6/9 | ナノ




私はここ数日頭をかかえている。自分で思うくらい残念な頭の中があるひとつのことについて考えすぎて非常に重たい。熱でもあるのかしら、いや熱があることには変わりないだってあの人のこと考えると顔が熱くなって無性に走り出したくなって鬼鮫の愛刀鮫肌のドクロの部分をもぎとって投げたくなる衝動に駆られるのだもの。私は今その衝動に駆られるまま、鬼鮫の軽い不在をいいことにドクロを右に左にひねっている最中である。悩みも解決せずドクロもなかなかもぎとれずにイライラしてきた。

「ああああどうしよおおおどうしたらいいんだあああ望むものは何ですかあああいだちさあああああん」
「なんだ」
「!?!?!?」

背後からいきなり聞こえた声に驚いた拍子にごきっと不吉な音をたててドクロが取れた。正直とれると思っていなかったらこれからどうしようと嫌な予感が頭をよぎったけれど今はそんなことはどうでもいい。

「イイイタチさんいつからそこに!」
「お前がこちらにものすごい顔で走ってきて鮫肌に怪力を発する辺りから」

つまり最初からというわけですね!あまりの恥ずかしさに顔を覆って走り出した、そしてもぎ取れたドクロに躓いてべちゃっと無様に転んだ。なきたい。今のばっちり見てたよね?とイタチさんの顔におそるおそる視線を向けると、さも不思議そうな瞳で私を見ていた。暁の間ではC(クール)S(スタイリッシュ)B(ビューティー)なことで噂の私はイタチさんの前ではただの奇行を繰り返す変人だった。ちなみにサソリさんにはC(クレイジーで)S(しぶとい)B(バカ)の間違いだろと言われたことがあるけどそんなことない。

「大丈夫か」

転んだままほろりと泣き出した私をあわれに思ったのか紳士的に心配してくれるイタチさんはやはり素敵である。大丈夫かの次に頭と続いていると思うと泣きたいけれど。私はそのままの体勢でここ数日ずっと悩んでいたことをついに本人に口にしてしまった。考えても考えてもどうしてもわからなかった。

「イタチさんが欲しいものってなんですか」
「は…」
「なんでもいいんです!私ができるかぎり、いや私ができないことでも!イタチさんが欲しいと思うものを教えてください!!」

イタチさんにひざまづく形で向き直る私にイタチさんはめちゃくちゃ困ったような顔をしている。

「な、なんでもいいんです!団子でも鮫肌のドクロでも…!なんなら世界でも!!」
「…すまない、俺が欲しいと思うものは本当にないしお前に何かしてもらうようなことは俺はしていない」
「そう、ですか…」

やんわりとお前から物をもらう義理はないと断られてしまった。人からもらった団子とか何入ってるかわからないものね…私だったら飛び付くけれど。ありがとうございます、とお礼を言う私を数秒黙って見つめたあと、おもむろに指を差しながら呟いた。

「あの花が欲しい」
「えっ」
「欲しいと言っている」
「あっはい!!」

道端に咲き誇っている赤い花の木に駆け寄り、小さな枝をぱきんと折る。何を考えているか到底理解できないイタチさんにおずおずとどうぞ、と差し出す。そしてその花を枝から離しごく自然な動作で私の髪に添えた。

「えっ」

イタチさんの口元は相変わらずぴくりとも動かないけれど少しだけ目がやわらかく細まる。たっぷり5秒の間を開けて私の顔にこれ以上ないくらいの熱が集中した。

「いっいやいやいや何さりげなく素敵すぎることしちゃってるんですか」

くす、と笑うイタチさんは果てしなく不可解だったけれど本当に少しだけ笑ったイタチさんはいつもよりは楽しそうに見え、つられて私の頬もでれっと緩んだ。しかしこうも想定の範囲外にドコドコ砲撃されると何を言っていいか全くわからない。この妙にもちゃもちゃする空気と気恥ずかしさから私はいてもたってもいられなくてその場から逃げ出すことに決めた。

「おっお誕生日おめでとうございました!!」
「…誕生日…?」
「本当は何かプレゼントをと思ってたのですがいらないと言うのなら気持ちだけでも…」
「お前からはもうたくさんもらった」
「えっ」

ぽん、とイタチさんの指が私の頭に触れた。



うん、わざと
(えっどういうことですか!?)(さあな)
110609

Happy birthday兄さん!!!

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