欲のためだけに動くというのか。

そして、またこの俺に殺されるのか。


なんとも、情けない。

なんとも、滑稽じゃないか。



「庄左ヱ門、彦四郎!」

「「はい!」」


やぐらの真下に構えた庄左ヱ門と彦四郎は、両手を構えて腰を低くした。

庄左ヱ門と彦四郎の手を踏み台に、私は、高く、高く、宙へ飛んだ。



「っ!?い、いやっ!」









「チェックメイトだ、天女様」











































……―い、…ぱい!桜先輩!」



ゆらゆら ゆさゆさ




「……すごいぐっすり眠られてますよ」

「そりゃそうだろう。此処最近、桜先輩一人で全ての忍務を抱えてたんだから」

「きっとかなりお疲れなんでしょうね」

「眉間に皺寄っちゃって、桜先輩夢の中でも難しいこと考えてるのかね?」

「今は起こさないでおこう勘ちゃん。このままゆっくりさせてあげよう」

「しょーがない。彦四郎、桜先輩を起こすのはやめておこう。俺の上着かけときゃ風邪ひくことはないでしょ」

「はい、わかりました」

「そのすきに、俺は桜先輩のお膝を拝借」

「あー!鉢屋先輩ズルいですよ!」

「よーし、庄ちゃんは俺の腹の上においで!」

「彦にゃんも俺の上でお昼寝しよう。おいで」

「し、失礼します!」






「「あー、平和だねぇ……」」

「「そうですねぇ…」」




















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ナツキ 様に捧ぐ


_人人人人人_
>安心の夢オチ<
 ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄

数あるリクエストの中からアリスパロを書かせていただきました!!!

勝手に悪鬼番外編にしてすいません短編だとどういうキャラにすべきか迷ったもので!!!!

しかも最後のほうは「アリス・イン・ワンダーランド」の方ですいませんすいません!!!!

どうしても戦闘シーンが書きたくてすいませんすいませんすいません!!!!!!

そしてやたらと長くてすいませんすいませんすいませんすいません!!!


ぶっちゃけあんまり反省はしていません!!!!
(どーん)


キリ番ヒットおめでとうございます!!そしてありがとうございます!!!

これからも「嗚呼、桜か。」を宜しくお願いいたします!!!



伊呂波


ナツキ 様のみお持ち帰り可


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