俺らは至極当たり前のように生きてる。でもそれって最高の奇跡だろ?
 一人の人間が母親の腹の中から何の障害もなく生まれて、両親も祖父母も健在で、生活に何不自由することなく生きてる。
 だから錯覚する。俺らはこのままいつか大人になって、誰かと恋をして、結婚して子どもが生まれて、その子どもも自分と同じように何不自由させることなく育てていき、やがて老いて死ぬ。そんな平凡な夢物語を抱いている。

「でもさ、地球って来年に滅亡するらしいよ」
「何それ。誰が言ったのそんなこと」
「知らん。世界のどっかの古代人が大昔に予言してたらしい」
 そう答えると、彼女はふんと鼻でせせら笑った。馬鹿馬鹿しい、と首を振り、飲みかけのビールを一気に飲み干す。

「あんたそんなこと信じてんの」
 だってそうだろう?俺らは当たり前のように生きて、当たり前のように未来を信じて生きている。何の確証もないのに、当たり前のように。
 例えば来年、本当に地球が滅亡するとして、俺らが今信じている夢や未来はどこへ行ってしまうのだろう。

「来年地球が滅亡する確証だってどこにも無いでしょう」
 どうせ人間の言うことなんだから。古代人だか何だか知らないけどね。と言って彼女はにやりと笑う。
 ああ、そうか。来年地球が滅亡する"かもしれない"のであって、それが決定されたわけではないのだ。

「来年なっても地球が滅亡してなかったらまたここで飲もう。まあ、お前は地球が滅亡しても図太く生きてそうだけどな」
「そういうあんたは人類の中で真っ先に死亡しそうだけどね」
 それはまた酷い話だと思った。何なら意地でも生き残ってやろうじゃん。こいつとまた酒飲む為に。

2011年1月10日 沢村 詠



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