サスケ | ナノ




ちゅ、随分とかわいらしい音が私の痺れた頭の中に無邪気に響いた。先刻までの煩わしさから一転、今は互いの不揃いな吐息の音しか聞こえない。まるで夢のよう。夢であって欲しかった。覆い被さる体が少しだけ動き、ずるり、体と体を繋いでいるものの間からどろりとなにかが溢れたような感覚。熱い。体は熱いはずなのに唇がガチガチ震えた。苦しい。歓喜に満ち溢れているのか悲しみで心がいっぱいなのかよくわからない瞳が私を離さない。どうして、と何度も口にした言葉をしゃがれた声で無意識に呟くと、耳障りだと言わんばかりにもう一度唇を塞がれる。抵抗する気力もなくした唇は驚くほどにやさしい舌に溶かされる。ああ、気持ちが悪い。

「アンタだけは」
「…サス、」
「裏切らないよな」
「どうし、」
「裏切らない」
「……、」
「側にいる」

俺の、側に。譫言のように繰り返す言葉は自分自身に言い聞かせているようで、いつの間にこんなに冷たくなってしまったのだろうその瞳の光がふ、と安心したようにやわらかく細まる。長年培われた愛情、というのは厄介なもので、どんなことをされても昔の面影を漂わせるその一瞬がひどくいとおしいと感じてしまう。逃げ出してしまわないように足を折られようが、顔を殴られようが、精神的にいたぶられようが。

「……大丈、夫、」

試しているようにも見えた。精一杯どんなに暴力をふるっても「私がここにいてあなたを愛しているのだ」という証明を。殴って殴って殴って抱き締めて安心したように笑うのだ。まるで、大好きな人達に囲まれて幸せそうに笑っていたあの頃のように。

「…すきだ」
「…っ、ぅ、あ」

あの頃だなんて、本当はなかったんじゃないのかと思ってしまうくらいに遠い遠い記憶の中で朧気に笑う幼い彼とまるで違うのは、今私の上にのし掛かる彼はただの男だということだ。どうして。一体どうしてこうなってしまったんだ。どうして私達は狂ってしまったんだ。どうして。会いたい。どうして。会えない。どうして。どうしてどうしてどうしてどうしてどうして





「姉さん」


私達によく似た瞳を細め、うっとりと微笑む弟が、こんなにもぼろぼろに壊れてしまったのは、どうして。




神様のお気に入りになれなかったわたしたちのお話
(きっと続きなんてない)





110120
リクエスト消化!書いててずーんってなりましたが連載として繋げたいです(おそらく有言不実行)初サスケでした!
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