葵が目が覚めたのは、自宅のリビングにあるソファだった。
 辺りは既に宵に包まれていて、明かりのついていない部屋は窓から漏れてくる街の光でぼんやりと照らし出されていた。
 どうやら眠り込んでしまったらしい。川嶋の自転車を降りてからの記憶が飛んでしまっているが、部屋には辿り着けたらしい。

 ぼんやりとした頭のまま起き上がろうとすると、自分の身体からブランケットがするりと床に落ちた。それをあまり気にせずに台所へ向かう。
 コップに水を注いでいると、リビングに置いてきた携帯のバイブが鳴った。水を片手に携帯を開くと、川嶋からメールが入っていた。


 起きた?
 今日は雨の中の部活だったから、風邪引かないようにね。
 あと夜ご飯はしっかり食べること!こないだもそうだったけど、真田ちゃん食わなすぎ。
 それでは良いレディーにはなれませんよ(笑)
 じゃーねー、また明日ー。


 葵は思わず携帯を床に叩き付けそうになった。何が『良いレディーにはなれませんよ(笑)』だ。この人は人の神経を逆撫ですることを職業にでもしているのだろうか。
 少々腹立だしくはあったが、その川嶋らしい(うざったい)文章を見て、笑みを零さずにはいられなかった。その笑みも嘲笑が八割ほどを占めてはいたのだが。
 叩き付けそうになった携帯を持ち直し、川嶋に向けて返信のメールを打つ。


 起きましたよ。
 雨の中の部活にしたのは先輩でしょう。
 ご飯くらいちゃんと食べます。
 では、また明日。


 この変態かつ不躾で馬鹿丸出しの部長が明日は何をしでかしてくれるのか。葵は溜息を吐く反面、それを楽しみにしている自分を心のどこかで感じていた。

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