笑いながら彼氏に振られたと言う目の前の彼女の目は、嘘をつけない。顔は笑っていても、君の目は泣いている。

「そんな泣くなよ」
「何言ってんの、泣いてないよ」
「お前がそんな顔すると俺が辛いからやめてよ」

 そう言うと、彼女は驚いたように目を見開き、次の瞬間に盛大に吹き出した。あ、やっと笑った。

「何、ちょっと、そんな真顔の棒読みでそんな台詞言われたって面白いだけだよ」
「本気だけど」
「そこがまたウケるのよ」

 笑いすぎて出たものか、それとも先ほどまでひた隠していたものが溢れ出たのかは知らないが、彼女の目には涙が溜まっている。それを指で拭ってやると、未だに笑いが止まらないらしい彼女から優しいんだねと言われた。

「そう、俺優しいよ。だから俺にすればいいじゃない」
「うん、考えておく。何かすごく嬉しいな」

 そう言って華やかに笑った彼女を見て、俺はやっと安心することが出来るんだ。


2010年5月15日 沢村 詠





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