翌朝、割れるような頭の痛みで目が覚めた。思わず呻きながらベッドから起き上がろうとすると、何かによってそれを阻まれた。のろのろと視線を下に向けると、少女が自分の胴体に腕を回して眠っていた。
 一瞬、この少女が誰なのかと頭の中が混乱したが、すぐに昨晩の出来事を思い出して合点がいった。
 起き上がろうとすると、自分が下着しか身につけていないことと、少女がワイシャツと下着だけで寝ていることが分かった。彼女はワイシャツの下に下着をつけていないらしく、柔らかな乳房が自分の肌に押し付けられていた。
 枕元にある目覚まし時計を覗いてみると、時刻はまだ朝の6時半だった。
 回された腕をそっと引き離し、ベッドから起き上がり、キッチンへと向かう。冷蔵庫を開けて中を覗いてみるが、めぼしいものは見つからなかった。

「へえ、何も入ってないね」
 背後から突然声を掛けられ、驚いて振り向くと、少女がこちらを覗き込んでいた。

「起きてたの?」
「まあね。お兄さんは二日酔いみたいだね。可哀想に」
 自分の顔を見てけろりと笑う少女は、起き抜けの恰好のままで和輝の背中にまとわりつく。
 一発ヤッとく?ととく?なんておどけたように言う彼女に、自分は昨夜少女を抱いたのかということを聞いたら、少女は首を横に振った。

「お兄さん先に眠っちゃったし、昨日は私もそんな気分じゃなかったから」
 それにしてもかなり飲んだよね、と言いながら、少女が冷蔵庫を覗き込む。中身は見事に空っぽで、少女が呆れたような顔をこちらに向けた。

「お兄さん、ちゃんとご飯食べてんの?ビールしか入ってないじゃん」
「前は彼女が全部材料買ってきてたからさ」

 そう言ってしまってから和輝はしまった、と思った。元カノのことなんか思い出してしまったものだから、自分が振られたことを思い出し、いくらか気分が落ち込んだ。
 ああ、畜生。あんな良い女を逃した自分に腹が立つ。

「ほお。元カノから料理を作ってもらっていた、とな」
 少女はふむふむ、と顎に手を当ててわざとらしく考え込むふりをした後、ぱっと顔を上げた。その顔には化粧を落としたせいか、昨晩の艶かしい表情はなく、年頃の少女らしい笑顔を浮かべていた。

「あたしがご飯作ってあげるから、一緒に買い物行こ?」
俺が口を開く間もなく、少女が決まりだとでも言うように、満面の笑みで俺の腕を引っ張った。

「まずはその汚い髭面を綺麗にしなくちゃね!」
余計なお世話だ。

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