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「ななしー!」


勢いよく自室の扉が解き放たれ、驚いて反射的に声の主のほうに首を向けると同時にばふっと体に小さな衝撃が走る。そしてその反動で彼の頭の高いところに結われた長い髪が思わぬ追い撃ちをしかけ顔面を直撃した。幼い瞳をキラキラと輝かせながら聞いて聞いてと言わんばかりに私を見つめる彼の後ろには、私にはそのオプションとして左右にせわしなく揺れる尻尾が見えた。この顔をしているときは、彼が新作を生み出したときか近くで何かを爆破させた時だろう。

「ななし!オイラの新作をみてくれ!うん」
「わかったわかった」

今日は前者だったようだ。デイダラとは彼が幼い時からの付き合いで、何故か懐かれて慕われてしまっている。鞄をガサゴソと探る彼の背丈をみて、こんなに大きなったんだなあ、と感心する。私の腰くらいだったちっちゃい彼がいつの間にか私の胸辺りまでに成長していた。そしてあっという間に私と並び、すぐに見下ろすほどまでにぐんと成長するのだろう。子どもの成長とは早いものだ、と自分も未だ子どもの部類なくせに老けた考えを浮かべ苦笑した。その間にデイダラのお披露目の準備は整ったらしく、じゃーん!というように手のひらに乗った作品を私に差し出した。

「すげー!ドラゴンじゃん」

素直な感想を述べよくできたなあ、と頭をくしゃくしゃと撫でてやると、へへ、と照れたようにはにかんだ。普段つっけんどんな(特に周りの子どもや大人に対して)デイダラのこの顔はたまらなくかわいらしい。まるで天使のようだ。うん言い過ぎた。

「いつかこいつを爆発させて人間をぶっ飛ばすんだ!」
「おーい」

可愛い顔して物騒なことを言ってのける彼の未来が心配である。

「でも凄いなあデイダラは。私不器用だからこんなの作れないよ」

そう言うとなんとも嬉しそうに笑って再び私にぎゅ、としがみついてきた。この可愛いすぎる物体をたまらず抱き締め返すとデイダラがパッと顔をあげる。

「オイラ、ななしが大好きだぞ、うん!」

突然の告白に(無論、それは親や兄弟に向けるような愛情であるだろうけれど)目を軽く見開くと、デイダラはななしは?と首を傾げて問う。これだけ懐かれば嫌いになるはずがないだろう、しかし。昔から好きな子ほどいじめたくなる、可愛いこほど泣かしたくなるという法則は鉄板らしく、私の小さな悪戯心が無駄に働いた。

「うーん…、…別に?」

私の答えに意表を突かれたのか、一瞬目を見開いたまま制止し、動いたかと思えば途端に眉がハの字に下がりそして今にも泣き出しそうに青い瞳がゆらりと揺れた。回していた腕を離しがしっと自慢の作品をつかみ部屋を駆け足で出ていこうとする。さすがにやりすぎたかと焦って彼の名前を呼ぶと振り向かないままなんだよ、といつもよりも幾分低い声で唸る。

「うーそ!大好きだよ!」

彼がくるりと振り向くと同時に、瞳に溢れんばかりに溜まった雫がぼろりとこぼれ落ちた。馬鹿ー!とぽかぽか振り落とされる拳を受け止めながら、意地が悪いと思いつつ、私は意外とサディストなのかもしれないと頭の中で呟いた。



泣いてほしい
(笑った顔も可愛いけれども)



100818
リクエスト消化!6〜8才くらいのデイダラです。基本偉そうであんまり友達がいないけれど懐いた人にはデレデレなデイダラの幼少期を希望です(ただの願望)リクエストありがとうございました!

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