「っかー!何だあれ!絶対あの子佐倉のこと好きでしょ!」
「だよねえ、あんな顔真っ赤にしちゃって」
「ねえ、二人とも何のパン買うー?」
 昼休み、美紅と麻美と亜紀の三人で混雑した購買の前で、美紅と麻美が議論しているのを尻目に、亜紀が二人に間延びした声で問いかける。その問いかけに対し、美紅が不満げな顔で逆に問い返した。

「……亜紀、あんた不安になんないの?」
「え、何で」
「さっき来たあの子、絶対佐倉のこと好きだと思うよ?」
「それが何か?」
「あーっ!何でそうなんの馬鹿!お前は馬鹿だ!」
「バカバカ連呼しないでよ!別にいいじゃん、好きなら好きでさ」
「亜紀ちゃん、あの二人が付き合っちゃったらどうすんの?淳平君の気持ちがいつ変わらないとも限らないんだし」
「知らん。興味ない。ってかそれより何のパン買うか決めなよ」
 その答えを聞いた美紅が遠い目をして、ああもうダメだと呟き、麻美は苦笑いした。

「亜紀は何も分かっていない…」
「はいはい、そうですねー」
 二人がパンを決められそうにないので、亜紀は勝手にメロンパンとやきそばパンを一つずつ買って二人に手渡した。
 それを見た美紅が、唇をへの字に曲げて不平不満を零す。

「私メロンパン好きじゃない」
「それを早く言えよ!何でもいいかと思って買っちゃったじゃん!」
 ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人を尻目に、麻美は一人溜息をついた。

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