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「あら、坂田さん。お仕事お疲れ様です。せっかくお昼を共にしようと思ったのですが...坂田さんはお仕事だと伺いまして。坂田さんは召し上がりましたか?...もしまだなのであれば、冷蔵庫に」


「んなこたァ、どうでもいいんだよッ!!それより!あの時、夏祭りにいたあの綺麗な男!...お前だろ、名前チャッパァー!!」


「私のせっかくの手料理を"んなこと"で済まさないでいただけます?...あと、人間はなにかと挨拶が大事です。坂田さんはただでさえ、人間以下なクズなのですから...せめて挨拶だけは、真面に返したらいかがかと心優しい私は心底思います。」


「どこの世の中に、心優しい人間が人様の頭を地面に擦り付けるんだァッ!?どいつもこいつも人の頭をなんだと思っていやがんだ...って、んなことより、俺とお前の話だよ!」


"名前"と名前を呼ばれて腕を掴まれた。振り返るとそこには坂田さんがいて。"あの時のアイツ"とか仰ってましたが..."いつのアイツ"なのでしょうか、と心で笑いながらいつものように坂田さんを相手にしていた。

坂田さんの爆発した頭を掴んで、地面に叩きつけ...そこに脚をのせた後、坂田さんがガバッと身を起こして...私の肩を掴みながらゼェゼェと息を切らしながらも、"私たちの話"と言ってなにやら騒いでいる。


「それで坂田さんと私のお話とは、なんの事でしょうか?私としては坂田さんとは生涯を添い遂げたいと考えておりますので...将来、結婚しましょうね。」


「あ、う、うん!!こちらこそ末永く...って!んな当たり前の未来のことじゃなくてェ!!...だァァァッ!今はそっちじゃなくて、過去な!?あの時だよ...俺とお前が初めて会った夏祭りの...ッ!!」


「夏祭り...?すみません、私...かれこれ何十年かこの世に存命しているので、あらゆる夏祭りに参加した事があるのですが...坂田さんがいらっしゃったのはどの夏祭りなのでしょうか?」


「こんの女ッ!!この期に及んで人をおちょっくってんじゃねェ!俺の初恋の相手が...名前チャンだって...初恋が実ったって話してんだよ!恋人でそれ以上ねェってぐらい嬉しい話してんだろうが...ちったァ真面目に」


「それはそれは、嬉しいに決まっているではありませんか。あの坂田さんが、このような私が"初恋相手"だと...街中で叫んでいるのですよ?」


なんでこうも坂田さんは周りが前が見えなくなるというか...私相手にこうなってくれるので、それは嬉しいのですが。墓穴を掘るしかない男なのでしょうか...街行き交う人たちが、私たちの様子に"ヒュ〜"やら"キャ〜"と先程から言っていて。それについて、ツッコミをいれると...頭から蒸気をだすほど坂田さんは全身真っ赤になった。

"アッー!!"と甲高い声叫んだ後に、手で顔を覆いながら...しゃがみこんだ坂田さん。...ふむ、これは早かったというか。この坂田さんの事ですから、あの時の私が"私"であるとたどり着くことはできないと思っていたのですが...正直驚きました。


「坂田さん、確認なのですが...その夏祭りで貴方は、りんご飴を買おうとしていましたね?...小さな子どもの後ろで、貴方は順番を待っていました。」


「はッ!!やっぱ...ッ!!」


周りで私たちを見る方々に私は会釈をし、"ありがとうございます"と伝えながら...同じようにしゃがみこんだ。当時のことを思い出しながら、私は坂田さんに問いかけた。ズイズイと顔を坂田さんに近づけながら。


「その子はお金が足りなくって、買うのに困ってましたね。...その時、後ろにいた貴方が足りない分のお金...支払ってましたよね。自分の分だけ、きっかりしかお金がなかったというのに。」


「う、うん。そうなんだけど...。え、あ、...ちょ、なんで近づいてきてんの!?」


当時、坂田さんは攘夷志士であり攘夷戦争の真っ只中で。しまいに"浪士狩り"というのもあった時代...そんな中、なけなしのお金だったと思います。さらに再会して始めて知りましたが...坂田さんは甘党。よほどあの状況は...子どもより自分を優先する場面でしょう。

それなのにそれを子どもに譲って、自分は食べられなくなって...笑顔で"ありがとう"と言う子どもに、後ろ手で挨拶をしながら、鳴り続けるお腹を摩っていた人。その時私は...あの人の言う"笑みが溢れる世界"というものが、これだと思った。


「...そうですね、今思えば私も"そう"です。さすがに再会した際に"セックス"云々で好感度なんてどこかへと消えましたが。...それは貴方も同じでしょう。私の素直な性格についてなにかとやかく言ってましたし。...でも、」


"今は晴れてお互いに惹かれて恋人です"と続けた。尻もちをついても尚...近づく私から逃れようとする坂田さん。もう背中は地面についていて...私はその真っ赤な顔の真正面になるように、横に手をついて坂田さんの顔を見下ろした。そして、彼と"同じ"であると伝えて...その唇に自分のを重ねた。


「私も今思えば...貴方が"初恋"です。..."お久しぶりです"と申し上げましょうか。...ね?坂田銀時さん。」


7話 "初恋"


(...さて、周りの目や声がうるさいので、場所を移動しましょうか。)
(それ、キスをする前に言う台詞ゥ!?なんっでお前いっつも...人前でキスすんの!?すっげェ恥ずかしいじゃん!)
(だって...キスしたかったんだもの。)
(なんだのその"だもの"って!"みつを"か!?"みつを"なの...もっかいやって!超可愛かったから!"銀ちゃんにちゅーしたかったもの"って、もっかい言って!)
(いいですよ。坂田さんの頭はー...クルクルパーだーものっ。)
(なんでいっつも2回目には貶してくんだクソ女ァッ!?)





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