「おーおー、がっつくねぇ」
「うるさい」
横から茶々を入れる佐倉を睨みつけてやると、彼はけろりと笑い、近くを通りかかった従業員にスプーンを頼む。亜紀がパフェを食べながらそれを見ていると、彼がこちらに振り返ってにやりと笑った。
「半分こにしよ」
思わず咽返ってしまった。
急いで口元をナプキンで拭って佐倉を見やると、佐倉はにやにやとこちらを眺めている。
「いいよもう。あたしお腹いっぱいだし」
「遠慮しなくていいって。それにいいじゃん、こーいうの彼氏彼女っぽくて」
「いやまずあたしたち付き合ってないでしょ。それにすごく恥ずかしい。そんなの今時誰もやんないよ」
必死に否定すると、佐倉が既に3分の1程減ったパフェを見下ろして、それは残念だとぼやいた。
「あ、じゃあ店員さんに新しいスプーンもらうことなかったな」
「何で?」
「亜紀が使ってるやつ使えばいいじゃん」
「絶対嫌」
******
パフェを食べ終わって勘定を終えると、店の外の通りを二人で並んで歩き始める。亜紀はおかしな気分だった。あまり会話をしたことのない男子と二人きりで、周囲から見たらデートをしているように見えるという状況が未だしっくりときていなかった。
「何かデートしてるみたいだよねー」
隣りに居る佐倉が自分の思考を読んだように声を掛けてくる。超能力者か。
「はいはいそうですね周りから見たらデートしてるようにしか見えませんね」
「何それ。すごい棒読みなんだけど」
ふと、通りの斜め向かい側に見慣れた制服姿の男女を認める。二人は仲睦まじく手を繋いでこちらに向かって歩いてくる。少年の方が少女よりもかなり背が高い。少女よりも頭二つぶんくらいは背が高いのではないだろうか。
(いいなあ。お似合いだなあ。あちらさんは本物のデートという訳だ)
二人が徐々にこちらに近付いてくる。二人の顔がこちらからはっきりと見える位置まで来ると、亜紀は驚きで目を見開いた。
「ん?どうした?」
突然その場に根が生えたようにして動かなくなった亜紀に、佐倉が暢気に呼びかける。亜紀はその声も耳に入らないようで、通りの向かい側の二人を凝視している。「ねえ、亜紀…」
「行こ」
妙に硬い声で佐倉の声を遮ると、亜紀はその場を早足で立ち去る。それに少し面食らったような佐倉も、何も言わずに亜紀について行く。
佐倉が気になって向かいの二人を振り返ると、合点がいったように目を細めた。
「ああ、なるほどね」
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