室内に響く嬌声が耳に痛い。
誰のものかって?信じられないことに自分のものだ。
好き勝手に体をまさぐられて、抵抗すらできない。
この行為が快感だからじゃない。思い出してしまうからだ。初めての時を。
思い出したくもないのにセックスのたびあの記憶が私の体を、思考を支配する。
顔に降りかかるブロンド、肌を引っかく綺麗に整えられたネイル、見慣れた顔なのにそばかすのない。アジュールブルーの瞳だって同じなのに、慈愛の色はまったくなかった。
罵りが否応なく頭上から降ってきて、慣らしてもいない膣より心が痛い。
喉はつんざく悲鳴ばかりを吐く。
あのときほど精神と肉体が別物だと思い知ったことはない。
気持ちの上では拒んでも女としての体はだんだんと痛みとは別のものを拾い上げる。
無理やりだろうと絶頂に押し上げられ本能から精を搾り取ろうと蠢く。
そして、ついには。
ああ、射精された感覚は今なのだろうか、それとも回顧の?もう、分からなかった。





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BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
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