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「俺はな、空夜に俺みたいにテニスを好きになってもらいてえんだよ」
『…自分のしゅみをこどもに押しつけるのはよくないよ』
「おい何処でそんな言葉覚えてきた」
『そういう親にかぎって子供のレールを勝手に作ってそれがダメなことだってきづかずやりつづけるんだよ』
「え、何歳児?」
母さん、愛娘が成長しすぎて怖いぜ。遠い目をするその双眸にうっすら張る水の膜は気のせいだと思う。
『というかおとーサンてにすしてたんだ、…似合ってないね!』
「晴れやかな笑顔でえげつい事言うな」
いやー、それほどでもー。えへへ、と可愛いらしく笑って照れくさそうに手を後ろにやれば「あー、これが天然だったら可愛いんだがぜってえコイツ腹ん中でけたけた笑ってるもんなぁ」と本人を目の前にして呟きやがったので足を踏んでやった。
可愛い子供になんて失礼な事を、……否定はしないけどね。
「いっとくがこれでもでっけぇ大会で優勝したこともあんだぜ」
『コネ?』
「母さん、まだ間に合うよな?コイツの教育今からやり直しても間に合うよな?」
失礼な。いや確かに三歳児がコネなんて言ったら私も驚くが残念ながら私は三歳児ではない、つい最近成人になった。どや、と言いたげな表情を送ればおとーサンが嘆いた、失礼な。
というか大きい大会かぁ、説明が大まかだけどまあ本当に凄いんだろう。私が住んでる此処は先進国アメリカ、アメリカの大会と言ったら目が張る大きなものばかりだろう。…テニスの大会なんて全く知らないからあってなくても許せ。
あー、そう言えば、前の世界にテニスの王子様≠ト漫画があったよなあ。結構愛読してたから死んだ今尚覚えてる。…確か、主人公のお父さんがすごい人だったんだよね。伝説的な人で…、えっと、名前なんだっけ、
えー、あー…、うー、
えちぜ、えちぜん…、南ってかんじがあって名前は太郎的なもので。…うっわ、太郎で思い出しちゃった、あん時のこと。多分私、太郎がトラウマになるわ。
じゃないじゃない、名前は、確かー
あ、
『えちぜん、なんじろう』
だったわ。そうそう、越前南次郎。というかナチュラルに口に出してしまった。慌て口を抑えたのはいいものおとーサンの反応が激しく気になる。このなんだかんだ言って親ばかなこのエロ親父。越前南次郎とやらをどこぞの男だと思えばぎゃんぎゃん煩いに決まっている。
ちらりと視線を向ければ、
―――嬉しそうに綻んでいるおとーサン…?
「おー!そうだぜ、空夜。俺の名前は越前南次郎だ。そしてお前は越前空夜だ!!」
『……………』
おい待てやこら。え、今ナチュラルに何て言った?この人、え?
固まる私を余所にぐしゃぐしゃと私の頭を撫で回す越前南次郎さん。