黒執事パロ
「あれ、トモキさんじゃん」
グリーンアップルのガムを膨らましてきょとんとするブンタにじと、とした目と共に口を開く。
「お前…、仕事は」
ぎく、と分かりやすい反応をするブンタにため息を一つ。
「そんなんだとまた空夜に女装させられるぞ」
「げえ、それだけは勘弁」
「まあ結構似合ってたけどな、ぷ」
「うわああああ!今すぐ記憶から削除しろぃ!俺の人生の汚点を!!」
「そんなにか」
恥ずかしさに顔を髪同様に紅く染めるブンタを少し憐れに思う。
罰、とか言いながらブンタに女装させた空夜。まあなんつうか元々童顔のせいか中々似合ってたしそこらの女よりは良かったがこいつにとったら汚点以外の何物でもないらしい。
空夜は凄いノリノリだったがな。
「っでもよ、トモキさんもいい加減それ直さねえとミカエリスさんにしばかれんじゃねえの、」
「それ?」
「ん、そのお嬢の事を名前で呼ぶの」
その上呼び捨てだなんてトモキさんって本当怖いもの知らずだな。
その言葉に自分の金の髪をぽりぽりと掻く。まあ普通に考えて一介のシェフが当主を呼び捨てで呼んだりするのはいけない事なんだろうが…、
「アイツをお嬢様って呼ぶのって違和感がなあ‥」
「? なんか言ったか?」
「‥いや、なんでもねえよ。ま、しっかり仕事しとくんだな」
「……、トモキさんだけには言われたくねえ」
「よーし、さぼってた事を空夜にちくろっかな、と」
「うわああああ!トモキさんはすげえよ!!仕事いっぱいしてるしな!」
うん、それで良い。とブンタの頭に手をぽん、と乗せれば不貞腐れた顔で返されたがスルーだ。
つうかブンタって片仮名にする程ブt…何でもないからそんな目で見るな。
……、コイツまで読心術を解読したのか。
口に出てたぜぃ。
……………。
ブt…ブンタの元を離れて自分の持ち場に戻り昼食の準備をする。
空夜は和食が好きだからそそくさと作りあげる。やっぱ前世が日本人なだけあって日本料理を好むんだよな。その代わり記憶は一切ないけど。……記憶があるのが俺だけだと思うとなんか悲しくなる。しかも今の周りに居る奴ら何気に親しかった奴らばっかだし。
「ふふ、何耽ってるんですか?」
「! うをっ!?い、いきなり現れんなよ、幸村」
にょき、と後ろから現れたのはこの屋敷の家令だと思われる幸村。
唐突すぎて俺の心臓の波打つ速さが先程より断然にはやい。
「にょきって人を茸みたいに言わないで下さい」
……、こいつの読心術は相も変わらずらしい。
「やだなあ、読心術なんてものじゃありませんよ。ただちょっと人の心を覗き見してるだけで」
「それを人は読心術つうんだよ」
女のような顔だが一応おと
「…何か言いました?」
…バリバリ男の幸村。白髪を揺らすコイツは年齢不詳。そこは先輩と同じだ。
まあ昔なら俺より年下だったのは確実なんだか‥、
「喋ってないで手を動かしてくださいよ」
………、喋ったつもりはないんだがな。いやまあコイツからしたら喋った事になるのk
「とっとと手動かせや」
「っす!」
…コイツの恐怖政治も相変わらずだ。
前世の事を覚えていない筈だが俺や先輩には敬語な幸村。ああ、空夜にも一応敬語か、
前世の名残でもあるのか、…けど覚えてない筈だし。いやまあ元年下で生徒のコイツにタメ使われるよりマシだが。
思い乍も手を動かす。…動かさねえとまたブラックなスマイルで何をされて何を言われるか、
……………時を越えようが俺のヘタレは変わらないんだな、あれ、自分で言ってて何か悲しくなった。ま、まあ、仁王よりマシだからいいんだよ!
酷い!つう仁王の嘆きなんて聞いてないぞ、うん。
蓋を開ければ湯気と共に味噌汁の匂いが鼻を掠める。
「うん、中々いい味ですね。これならお嬢様も何も言わないんじゃないんですか?…執事の方は知りませんけど」
最後の方を素晴らしい程の笑顔で言われた。そんな笑顔で言われても困る、俺的には執事の方が心配だし。
「まあ俺優しいんで火葬ぐらいはしてあげますよ」
「色々ツッコミ所はあるが俺は死ぬのは確実なのか」
「それ以外に何か?」
「…そうスねっ!」
早く逝ってきて下さいよ、と背中をげしげし蹴られる。
漢字変換違え!!!
黙れ。
…………ぐすん。