まず初めに、僕は彼女が好きで好きで堪らない。
 でも、彼女には既に付き合っている奴が居た。俺だって初めはそれを知って身を引こうとしたさ。でも、駄目だったんだ。彼女を知る毎に俺の彼女への想いは募っていって、苦しくて夜眠れなくなるぐらいにまでなってしまった。
 それで、この間の飲み会で偶然(と、いうか俺がそうなるように図ったんだけど)彼女と帰り道が二人きりになったんだ。
 最初の方は楽しくお喋りをしていた。でも、俺が我慢出来なくなって、白くて小さくて柔らかそうな彼女の手を、思わず取ってしまったんだ。瞬間、彼女は俺の手を振り払った。
 そんな顔をさせるつもりじゃなかった。引き攣った顔でこちらを見つめる彼女を見て、おかしな話だけども、俺は激しく彼女に欲情しているのが分かった。

「なあ」
 そう彼女に声を掛けた時の俺の顔は、きっと酷く情けないものだったのだろう。彼女はゆっくりと繕った笑顔を顔に貼り付けた。


「×××××」


 その時の俺は、愛しい愛しい彼女が発した声さえ耳に届いていなかった。彼女に歩み寄って、彼女を力いっぱい抱き締めた。
 やめて、と硬い声で言う彼女の顎を上向けると、彼女は酷く切なげに俺の目を見つめていた。
 戻れなくなる。そう言った彼女の目尻からは、今にも溢れ出しそうに涙がいっぱいに溜まっている。それをそっと拭ってやると、彼女は身を縮みこませて嗚咽を上げた。
 屈みこんで彼女の唇に自分のそれを重ねると、今度は彼女は抵抗しなかった。
 唇が離れると、途端に寂しさを感じる。もっと、もっと、もっと。彼女が欲しいのだ。彼女の全てが欲しいのだ。
 彼女の顔を見ると、目が合った彼女は泣きながらも笑った。

2010年12月3日 沢村 詠





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