「………あー、あったけェ」

『暑くないスか?』

「…暑いつったら離れんだろ?」

『え、あ、まあ』

「…離さねェ」


暑いのはお前らだ。第三者が居ればそう口にしていただろう。この初夏、梅雨上がりジメジメした感じもなくなり漸く苛立ち治まるところだがこのようなイチャイチャを目の当たりした誰しもが苛立ちが再来するだろう。しかし、一つ言っておこう、彼らは恋人同士ではない。


『………っ、そうスか』

「頬赤いぜ」

『…っうっさいス』


ただの生徒と教師、加えるなら一線越える手前、のだ。



「…最近、空夜不足でな」

『……、そうですね、私も暇があればテニスって感じでしたし』

「ああ、俺も出張やらで忙しかったしな」


苦笑を洩らし髪を掻く空夜の頭に顎を乗せ落とすように紡ぐ前橋。その二人の空気は静かだった。そして前橋の言葉が終わると会話が途切れた。途切らせたのは言うまでもなく空夜。前橋は不思議がる事もなく抱き締める力を強めた。


『――…わたしも、』

沈黙を破ったのは作った当本人。


『…寂しかったです』

ぎゅう、と白衣を握る力を強め煙草の匂いが掠る服に顔を埋めた。前橋はそれにふと口角を上げ、

「知ってる」

緑がかかる黒髪にそっと口付けた。もう一度言う、恋人同士ではない。

その返答に気恥ずかしそうに前橋の服に顔をぐりぐり寄せる空夜。前橋もそれを止めようとせず擽ったそうに甘受している。



『…カズ先生の匂いがする』

「んだそりゃ」

『結構好きス、カズ先生の匂い』

「――…、あんま他の奴にそういう事言うンじゃねェぞ」


愛しそうに切なそうに、ゆるりと藍色を細め小さな頭を抱き寄せるように包みこむ。それに応じるかのように更にくっつく空夜は小さく呟くように紡いだ。


『…、言いませんよ』


その言葉が聞こえたのか否なのか、前橋は空夜の前髪をそっと上げて露になった額に唇を降らした。
正直な話し、もし言ったとしてもそれを許さないがこの男。例えどんな奴でも言われた奴は八つ裂きにしてくれよう、そんな事を思っているとは空夜は露知らず。

下手な恋人よりもいちゃつく二人。唇は避けるように顔中に口付けを降らす前橋に肩を竦めながらも受ける空夜の頬は紅色に染まっていた。
こつん、そんな軽い音ともに額を重ね合い見つめ合い穏やかに笑い合う二人。もう一度言う、恋人同士では決してない。


しかしそんな甘い雰囲気も、


「あー、多分ここじゃないのか?」


毎度同じく壊される。
固まる、

A、誰が?

Q、皆が


扉を開けた人たちも、開けられた人たちも。しかし顔色は違う、坂口たちの顔は真っ青、前橋の額には十字路。空夜はお馴染みすぎて赤くなることもなくため息一つと哀れみの目。


「んあ?ジャッカル、どうかしたのかよぃ?」

「……………」

「おーい、…………ああ!もういい!自分でみ、」



る、は出なかった。一番背が小さいブン太は皆に何があったか把握出来ずジャッカルに問うてもその色黒の肌を青に変えて何も言わず、半ば苛立った様子で仁王や赤也、坂口たちを掛け分けて到着した先で仲間たちのように固まるしかなかった。


その大きなアメジストに映るのは生意気ながら可愛いがってる後輩と恐怖しか生み出さない先生、 実験器具>>>>>越えられない壁>>生徒。の時点で先生として疑わしいが一応先生。思わず頬も声も引き攣った。そしてその恐怖しか煽らない先生が一生に一度あるかないか、自分たちに笑みをむけた、それがどんなに取って付けたような笑みでも笑みは笑みだ。


「こっち来いよ」

死の宣告されたぁああああああっ!皆の心の声が一致した。


「…すまない、生徒会長が呼んでいるから行かなければならない」

「呼んでねえよっ!?むしろ悪魔が呼んでるわ!!」

「あ゙?」

「さーせんしったぁああああ!」

「すみません、皆さん。委員会の仕事を思い出したのでお先に失礼します」

「む?今日はないぞ、柳生」

「……………」

「ほあっぱぁああ!」

「すみません、皆さん。図書委員の仕事を思い出したので」

「柳生おま、風紀委員じゃろうがぁあああああ!ちゅーかナチュナルに綺麗なアッパーカットじゃな!!」


まるで1抜け、とでも言うようにそそくさに去っていく柳たち。柳生については真田にアッパーカットを決めてから去っていった。前橋はそれを咎める事なくにこにこにこ。それがまた恐怖を煽る。



「あ、じゃあ俺も仕事あ」

「…これ以上逃がすと思ったか?あ゙?」


じゃあ俺は3抜け、といった様子でコソ泥のように逃げようとした坂口の首の襟をぐん、と掴み悪魔も怯えるような表情で見下す前橋。ひいっ、と引き攣った声に空夜は一人、バカだなぁ。と心の中で呟いた。


「よし、テメェら。とりあえず、誰から――逝く?」

変換は決して間違っていない、死刑囚にも勝るとも劣らない笑みに赤也たちは身を寄せ合い体を震わせる。


「え、あ、さ、坂口先生!お先にどうぞ!」

「待て待て待て待て待て、普通は生徒からだろ、うん」

「いやいやいやいや、ここは後輩からだよ、なあ?」

「いやいやいやいやいやいやいやいや、ここは人生の先輩たちか、」

「はん、まとめてだろ」


「「え、」」



これが日常。
(ぎゃああああああ!)


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別館サイトにて10万の。
引っ張りだしもの、


  


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