ショックだ。非常にショックだ。今、私は金属バットで頭をぶん殴られたかのような衝撃を受けている。実際にそれを食らった経験は無いのだが、でもそれぐらいショックな出来事だった。

 隣のクラスの長身でバスケ部の爽やかなイケメン君が、ラブホテルから大人な女性からべったりくっつかれて(少なくとも私にはそう見える)出て来たのだ。
 こんな場所だから、何をしていたかなんて明白だ。きっとあの化粧の濃い大人な女性とベッドの上で激しく(ここで自分の思考にストップを掛けた)

 あんな爽やかさを具現化したようなイケメン君が、どうしてそんなことに。やはり彼も男だったという事なのか。
 ああ、幻滅。私の中の彼は高三になっても未だにチェリーボーイという設定だったのに。ショック過ぎて、明日から何を糧にして高校生活を送ればいいのかわからない。

「あ…?」
 あ、やばい。私があまりにも見つめすぎていたせいか、彼がこちらに気付いてしまったようだ。いや、それより、今の私の顔はアホそのものみたいな締まらない顔をしているんだろう。そっちの方が問題かも。私は急いで表情筋に力を込めて無理やり笑顔を繕った。
「○○君!こんなとこで何してんの?そちらはお姉さん?」
 ああ!自分直球すぎる!気まずくて死にそう。彼女らしき大人のお姉さんはさっきから私のこと睨みつけてるし。普通に怖いし。
 彼は何だかびっくりしたような顔でこっちを見てる。そりゃそうだよね。ラブホから出て来たところを隣のクラスの平凡を具現化したような女子に見られたんだから。

 さて、彼はどんな言い訳をするのかな?

 私が彼の言葉を待っていると、彼が恐る恐るといった体で口を開いた。

「××……だよね?何その格好」
「は?」
 思ってもみなかったような言葉を返されて、おかしな声が出てしまった。自分の出で立ちを眺めてみるも、別段変わったところはない。いつも通りの衣装だ。

「別に普通だけど?」
「や、普通じゃねーだろどー見ても!髪と化粧メガ盛りでそんなスリップの開いたドレス着てる女子高生なんていねーよ!」
 てか、ここ、歌舞伎町ですけど。そう彼に突っ込まれて、合点がいった。なるほど、そういうことか。

 さて、どう言い訳しようか。

2011.02.09 沢村 詠



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