※(一応)ホラー
『…あ、りがとうございます、落ち着きました』
どれくらいたったのだろうか、短かったのかもしれないし長かったかもしれない。カズ先生の温もりが気持ちよくて安心できて、子供のように甘えてしまった。
いやまあ外見は子供だけども。
離れようと背中に回していた手を緩めるがぎゅう、と抱き締められたままで、離す様子が一向に見られない。
『…カズ先生‥?』
「離れんな」
静かに告げられた言葉に思わず紅潮する。頬が淡く色づいてしまった。
私はそれを気付かれないようにカズ先生の肩口に顔を埋めて服を小さくつかみながら言葉を発す。
『え、と、あの、さ、さっきの幽霊?ってどうやって退治を?』
私の言動に愉しげにクツクツと喉で笑うカズ先生。…たぶん、私の行動の理由や、…頬が赤いのに気付いてるのだろう。やはり隠せなかった。
それが尚恥ずかしくてぎゅうっと更に顔を埋める。そんな私の後頭部に手を回し髪をとくように優しく撫でてくれる。
「退治つうか、知り合いからもらったの使っただけだ」
どんな知り合いですか。
そう思った私は悪くない。むしろみんな思うことだろ、と思う。
まあ詳しく聞いても良いことはないので話しをそらす。
『こ、この学校ああいうの出るんですね、初めてしりました』
空笑い気味に言えば撫でていた手を今度はテンポよくぽん、ぽん、と叩いてくれる。そのテンポが優しさが、気持ちよくて、
薄らと目を細める。
「確かあれだろ、好きな奴がいたがその好きな奴が立海のなかでアイドル的な存在。そんな奴にアピールする女を見てファンクラブとやらの癇に障ってえぐい虐めされて自殺した幽霊つう話しじゃなかったか?狙いは基本女とかっこいい男だとよ」
連れて逝くらしいぜ?…くだらねえな、とどうでも良さそうに告げる先生にサッと顔を蒼くする。
女は私で、…おい、今女だったの?!とか言った奴前でろ、前。
まあとりあえず一応私は女でかっこいい男は…カズ先生‥。アイツにとったらかっこうの獲物。カズ先生が退治らしきことをしたが念には念を。
先生の服裾をぎゅ、とつかみ引っ張る。すると先生は不思議そうにこちらを見た。
『か、帰りましょうか』
「ああ、そうだな」
くしゃりと私の髪を一撫でしすっと立ち上がる先生に同じて立ち上がろうとする、が
『…………………、』
腰が抜けて立てなかった。
先生にその事を気付かれないように顔を俯かせる。
『‥カズ先生、先にいって…っな!?』
先生だけ先に帰るように促そうとするがその時――、
突然の浮遊感に目を見開く。
下を見れば遠く離れた床。足はぶらさがっていて、横を見れば端正な顔できょとん、としてしまう。
「腰、抜けてんだろ」
疑問系ではなく断定系。意地悪げにあがる口端。
図星だから何も言えない。あえて言うなら私の意思関係なく淡く染まる頬。羞恥心からのそれにカズ先生の腕の中で体を思わず小さくしてしまう。
カズ先生の匂いが私を包む。ぬくもりが、優しさが、
髪にちゅ、と何かが触れた音がした。その音にバッと顔を上げれば間近にある顔。そして次は額にちゅ、と同じ音が。
私の様子にふっと口元を緩めて私を見つめるカズ先生には色気というのがその、暗闇の中微笑むカズ先生は艶やかというか…とりあえず更に紅くなった、気がした。
「りんごみてえで可愛い」
――食らいてえ、
『――っ、』
もうなんだその、私はカズ先生の胸板に顔を埋めるしかなかった。
ああ、…熱い、
忘れ物には注意!
(もう二度と忘れ物はしない…!)
―――――――
別館サイトにて10万の。
引っ張りだしもの、
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