「…いや、その、なんだ…」
「…」
「……これ、俺の家にあったやつ、……だよな?」
「……はい…」





週末の土曜日、久しぶりに名前の家に遊びに来た。

見たい映画もないし、欲しい物もない。

外にいるのただ寒いだけだからと、名前は俺を家に招待してくれた。

ストーブを付けてあったまる名前の部屋でベッドを背もたれにして座る。

床に手を付いたとき、左手に何かがぶつかった。


本、か、雑誌。


なんだと思って引っ張り出してみると、





見覚えのあるエロ本が。






あれ、これ俺の家にあったやつじゃねえのか。

ちょっと前に伊作に押し付けられたやつじゃねえか。



捨てたと思い込んでたやつじゃねえか!!!!

此処にいたのかお前!!!!





「留三郎、お茶が………」



俺の手元にあるものを見て、

ボフッ!と音がしたかもしれないぐらいのスピードで

名前の顔は真っ赤になった。




「い、いやぁああ!!」

「危ねぇ!」



名前の手から落ちるお盆を腕を伸ばしてキャッチする。


が、その反対側の腕に、エロ本。


今の俺シュールすぎる。



「と、とめ、…」

「や、あの、その、とりあえず、座れ」



部屋の真ん中にある赤い小さなテーブルにお茶を置き

名前は俺の反対側に座った。






ここで冒頭に戻る。





「……名前」

「…はい」

「……なんでお前が、これ持ってんだ…?」

「そ、それは……」

「…俺んちから持ってったのか?」

「…そうでございます……」



なんで。

なんでお前がエロ本なんて持ち帰ったんだ。




「…なんで…」


「……と、留三郎の…」

「俺の?」

「…留三郎の……そういうの………知らないから…」

「…」

「け、研究を……しようかと…お、思いまして……」




顔を伏せて聞こえるか聞こえないかぐらいの小さい声で

名前はポツリポツリとことの経緯を話した。



先日俺の家に遊びに来たとき、

この本を見つけてしまったらしい。


別に清い関係でいたいからという意味ではないが、

俺と名前は、そういう行為をしたことはない。

さすがに、名前の初めてぐらいは大事にしてやりたい。

俺の勝手に喪失させるわけにもいかない。


ので、その時に備えて、というわけでもないが

名前は俺の好みを知っておきたかったという。


解りやすい話、変なプレイが好きだとか、そういうことがあるのなら

ちゃんと把握しておきたかった、ということだ。



顔を真っ赤にしながら話す名前があまりにも可愛すぎて

話を最後まで聞く前に腕を掴んで、


とりあえず押し倒してキスをした。




「あー……その……」

「と、とめ…」

「…研究は、どうだった…」

「…」


名前は真っ赤な顔をそのまま横に向けて俺から視線を外して




「……あれが、好きだというのは、…信じたくない………」



そりゃそうだ。あれは伊作が俺に押し付けていったやつだ。

ただ一度『委員会の後輩が可愛い』という発言をしただけで

ロリコンだかショタコンだかと変なイメージを植えつけてしまったらしく、

めちゃめちゃマニアックなエロ本を押し付けてきた。


いつ捨てようかと悩んでいたのだ。


まさか名前に持って帰られているとは…。




「…安心しろ。別に、あぁいうプレイが好みなわけじゃない…」

「…明日伊作殴るわ……」

「そうしろそうしろ」


ふっと笑うと名前も小さく笑った。







「…ね、ねぇ留三郎」

「あ?」








きゅっと俺のワイシャツを掴んで







「……あれが、…と、留三郎の好みじゃないなら…」












可愛い顔でそんな事を言うもんだから









「留三郎の、好み…を、………お、教えて欲しい…です……」










一瞬だけ伊作に感謝して、


俺はもう一度キスを落とした。







こんなんじゃ実は他にもエロ本あるとか言えねぇな。

もう家にあるの全部捨てちまおう。



うん、そうしよう。


























持って帰りましょう


彼を思っての行動なのですから

きっと彼も理解してくれるはずです
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -