彼女は、何かの病気だと思っていた。
まず、彼女は僕と目が合うと赤面して顔を背ける。それを不思議に思って彼女に近付いていくと、彼女は途端に口も利けなくなる程呼吸が上がってしまう。
彼女の症状は僕と一緒に居る時だけに起こったから、僕は必然的に彼女を避けるようになった。しかし、彼女は僕が離れていくと決まってたくさんの涙を流した。
なぜだろう。僕と一緒に居なければ彼女の病状が悪化することもないだろうに。
一度、彼女に病院に行くことを薦めたことがある。だって彼女のことが心配だったから。彼女がこのまま涙を流しすぎて死んでしまうのではないかと思ったから。
彼女は驚いたようにして顔を上げて、僕を見つめた。
そして、確かに笑った。
「ありがとう」と言って、笑った。
彼女は美しかった。泣いた後で少し目が赤くなっていたけれど、それでも彼女は美しかった。
そうして、僕は不意に自分の心臓がどきどきと打ち鳴らす音に気が付いた。心なしか顔も熱いようだ。きっと、今の僕は彼女のように顔を真っ赤にしているのだろう。
どうやら、僕も彼女と同じ病にかかってしまったようだ。
今日あたり病院に行ってこようと思う。
2010年02月17日 沢村 詠
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