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「私に息子なんていやしないよ。あんたみたいな汚いガキ...知りゃしない。」


「...なんで汚いガキだって知ってるんだよ。見てたんだろ。...オイラがいつも下からアンタを見ていた時、アンタもオイラの事を見てたんだろ。...何度も叫んでも答えてくれなかったけど、オイラを巻き込むまいと...必死に声が出るのを我慢してたんだろ!!」


後ろで晴太君が必死に日輪さんを説得している。...日輪さんの気持ちも分かる。晴太君を逃がそうと吉原から脱出し、鳳仙に捕まった。つまり、晴太君の自由と引き換えに日輪さんは自由を奪われたのだから。それに鳳仙は日輪さんにここで腐って死ぬことを望んでいる。...言い換えれば、日輪さんが晴太君を護るためにそれを選んだとも言うのでしょう。

...と、そっちより私が気をつけなければいけないのは目の前のクソガキでしょうね。神楽ちゃんのお兄様ね...妹さんの方は兄貴分である彼の教育がいいんのでしょうか。随分といい性分であるというのに。


「...来ますよ。」


「...分かってらァ。」  


晴太君が日輪さんが閉じ込められている戸に向かって...必死にそこをこじ開けようとする中、その通りの方から重みのある足音が。それに気がついた私は坂田さんにそう言うと...先程までしゃがんでいた坂田さんが立ち上がった。


「どなたからか刀をいただいた方がいいです。...このクソガキでさえ、先程のあれで鞘がこのザマです。武器は使いようですよ。」


「...なんなら、テメェの刀預かってやろうか?...太陽の下で返してやらァ。必ず取り戻しに来いってな。」


「そんな月詠さんの二番煎じなのは冗談でしょ?...もう一度チャンスを差し上げますから、やり直してください。」


足音が晴太君に近づいてくると共に、私と坂田さんは互いの敵を見合う。背中を互いに合わせながら。その時に先程の神威との出会いの時についた鞘のヒビを見せてアドバイスをすれば...坂田さんは最初は私の刀を使おうと思ったのでしょうが....最終的にそこら辺で転がっている刀を手に取っていた。


「もうこんな所に絶対に置いていったりしない!!今度こそ一緒に吉原を出るんだ!」


「...さっきの答え、後で教えてやらァ。だから精々死ぬな、毒舌女。一緒に吉原を出るぞ。」


「母子で地上に行くんだ!!だから...母ちゃん、ここを開けてくれ!!お願いだ!母ちゃん!!」


「あ、それは別に構いません。どうでもいので。...それよりも私は坂田さんの初恋の話をお聞きした」


「"別に構いません"ってどういうことだこの女ァッ!!?いいか!?よく聞け!この毒舌女!...俺はなァ!テメェから目が離せない訳!だからな!そんな女から"どうでもいい"って言われてみろ!?悲しくなるだろうがッ!!」


晴太君が身体を使って、必死に戸にぶつかりながら日輪さんを説得しているというのに...この男はなんなのでしょうか。私が言ったことに対して何かを思ったらしく...いきなり肩を掴んで、私の顔を見ながら声を荒らげた坂田さん。

しまいに"...あ?...え?なんつった俺?"と顔を真っ赤にさせながら...なにやら迷子になっていますね。...いい歳した男が歳下の女にこんなに振り回されて気持ち悪いったらありゃしませんね。...私、気持ち悪いものを目の当たりにすると吐き気が


「だァァかァァらァァ!!テメェの毒は全て言語化されてんの!なんでいつも毒だけ心の声じゃなくって、口から漏れるんだテメェは!!」


「それは大変失礼致しました。ほら、やっぱり坂田さんって頭...あれではありませんか。心の中で思うより口に出した方が伝わるかなって。...なので、失礼なことかと思いましたが...失礼を申し上げたまでです。」


「失礼に対しての失礼の上書きなにそれ!?学校で習ったことないよ!?テメェは一体、そんな技術どこで習ってきたんだ!?心配になるレベルだよォ!?」


「そんなの生まれつきに決まってます。天性の才能ってやつです。素晴らしいことなので、尊敬してくださって構いません。きっと坂田さんには一生持てない才能なので。」


「ただ単にタチ悪いってことだろ!?んな"失礼"な才能要らねー...って、痛った!?変な音鳴ったけどォ!?首が"ゴキッ"って鳴ったけどォ!?」


私の視線の先には晴太君が...坂田さんの視線の先には神威が。その私の視線の先にとうとう現れたのは鳳仙...いつまでもうるさい坂田さんの顔をゴキッと曲げてそちらに向けると、先程まで忘れてたいたかのように"あっ"という声をあげる坂田さん。


「まさか幕府がこんな所に迷い込むとはな...しかも、苗字名前と来たか。小姓組の番頭の娘とはな。小汚い野良のガキに、神威...それに番頭に青臭い侍。...ここはいつから託児所になったものか。」


「...私の名前を存じ上げているとは。吉原で引きこもっているただのジジィかと思っておりました。事情通ですね、お見事です。...その通りの者でございます。」






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