inzm(吹雪…海)



(うみなり:デフォルトは篠宮和巳)


きみをかたちづくるもの


*眸

「綱海くんと何を話していたの?」

 唐突に問われ、言葉もなく和巳はゆっくりと首を傾けた。見ていたの、か。他愛もない話だ、自身のいろの話…。

「私の髪の色が、海の色と一緒なんだと」
「へぇ……、うん、確かにそうかもしれないね」

 思案するような視線が紺青の髪を撫でてゆく、吹雪は困ったように、やんわりと笑った。煙に巻くようなその笑い方を和巳は、あまり好いてはいない。露骨に眉を寄せれば、自然と眸も眇められる。やはり、何も言わずに笑うに留める吹雪の色は白銀、まさしく雪のそれだね、氷よりもやわらかくあたたかい。和巳とは違った感情に基づいて細められた眸は、寒々とした雪原。
 わたしのいろ、は……。和巳は考える。髪は紺青、常夏の誰かさんが言うには冬の遠海(もっとわかりやすい例えが他にあっただろう、と言ってやりたくもなる)(綱海らしいと言えば、“らしい”とも思うのだが)。眸は紫紺、日が姿を現す前の空。はるはあけぼの、ふゆはあさ。奇しくも四季を冠すマネージャの二人の色と同じだなんて(逆転しているんだけれど、ね)。

「春と冬の合いの子は何になるんだろうな」

 和巳の突飛に過ぎる呟きにも吹雪は変わらずの笑みで以て応えた。鋭い言の葉の切っ先が鈍くきらめく。

「きみは、篠宮和巳以外の何者でもないよ」

 ああ、ああ、なるほど、確かに違いない! ……但しそれは、誰よりも自身が誰であるか悩み続けたお前にばかりは言われたくなかったが、ね。うっそりと声もなく、和巳もただ、わらった。



2012/06/10 16:36






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テーマ「人外ファンタジー」
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