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ごめん、ごめん、ごめんなさい、もうしないから、本当にあなたを愛してるの、本当にごめん、ごめん。画面を通して映し出される昼ドラのような光景を、彼の細い腰に泣きすがりながらもどこか遠巻きに見ている自分に気付き、また罪悪感。大丈夫、大丈夫だ。笑みを浮かべながらぽつりと呟く彼の声に神にも赦された気分になり、もうしないから、絶対、もうしないとしがみつく。彼の白い腕や首に、乱雑に撒き散らされた赤や青の痛々しい傷跡をまるで無視するかのように。許された安心感から次に襲いかかるのは疑問、罪悪感、そして行き場のない憤り。どうしてこんなに最低最悪な自分のことを許してしまうの。優しく抱きしめしまうの。いっそあなたのその指で息の根を止めてほしい、これ以上優しすぎるあなたを傷付けてしまわないように。こんな私に優しくするあなたがいけないんだ。理不尽な怒りの矛先がまた彼の方向へ向いてしまう。悪循環。それでも彼はけして私を離さなかった。ぼろぼろになりながらも、その綺麗な顔に傷がついても、腫れ上がっても、笑っていた。泣きたくなる。泣きたくなるほど、愛おしくも、殺したくもなってしまう。

「どうして」
「愛しているから」
「いっそ私を嫌いになればいい」
「それはできない」
「このままじゃ、いつか殺してしまう」
「それでもいい」
「どうしてそうなるの」
「お前が、死んでしまうからだ」


結局はすべて、私のためじゃないか。こうしてとんでもない理不尽な暴力に付き合うのも、髪を撫でて愛してると囁くのも、あなたが望んでいることではなく、仕方なく、私の我が儘に付き合ってるだけじゃないか。沸々と子どものように幼稚な憤りが沸いてくる。

「嫌い」
「ああ」
「大嫌い」
「ああ」

胸が詰まって喉が締め付けられ呼吸がうまくできなくなる。いっそ死んでしまいたい。どうして満足できないのだろう、こんなに側にいるのに、あなたに笑ってほしいのに。死んでしまいたい、死んでしまいたい。あまりの苦しさに呼吸を止めようとする私にまるで命を吹き込むように彼が優しく私に口付ける。眠りに落ちていく赤子のように不規則に跳ね上がっていた鼓動が安らかなリズムを刻み出す。

「お前にいくら嫌われようとも、お前が生きているだけで、側にいれるだけで、俺は幸せだ」

心底、幸せそうに瞳を細めて笑うものだから、彼の代わりに私が泣いた。傷付けるしか脳のない私の指に柔らかく口付けて愛してると呟く彼は、私にはどうしても幸せには見えなかった。どうして私達は出会ってしまったんだろう。もう二度と離れられないことはわかっているのに、どうしても彼が不憫に見えて仕方がない。そんな世界で一番幸せな顔で笑う不幸な彼を愛してしまった私は世界で一番不幸であり愛されてしまった私は世界で一番幸せ者だ。






共依存
(馴れ愛、舐め愛、ぶら下がり愛)





100715
自己犠牲って怖い。書き終わってから林檎嬢の遭難っぽいのが発覚


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