"実は今我々見廻組で、ある組織を追っていまして。そこに潜入し、情報をこちらへ流して頂きたいのです。"
"標的は知恵空党。元はラップによって幕府をディスるだけの不良グループでしたが...倒幕思想が過激化。今や巨大な暴徒集団と化しています。"
"彼らが近く大挙し、大規模なテロ活動を行う事を画策しているとの情報がありました。...ここで一網打尽にするのが潜入捜査の目的です。"
｢ポニーテールお似合いですね、坂田さん。｣
わざわざつけ毛や普段とは違う格好をしてまで、こんな路地で見張りしているのには訳がある。先日の佐々木とかという名前チャンのストーカー男にのせられて...犯罪の片棒を担がされている俺。
ふと今までの流れを頭の中で確認していると...付けていたつけ毛に触れられ、そう耳元で言われたものだから..."あはん"という声をあげてしまい、耳に手を当てて勢いよくその方向を見れば...名前チャンがパーカー姿でそこに立っていた。
｢いきなり耳元でいい声で喋らないでくれるゥ！？イッちまいそうになったじゃねェか！！こんな所でなにしてんだよクソ女...え、なに？もしかして俺に会いに来てくれたとか？...まさか、んなこと...、｣
｢はい、坂田さんに会いに来ました。なにせ私たち...お付き合いしているので。仕方なく私は坂田さんにお会いしなければなりません。...それゆえご覧の通り、完全にオフなのでデートでもいかがかなーっと。｣
...なんなのコイツ。相変わらず嫌味ったらしいというか...どうせんなこと言われるかと思って、"まさか純粋に会いに来たとか、んなことねェよな"と聞いたつもりだった...そしたら"純粋に会いに来た"と言った後にこれだよ。でたよ、"仕方がなく"ってやつ。
...だが！んなの"デート"という単語でどこかへと飛んで行った。毎度そういうの上手いよな、コイツ...それこさあの佐々木とかと似たような...って、俺潜入捜査してるんだったと思い出すも...圧倒的に"デート"の方が勝って。
｢デ、デート！？...っし！ちょっと待ってろ！潜入捜査なんてすぐ止めてくるわ！お前とのデートの方が大事だし！｣
｢...潜入捜査？...万事屋のお仕事ってそういうのもなさるのですか？私、坂田さんのお宅にお邪魔しようと歩いていたら...坂田さんとお会いしたのですが、まさか新八君や神楽ちゃんもこんな危ない仕事を？...それは大人としていかがなものでしょうか。坂田さん、私...貴方をいつも見損なっていますが、極限までに失望しました。デートなんかより彼らを｣
｢凄い勢いで喋ったなクソ女ァッ！？なんでお前、そんなにアイツらに甘ェんだよ！？その甘さ俺にもちょっぴり分けてくれや！大体、"いつも見損なってる"って酷くねェ！？"失望"なんて言葉...恋人にいっちばん言っちゃいけねーからな！？｣
｢彼らに甘いのではなく、彼らは"子ども"だからですよ。"子どもを護るのが大人のつとめ"ではありませんか。坂田さんなんてどうでもいいです。...それで新八君たちはどこですか。私が引き取ります。｣
ズカズカとこっちの路地にはいってこようとする名前チャン。そっちには攘夷浪士が蔓延っている訳で。ここで鉢合わせされると金がパァになる...あれ？ここに名前チャン送り込めば、一網打尽になんじゃね？
...いやいやい！待て！俺！...こんな恋人を貶したりする野蛮な女に狩られるより、あの男に金をもらって狩られる一網打尽の方がいいだろうが。なんたってコイツ...金をくれる女でもなければ、金を"返せ"って言ってくる借金取り女だからな。頭で考えを纏めていると...胸元にあった携帯が振動した。
｢携帯？...坂田さん、とうとう携帯を契約したのですか？私に借金を返してないのにいいご身分ですね。死んで詫びてください。...ご安心ください、新八君と神楽ちゃんは私が責任もって大人まで面倒を見るので。｣
｢なんでそこで刀を出そうとする訳！？やめやめ！刀袋から刀を取り出そうとすんじゃねェ！...これ、あれな！？依頼人から預かっ...ちょ、待て。緊急連絡らしいわ。｣
尽く俺を殺しにかかってくるのなに？"好き"って言ってくれるのと同時に、やたら"死ね"って言ってくるんだよなコイツ...。背中に背負っていた刀袋から刀を取り出そうとする名前チャンを抑えて...携帯を取り出せば、"緊急連絡"と件名とは裏腹にどうでもいいことだった。
"部下のノブたすから差し入れ、キザうます。早く帰ってこないと、銀たんの分なくなっちゃうお。P.Sほしかったらメールしてネ"
｢｢...。｣｣
...お願い、そんな目で見ないで。かの佐々木からのメールは、あの顔から想像もできないくらい..."JKかよ"って言いたくなるぐらいのもので。それに衝撃を受けていると次々と似たようなメールが届くまくっ...って、なんなの、これ。コイツなんなの。
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