35.身体を洗う

「庄ちゃん…彦にゃん……」

「おはようございます香織さ……」

「……どうしたんですか…か、顔色が優れないようですが…」


「頼みがあるんだけど…」

「はい、僕らでよければ」

「何でしょう?」



「………身体洗ってくれない?」


私は爪を立てて、首をボリボリとかきむしった。





























「つまり、香織さんは虎の姿と人の姿は同じじゃないので」

「こっちの姿であまりお風呂に入っていなかったってことですね?」

グルル…


「俺らも実習中に風呂入れないとちょっとツラいときあるしなぁ」

「香織さんは女性ですし、虎ですし、川に飛び込むわけにもいきませんよねぇ」


こんにちは。香織さんです。今裏裏山の大きな滝がある川に学級委員会のみんなで来ています。

何故って……私の身体を洗ってもらうためです…。


他の動物系の能力者の身体がどうなってるのとかはよく知らないけど、人の時の身体と虎の時の身体がリンクしていない部分がある。それは毛。体毛だ。
いや毛とかいうと変な話になっちゃうんだけど、私のこの虎の時の身体がもふもふなのは存じていただけているとは思いますが、これはこれで大変なんです。
エースやマルコ隊長によるとかなり触り心地が良いらしい。それゆえにこの毛の手入れはかなり大変だ。

この姿のまま怪我をすれば人の姿になってもその怪我の傷が残っているように、こっちの身体にダニなんてもんがついてしまえば人間の姿になってあんなにもふもふじゃなくても全身が痒くてしょうがないのだ。全くこれに関してはどうしようもない。

以前あまりにも風呂に入っていなくて全身をボリボリかきむしっていたときがあった。わりと本気でエースに「この毛全部燃やしてくれ!!」って涙ながらに頼んだことがあった。船員総出で止められたのだが。

船に獣医なんてもんはいないのでナースのお姉ちゃんにかゆみ止めを服用していたのだが、やっぱりそれで収まる時間はほんのちょっと。やっぱりこればっかりはどうにもならないみたいだった。

定期的に一番隊の人やたまにエースやサッチなどに風呂に入れてもらって全身洗ってもらうことがあった。マルコ隊長はそんなことないらしい。まぁ不死鳥だしなぁ。うらやましい。


「それにしても香織さん…」

「まじでもふもふですね…」


そういえばみんなに虎の姿の私を見たのはこれで二度目だ。私がはじめてここに来て以来見せては居なかった。
まだ首の下までしか洗ってもらっていないので顔から頭はまだ濡れていない。二人はうっとりしたような顔で其処をずっと撫でてる。

あー首、そこ、そこもっと撫でて。気持ち良いです。


「庄ちゃんと彦にゃんはこのもふもふを堪能しながら学園に戻ってきたのか!!」

「なんて羨ましい!!!」


「死にそうだったので正直あんまり覚えて無いです」

「冷静ねっ!!!」


だから後でまた乗せてくださいと庄ちゃんと彦にゃんは顔を赤くして私に頼んだ。私はそれを了承するようにほっぺに擦り寄った。はぁぁぁ可愛い可愛い。


そもそも身体を洗ってくれたらいくらでも背中に乗せてあげるからという約束で此処まで連れてきてもらったのだ。その約束を破るわけが無い。背中に乗せるぐらいどうってことない。それに此処なら誰にも見つからないだろうし。

終わりです!と彦にゃんに言われ、私は腰を持ち上げ背後でドドドと大きな音を立てていた滝に飛び込んだ。



ハァァアアアアアーーーッッ!!気持ち良い!!めっちゃ気持ち良い!!なにこれ凄いシャワー!!めっちゃ気持ち良い!!!



全身を思いっきり滝に濡らしてバシャバシャと泡を落とした。あーさっぱりした。

滝から飛び出し岩場に飛び乗りブルブルと全身の水を飛ばした。うううめっちゃ気持ちよかった。



「あ、」

「?」



声がする方へ目を向けると学級委員の皆様が顔を青くして私のほうを向いていた。
どうしたどうしたと近寄ってみると、






目の前に、知らない人が。




「お、おほー……」







…なんか、あれ…?……三郎たちと同じ制服の人、一人増えてない?

髪ボサボサ…。誰だこれ……。




…あれ、学級委員の人………じゃ、ないですよね…?



























「と、虎……?」







…………やば…。
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