灰色に垂れ込めた雲が流した涙が、私の頬を濡らす。大丈夫、もう、笑えるよ。
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昇降口に残された子猫を拾い上げる腕があった。子猫はおとなしくその男に抱かれている。男が子猫の頭を撫でると、子猫は安心したように喉を鳴らして男に甘えた。
「…いいなあ、お前は」
あの子に、あんな風に笑いかけてもらえて。俺は、どんなにお願いしても駄目だったんだよ。そんなことを言う男の声は、少し悲しげだった。そんな男の心情を察していないのか、何も知らない子猫は男に体を預けて甘えた声を出している。
子猫をタオルに包んで自転車の籠に乗せ、濡れないように傘をさしてやりながら、男は雨の当たる頬と肩を濡らしながらゆっくりと自転車を引いて行った。
( 『
梅雨』understand xx end)
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