デイダラ | ナノ
「デイちゃん」
「…」
「デイちゃんてば」
「あっちいけ、うん」
「そんなこと言って本当は寂しいんでしょー」
「……」
形のいい眉がわかりやすく不愉快そうに歪む。鬱陶しげにじとりと細められた青い光がきれい。うっとりとその青を見つめていると興味がなさそうにくるりと前に向き直って再び創作活動を始めた。動くたびにぴょこんと揺れる髪も、髪の間から見え隠れする悩ましげなうなじも、男にしては華奢な背中もなにもかもが好きで好きで仕方がない。自分の中の感情がぐつぐつ沸騰して、気付けばその衝動のままにその背中にぎゅうとしがみついていた。その背中からぶわああと迸る殺気にぞくぞくと自分の肌が泡立っていく。殺気という感情で彼の心を私でいっぱいにする、ということはこの上ない快感だった。
「…殺すぞ、うん」
「ふふ」
「てめーいい加減にしろよ」
「ごめん、ね?」
「っ!?」
後ろから首に腕を回し必然的に目の前にある耳に唇を寄せ吐息混じりに囁けば、その瞳が一瞬驚きにより更に大きく見開かれる。
「意外とウブなんだね」
その隙を逃さずにちらりと覗いた首筋に唇を落とした。いい匂い。このまま噛んでもいいかな。いいよね。がぶり。
「いっ、…死ね!」
乱暴に振り回した腕が抵抗も避けることさえもしない私の顔面を直撃した。
「…あ」
「痛い」
さすがに若い。女を自らの拳で殴った経験なんて片手で数えるほどかまたはないに等しいだろう。少しだけ罰が悪そうに顔を素直に歪めた顔がかわいくてかわいくて。今自分が一体どんな顔をしているのかあらかた想像がついた。きっと恍惚を貼り付けたいやらしい顔をしているんだろう。
「…んなんだアンタは」
気持ち悪い、そんな侮蔑した表情だろうか、思ったより殴られた箇所がまずかったのかぐわんぐわん揺れる視界で彼が私を見つめる。そんな彼に私はこれ以上にないくらいに素直な感情を唇に乗せた。
「だいすきだよ、デイちゃん」
そんなだいすきな彼はわけがわからない、と少しだけ戸惑ったような顔を見せて吐き捨てるように呟いた。
「気持ち悪いんだよアンタ」
死ね、嫌いだ、と私の存在を一生懸命否定しているという感情こそが、あなたの心をいっぱいにしているんだよ
獰猛な萬薔薇の茎であしらえたこの杭でいま、きみの心臓を貫いてみせよう(要するにあなたの心の中を私でぐちゃぐちゃにしたいのよ)
110106
罵るデイダラリクでしたが方向があらん方向へ…リクエストありがとうございました!