【一目惚れ】そんなものないって思ってたの。
だけど……あの人に出会って前言撤回になったわ。
「うん?テニス部?」
「そうっ、テニス部!!いこ!」
満面の笑顔の向ける友達に苦笑。テニス部といったら色んな意味で有名だけど…、
「言ったでしょ?私テニス部には興味がないって」
「お願いだって!かよが居ればテニス部の皆様もこっち見てくれるし!!」
「そんな事ないよ」
「マジお願い〜!それに一年にかっこかわいい子がいるし!」
「かっこかわいい子…?」
「あ、気になる?なら行こうよ!!!」
ぽそりと私が呟いた言葉を拾い素早く反応する友人に驚く。そしてぐいぐいと引っ張られる腕にため息が出る。
…でも何故かその時はテニス部に行くのが嫌ではなかった。
あなたに会えるって予感してからかもね。
引きつられた先にはキャーキャーと甲高い声と大量の人。
目が点になってしまう。
う、噂には聞いてたけどここまでとは…、
引きつる頬を気にしながら隣の友達を見る。
「や、やっぱ帰ろ…」
「きゃー!!赤也くうん!!!」
私の言葉など耳に入らないといった様子で目をハートにしている友人に再びため息。
なにがいいんだか……、確かにかっこいいとは思うけど騒ぐほどのものかな?
本日何回目か分からないため息を吐きながらその場から離れる。
一応友達が困らないように近い場所の木に移動する。そして木の根に座る。
私の動きとともに揺れる茶色。
目を瞑れば風の音。
涼しいな…、
『体調でも悪いんスか?』
風の音ともに澄んだ声が聞こえた。
パチリと目を開く。そして私の視界にはいるのは緑を揺らす人。
ドキリと音がなる。
『聞いてます?あー、体調悪すぎてしゃべれないとか?』
面倒くさそうに頭を掻く人に声をかけようとするが言葉がでない。
な、何て言えばいいんだろう。
見つめられるだけで顔赤くなるしっ、意味わかんないッ
『あ、じゃあこれ貸しますよ』
「……、ぇ」
『私、部活して熱いんで正直上着いらなかったんで。ちょうど良かったス』
ずいっと突き出される辛子色のジャージに戸惑いながらその人を見る。
そんな私にその人は更にジャージを突き出す。ここまで近づけられたら受け取るしかなくて、
きゅっとジャージをつかむ、するとその人は満足そうに口を三日月にし去って行った。
しばらくポーとなるが気付く。
お、お礼言ってない…!!てか名前聞いてない…!!
1人アワアワしながらまだ微かに見える背を追い掛ける。
その背を追い掛ければそこはテニスコート。
テニス部だったんだ。
あ、そっか。今思えばジャージがテニス部のだ。
そう思いながら私の目が行くのは緑の人。
「なに、ポーっとしちゃって」
いつの間にか隣に来てた友人は私の顔を心配そうに覗きこむ。だけど次の瞬間ニヤと笑んだ。
「なに〜?誰かに惚れた?」
勢いよく顔が赤くなるのが嫌でもわかった。熱い熱い。
パタパタと顔を扇ぐ。
そんな私にポケッと顔を呆けさせている友人。
「え、は、え? だ、誰?!」
「だ、誰でもいいじゃん…っ」
「よくない!立海のアイドルが恋した相手?どうでも良いわけあるわけないでしょ!!!!誰?!誰?!」
ずいずいと顔を近づける友人に更に顔赤くなるのがわかる。
誰だろー?かっこいい人だよねー、あ、テニス部は皆かっこいいか。そう言いきゃっきゃっと騒ぐ友人についと指を差す。友人は必然的に其方を見る。そしてニンマリと笑った。
「へー、赤也くんかー」
「?切原くんじゃないよ?」
「え、じゃあ仁王くん?」
「仁王くんでもないよ?」
「あ、わかった!ブン太くんでしょ!!」
「ううん、違うよ」
「…ッあ、アンタまさか…!!」
「私が指さしてるのは今丸井くんに頭撫でられてる緑の子だよ」
じっと緑の人を見ていればバチリとその黄色い瞳と交わった気がした。恥ずかしくて思わず俯いてしまう。
おそるおそる顔をあげるとあの人はもうこちらを見ていなく切原くんたちとお話ししてて。
安堵か悲しみか分からないため息がでる。
「…………ファンクラブあるけどあの子女だよ?」
「そうなんだ」
「反応そんだけ?!」
「うん、一目惚れっていうのかな…凄く胸が熱いの」
「……………ライバルは多いから頑張りな」
ポン、と肩におかれる手にニコと笑いながら私はあの人を見る。
彼女は切原くんたちと話していた時の表情とは一転、真剣に…野生のような瞳でギラリと目を光らせていて。
自分が見られているわけでもないのにドキリと心臓がなる。心臓が早く波うつ。
顔が熱くなる。
楽しそうに笑み緑の髪を揺らす姿。汗を拭う姿。
……全てがかっこいい。
きゅっ、と強くだけど柔らかくジャージを握る。
、あとで、ジャージ返さなきゃ。
一目惚れでした
(いつかこの想いつげていいですか?)