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はーっけん!思わず口元を緩めてしまう。母を訪ねて三千里ならぬテニス部を訪ねて数百メートル。距離にそう差はない。ありすぎるとかツッコミは生憎受け付けていない。
あのカワイラシイ叫び声を頼りに来てみればやはりいた、人間技とは到底思えない芸をこなす年齢詐欺ども。悲しいかな、私も人のことが言えない。
にしても、レギュラーが勢揃いですか。入学式早々やるねえ、王者は練習も怠らないってか?嫌いじゃないな、そういう――って、あれ、幸村精市は不在…ってとこかな?
…原作通りつう事で喜べばいいのか悲しめばいいのか。まあ幸村精市がどうなろうと私には関係がないことだけどね。
「だまらんかっ!!!!」
鼻歌を鳴らしてテニス部を観察していると鼓膜を奮わす大きな声。驚きに肩が跳ね上がってしまった。
音源に目を向けたら応援という邪魔をしていたミーハーどもを老け顔基、真田弦一郎が説教しているのが見えた。
…うっわあ、びびった、マジでびびった。
真田弦一郎が予想以上に老けてた…!皺ありすぎ、彫きっつ。あのオッサン絶対加齢臭するだろ。
ま、なんにせよ真田弦一郎がコートから出てくれたのは此方としては好都合。
流石にコート入って話しかけんの気が引ける。
ギャラリーをかき分け私はゆったりとした足取りで真田弦一郎の元へと向かう。私よりも大分大きな人を見上げると真田弦一郎の背後に重なるようにあった太陽が私の瞳を刺激した。
『‥ねえ、』
どうみても42歳にしか見えない真田弦一郎にそっと口を開いた。
「何だ」
私の事をミーハーか何かと思っているのか眉を寄せ不機嫌です、オーラを隠さず向けてきた。
それに流石の(自称)寛大な私もいらりと来るものがある。
『…私、部活入りたいんだけど』
「マネージャーなど募集しとらん」
いら、
『…私、テニスしたいんだけど、』
「女子テニス部は反対側だ」
かちん!
鉄が重なりあった音ではない、私の優しい心にも限界がありそれが越えた音だ。
つーかさ、テニスしたいつってんじゃん。女テニに行きたかったらアンタみたいな老け顔にわざわざ話しかけないつーの。そこら辺の美人さんに話しかけるわ。ほんと、何でわかんないかなあこの老け顔。顔だけじゃなく頭ん中まで老けてんの?
いらいらいらいらいら。
気は長くもなければ短くもない私の頭の中ではその文字が無数に横切る。
『…さっきからさウザイんだけど。何その態度?下級生に優しく接するぐらいできないの?頭ん中まで老けてんのにそれは無いんじゃない?』
まくしたてるように言えばシーンと静かな空気が広まる。テニスをしていたやつも応援をしていたやつも皆、静か。
理由は多分、真田弦一郎に対し態度が悪いからじゃないかな。
ま、改めるつもりはさらさらないけど。ふん、と仰け反る勢いで腕を組み顔を背ければ視界の端で真田弦一郎が顔色を変えたのが見えた。
「口の聞き方をッ」
「弦一郎、その子の言ってる事は正しいぞ」
「柳!」
すっとしなやかな動きで真田 弦一郎の制したのは柳 蓮二。柳 連二は薄く口角を上げた、何かを孕むような。
……ふうん、