ふと、美樹は廉次郎を冷ややかに見下ろす葵の目にいつもは見られない光があることに気付いた。あるいはそれは、葵本人も自覚していないような。
それが何か分かった美樹は、誰にも気付かれないように口元に微かに笑みを浮かべた。どうやら、あのバカ部長にも希望はあるようだ。
(ま、せいぜい頑張りな)
美樹は心内では部長にエールを送りつつ、口に出した言葉は全く異なるものだった。
「バカ部長、遊んでないで今日の部活やりますよ」
「だって真田ちゃんがオセロしてくれないから…」
「いつか葵ちゃんが相手にしてくれるまでめげるな廉ちゃん」
「ぐはああああ、俺もうめげちゃってるよー!」
美樹がちらりと葵を見やると、かちりと目が合ったが、すぐに逸らされてしまった。
(おーい、自覚してる?)
未だしとしとと雨が降る窓の外を見やる葵の背中に向かって心の中で問い掛けてみる。勿論返事は返ってこないが、美樹にはその答えが分かるような気がした。
すると、早くも立ち直った(というか開き直った)らしい川嶋部長が、勢いよく跳ね上がって高らかに宣言した。
「っしゃ!幸福実現部、活動再開しますか!」
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