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「イタチ」
「…」
「イーターチー」
「……」
「イタチ、イタチ、……イタちゃん…イタチン…イタチン?ぶふっ」

面白いあだ名を生み出してしまったとひとりで吹き出していたらようやく名前の主が振り向いた。振り向いたと思ったらそのまますとんと手刀が華麗に頭の上に振り下ろされた。

「…イタチョップだ」

地味に痛む頭を押さえながら呟くとそんな私を無視して去るイタチ。その大きな背中を性懲りもなくつきまとう私はきっと彼に相当疎ましがられているだろう。その証拠に嫌悪感を隠す気など微塵も感じない盛大な溜め息が聞こえた。

「溜め息つくと幸せが逃げるよ」
「……はあ」

頭を抱え、近くの縁側に腰をかける。私はその近くに腰を下ろして三角座りでもしておいた。どうやらイタチはお疲れのようらしい。その疲れの元凶は自分かもしれないということは薄々気付いているけれど気にしないことにする。

「…俺につきまとうのはやめろ」
「どうして?」
「どうしてもだ」
「理由を述べよ」
「……」

再び溜め息。腰をあげて彼の前に立ちふさがる。立ち上がった私と座る彼との視線の高さがようやく並び、まじまじとその綺麗な瞳を覗きこんだ。こうしている時間が実は一日のなかで一番好きな時間だった。

「きれいだなあ」
「…綺麗じゃない」
「どうして?」
「俺はこの色が嫌いだ」
「私はすきだな」
「…そうか」

困ったように瞳を細めたその一瞬に、やはりこの人は昔のように優しい人だと直感が訴えた。最近は驚くほど冷たい顔をしているけれど。

「イタチは私のこと嫌いなの」
「そんなことはない」
「じゃあなんでそんなに冷たいの?」
「もうすぐさよならするからだよ」
「…?ふーん」

言葉の意味が理解出来ずに適当に相槌を打っておく。とりあえず、嫌われていなくて本当によかった。

「…俺みたいな人間には、近付かないでほしいんだ」
「どうして?」
「どうしてもだ」
「…イタチはイタチが嫌いなの?」
「……ふふ」
「私はイタチがすきだよ」
「…」
「だから嫌いにならないで、イタチン」

きらきらと光る赤が、驚いて丸くなる。そして泣きそうに笑って、大きくて温かい手のひらが私の頭を撫でた。私もイタチにつられて笑った。この手のひらも赤い眼も大きな背中も大好きだった。





曲がり角でみえなくなった
曲がり角でみえなくなっ
曲がり角でみえなくな
曲がり角でみえなく
曲がり角でみえな
曲がり角でみえ
曲がり角でみ
曲がり角で
曲がり角
曲がり
曲が








(無言で最後に向けた顔はやはり冷たい顔でそれでも私は最後の瞬間までその泣きそうな顔が気がかりで)
100925
リクエスト消化!妹か年の離れた許嫁か解釈はご自由に!リクエストありがとうございました!

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