その声を皮切りにして、三名の部員が川嶋の方に顔を向ける。三人の視線を受けた川嶋は、葵をちらりと見やってにやりと笑う。
「今日の部活は、オセロ大会だー!」
わー!と無邪気に喜ぶ半田、表情一つ変えない美樹、聞いた瞬間にげんなりとした顔で溜息を吐く葵と、三者三様の様子を見て、川嶋は満足そうに笑った。
「しかもただのオセロ大会じゃないよ。さっきの逆転顔ルールに加えて、皆には何かを賭けてもらう。そして、その賭けるものはリクエスト制で、自分で決めることは出来ない。ゲームに負けたら、勝者がその賭けたものをもらう」
「全部で3マッチ。全員と対戦出来るようにね。どう?オセロ大会、乗る?」
「やるやるー!楽しそう!」と言ったのは半田。
「どうって、部長命令なんだからやるしかないでしょう」と言ったのは美樹。
葵は、何も言わなかった。いや、言えなかった。
川嶋はいつもよりも格段に楽しそうに見えたが、その目にはどこか真剣味を感じさせるような、切迫しているような光が宿っているように思えたからだ。
「真田ちゃん、やる?」
そう尋ねられて、葵は川嶋に顔を向けることが出来なかった。
川嶋の声はいつもと同じ調子だ。でも、今はその目を直視出来る気がしなかった。
「……やります」
呟くように了承した葵を、川嶋は満足そうに見つめた。
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