小噺(パロ)



夢主さんお借りしてポケモンパロでSSS。
捏造、独自設定乱舞。





玉響の鎮静
 バトルよりもコンテストの方が似合っているんじゃあないのだろうか、眸を眇めてカズミは僅かに首を傾けた。空気中の水分が凍りつき光を反射する、まるで彼女自身がきらめいているようだね、ダイアモンドダスト。氷漬けの相手をちらりともせず、パートナーであるミロカロスのしなやかな身体に手を添えてうっそりと笑う、つい、見惚れてしまった。見事なバトルに拍手をひとつ、止めていた足をまた動かして、出来上がった人垣からカズミは抜け出した。観客から行きずりの身に戻る。名も知らぬ君、よすががあるならばどこかでまたお会いしましょうか! 刹那、浅葱色の眸と視線が交わる。
「―――、――」
 聞き取れない、しかし、確かに言の葉は意味を持ってふるわれた。何事かを呟いて悠然とわらうスバルに背を向け、視線を振り切るようにカズミは歩きはじめた。

(カズミとスバルちゃん)






蜂蜜珈琲
 ばっちりと視線が交差して、けれど何事もなくウキョウは困惑のままに眉を下げた。目と目が合ったらバトルの合図である筈ではなかったのだろうか。少なくとも自分の故郷ではそうだった、違う地方へと足を伸ばすのははじめてである、色々と勝手が違うのかしらん……見たところ、緑と水色のあいの眸を持つ彼の腰にはモンスターボールがセットされているから、トレーナーみたいだけれど。
「なぁ、名前は?」
「ぇ、」
「名前。教えてよ」
 なんの脈絡もない言葉に更に戸惑う。どうしようかと視線を泳がせ逡巡、意味を掴みあぐねていると急かすように服の裾を引かれた。
「……ウキョウ、だけど」
 結局、断ることも出来ず馬鹿正直に名乗ってしまったウキョウを映して、チョコレイト色の眸は上機嫌に細められる。
「俺はリッカ、なぁウキョウ……ちょっと付き合わない?」
 それは、バトルなのか、或いは…? 声もなく、あまいイロを添えた眸が哂う。

(ウキョウとリッカくん)






黒い秒針
 時折、思い出したように悲しい目をする理由が知りたかった。駆け出しなのだと話す割には、妙にバトルのいろはを知っているところだとか……彼女、ウミはあまり自分のことを語らない。
「どんな街にいたの?」
「遠い街……海の向こう、とおくの街」
 また、眉尻が下がる。何があったのか、と根掘り葉掘り尋ねる野次馬根性こそ流石に持ち併せてはいないけど……。いつか、話してくれるだろうか。左右で色の違う眸に、あなたは何を幻視ているの?

(カズミとウミちゃん)






シュガー
 よくもまぁ、その細っこい身体のどこに入っていくのだろう、なめらかな動作ですいすいと、フォークはケーキを切り分けてはミユの口へと運んでいく。甘いものは嫌いじゃあないけれど、些か胸焼けしそうだからヨタカはそっと紅茶の入ったティーカップに口をつけた。白いふわふわのクリームで飾られたスポンジは柔らかな黄色、苺の赤が華やかだね。ケーキを咀嚼するミユは心底しあわせそうで、つられるようにヨタカも頬をゆるめる。
「……食べる?」
 少しばかし注視が過ぎたらしい、仕事柄視線に晒されているからこそ、彼女はよく見られていることに気がつく。但し、今回は視線の意味までは読めなかったようだ、掲げられたフォークに乗るのはとっておきのストロベリー、ヨタカの返事も聞かずに口元へと差し出される。
「いいの?」
「うん」
「じゃあ遠慮なく」
 “諾”の声に、躊躇いながら苺にパクついた、嬉しそうに微笑むミユの表情はやわらかい。きれいに上を向いた睫みたいにツンとすましている、そんな風に見られがちなミユの本質は、きっと砂糖菓子の其れに近しいとヨタカはひっそり思う。
「うん、あまい」
おんなのこだもの、ね。

(ヨタカとミユちゃん)




2012/06/29 22:12






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