「俺はこういう生意気ルーキーは嫌いじゃなか」


くつくつと喉を鳴らしどこか妖艶に唇をつり上げる人。……R18雰囲気を纏ってはいるはいるけど、なんか、こう、違うような。すっと目を細め観察するように見れば

「…っ!」

…………、あ、分かった。肩を小さく跳ね上げた人を見てようやく理解できた。


『もしかしてヘタ―――』

「彼は、仁王雅治くん。私のダブルスパートナーです」


まるで言わせるかと言わんばかりに遮ってきた眼鏡の人。逆行眼鏡って素晴らしいスね。そして銀髪の人の足踏んでるの見えてます、銀髪の人の顔、無表情ながらも目に水が張りついてます。


まあ、これ以上詮索した所で良いこともないんだろうけど。…悪いこともないけど。


「そして私は柳生 比呂士です。よろしくお願い致しますね?」


穏やかに笑っている、うん。見立ては凄いジェントルマンなんだけども、足元がね、足元がね、ギリギリギリって銀髪の人の足が悲鳴を上げる程踏み付けている。…なんだろ、この人から真っ黒黒介的オーラを感じる。世の中には従わなきゃいけない者があると思うんだ。



『はい、此方こそよろしくお願いします』

「俺の時と反応の差ッ!!!」

『あれ、何か違います?丸い豚先輩』

「全然違えよ!!!名前も違えしな!」

『え、丸いブタ?』

「片仮名とかそういう問題じゃねえよぃ!!」


うるさいなあ、眉を顰めて見れば「俺が悪いのかよ!?」とか言うものだから、あんた以外の誰が悪いんだって真顔で返したら「俺もうやってけねえ!」とか言いながら煮卵の方に逃げていった。何なんだ、何か私が悪いみたいじゃないか。



『とりあえずレギュラーは以上、っスか?』


以上なわけじゃないのは分かっている。今にも私を射殺さんばかりに睨み付けている人もレギュラーなのだから。私の台詞に睨みが鋭くなったのは言うまでもない。しかしそんな視線も何のその、無感動な瞳を真田副部長に向けた。


「部長は今分け合って居ないが、そこに居る奴もレギュラーだ」

「………………」

「赤也ッ!!」

「………………」


真田副部長に怒鳴られてもむすっとした表情を変えず不貞腐れた子供のようにそっぽを向くもじゃさん。それに苛立ちが混じった深いため息を吐く真田副部長。


「…俺は認めないスよ」

漸く口を開けたと思ったらその一言。私は特に動じることもなく欠伸を噛み殺した。いやだってさっきからその感情はひしひしと伝わって来たし。


「一年で、しかも女でレギュラーだなんて、――認めねえ…!」

ビシィッと効果音が付き添うな勢いで指を指され首を竦める。認めないって言われてもねえ。


『私、真田副部長に勝っちゃいましたし』

「――――!」

『それにさ、




私アンタにも勝つ自信ありますよ』


余裕でね。にいと挑戦的に笑う。するともじゃさんの額に青筋が立ったのが見えた。


「上等じゃ―――」

「やめんか!!」


挑発にまんまとのせられたもじゃさんがにやりと笑うもそれを許さないのは真田副部長。

「で、でも…!」

顔を顰めて真田副部長を見るもじゃさん、しかし真田副部長の威圧に押されたのか口籠もった。


「お前もお前だぞ」

ぽすんと、軽い衝撃に上を見る。そこには柳先輩。きっとさっきの軽い衝撃はノートなんだろう。


『でも、本当の事だし』

「空夜」


開眼された瞳に一瞬背筋が伸びた。その鋭い瞳に咎めるものが入っていて何か有無を言わせないものがある、歳が2つしか変わらないとは嘘でも思えない。


私は肩を竦めて生返事を返した。

『へーい、』



認められませんでした
(あーらら、)






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