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珍しくリーダーが酒を大量に買ってきた。たまたま居合わせた暁の連中が我先にと酒という名のまるでだめな大人を作り出す魔法の水を飲み下す。デイダラと飛段は気付いたらさまざまなものをおっぴろげ大の字で寝ていた。他の大人連中は所謂ザルらしい、まだまだ夜はこれからだろう(あ、鬼鮫の日頃のストレスによる嗚咽が聞こえる)あまりにも大酒食らいな連中に付き合いきれんと踏んで理性が残るうちにヨロヨロの足で自分の部屋を向かおうとすると部屋の片隅で青い顔をしているイタチを発見した。

「大丈夫れすかイタチくん」
「あなたのほうが大丈夫ですか」
「私は大丈夫ですがイタチくんはやばそうです」
「……、少し」
「じゃあ私が部屋までおぶって差し上げましょう」

そういって冗談混じりに背を向け後ろに手を差しのべるとそんな私のくだらない余興をスルーするかと思えば腰をあげたイタチくんは私の頼りない肩に軽く体重を預けた。珍しいこともあるもんだと、さすがに男一人をこの千鳥足でおぶっていけるはずもないので彼の腕を自分の肩に回した。あれ、これはお持ち帰りという奴ですか!

「いやー飲みすぎましたねイタチくん」
「ええ」
「顔色真っ青だよイタチくん」
「ええ」
「私もさっきリバースしてきたよ、滝のようだった」

そう他愛のない会話(成り立っているのかは知れないが)を続けているとズルリとイタチの腕がずり落ち、何事かと振り向けば廊下の隅にうずくまってリバースしてる彼の姿が目に飛び込み慌てて駆け寄り背中をさすってやる。

「イタチって下戸?」
「…、そのよう、です」

か細い声で呟き苦しそうに咳き込んだあとに嫌な水音。これは相当酷いようだ。水を汲んでくるついでに誰かを呼んでこようと立ち上がるとぐいと腕を引かれ驚いて彼を見ると首を横に振っている。いくな、ということだろうか。それに従い再びしゃがんで背中をさすると。ふと、吐瀉物の犠牲になっただろう廊下をみやるとそこは黒一面。黒い物体など食べただろうかと不思議に思いうずくまった彼の顔を見ると。

「…え、イタチ?」

夜の暗闇で気付くのが遅れてしまったが、彼の口から溢れでるのは紛れもなく、血液。ふわふわ夢心地も一瞬にして醒めてしまった。

「え、え、大丈夫!?」

こくん、と頷く顔はどう見ても大丈夫な顔ではなかったので、急いで再び担ぎ直しイタチの部屋に直行する。あの廊下の血液は幽霊的な呪いだとデイダラと意外に怖がりなサソリにでも言っておこう。部屋に入り、取り敢えず彼を座らせる。未だに顔が真っ青な彼に、自分自身を落ち着かせながら問いかけた。

「…毒にでもやられた?」

ふるふると首を横に振る彼に限ってそれはないだろうと自分でも納得する。それならば何故。どこか患っているのだろうか。そう考えを巡らせていると、静かに彼が棚の引き出しを指差す。示されるがままにその引き出しを引くと、大量の、薬。

「それを、」
「え、う、うん」

驚きで瞬間停止した頭を再活動させ取り敢えず手に掴めるだけの薬を彼に差し出した。苦しそうに呼吸しながら、それを5、6錠くらい無造作にこじ開け水も無しに口に放り込んだ。…いくらなんでもそれは飲み過ぎなのでは…彼の息が整うまで固唾を飲んで彼を見守っているとおもむろに私に振り返り、珍しく笑ってみせた。



「俺はそろそろ死ぬようです」



それ以上追求してもきっと彼は何も教えてくれないだろうから、私は取り敢えずその力無い笑みを見つめていた。私は一体どんな顔をしていたのだろう、少なくとも、そんなに弱々しくも穏やかな微笑みを浮かべる彼に、生きてほしいとは思った。






100821
リクエスト消化!普段兄さんは抜かりなく人に弱味を見せないと思いますが多少お酒が入ってちょっと気が緩んだという設定で。私の中の兄さんは下戸です。リクエストありがとうございました!!

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