扉が開かれると、そこはこじんまりとしていて、資料室というよりは会社のオフィスのようだった。
 扉を開けて真正面に大きく開け放たれた窓があり、窓のそばには空っぽの水槽が置いてある。二対の布張りの少し古ぼけたソファがテーブルを挟んで部屋の中心に置かれ、そのソファの上に、顔に雑誌を乗せて少年が眠り込んでいた。

「おーい、真田ちゃん連れてきた……って、半ちゃん寝てるし」

 すると、ソファで眠っていた少年がのそりと起き上がった。まず葵の目を引いたのが、ブリーチをしたのだろうか、日本人とは思えない金髪だった。
 半ちゃんと呼ばれたその少年は、眠そうに川嶋と葵を見つめ、突如意識がはっきりしたように目を見開いた。

「うっわ!部長が女の子連れてきた!何これどういうこと?」
「前に言ってた真田ちゃんだよ。約束通り連れてきたよー」
「うっわ!ほんと?!君が噂の真田ちゃんかぁ〜、初めまして!」
「真田ちゃん、こいつは半田。部員だよ」
「どーも、半田龍二です!よろしくねー」

 ソファから飛び上がってこちらに駆け寄ってきて人懐こい笑顔で早口でまくし立てる半田を見て、葵は仔犬を連想した。

「真田葵です。こちらこそ、よろしくお願いします」
「へえ、葵ちゃん礼儀正しいね」

 葵が半田にぺこりと頭を下げると、半田が楽しそうに笑いながら言った。その言葉を聞いた途端、川嶋が無言で半田の頭をはたいた。

「いって!部長何するんすか」
「いきなり名前呼びって、それ失礼でしょ」
「いいじゃん別に葵ちゃんでさー、ねぇ葵ちゃん?」
「何とでもどうぞ」

 ほらね!となぜか得意げに胸を張る半田に川嶋が不満そうな視線を向ける。別に呼び方なんてどうでもいいだろうと葵は冷めた目でこれらを見ていた。

「そういえばみっちゃんは?まだ来てないの?」
「いや?俺寝てたからわかんないんすけど」

 川嶋が半田の注意を葵から逸らすように半田に問い掛けた。どうやらもう一人部員が居るらしい。あだ名だけでは性別が判断しにくいな、と葵は思った。


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