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「いたわよォォォ!!そっちィ!回り込んでつかまえて!!」


「なんなんだよもォォ!!しつこいんだよ!ババァ!!」


いつものように花嫁修業をしていると...確かに辺りが騒がしいと思っていれば、なにやら新ちゃんが"道場破り"と称して...九ちゃんの屋敷に来ているみたいで。

きっと...いや、絶対に私のせいだと思っているんだわ。と、思ったら身体は動いていて...世話係のババァから逃れるように屋敷を走り回って...新ちゃんを探していると...、


「お妙ちゃーん!ストーップ、ストーップ!!これ以上好きにはさせ...ん?ぐほォ!?」


その件で九ちゃんのお父様が私に話があるみたいで追いかけてきていて...、その前に"こんなこと止める"ように新ちゃんに話をしようと探している最中...再び現れた。...けど、それを蹴り飛ばして私の腕を掴んだのは...新ちゃんだった。


「新ちゃん!!...ちょっ、離して!!」


「うるせェェ!!...僕はもう!姉上の言うことなんて金輪際ききません!何も言わないで、勝手にこんな所に嫁ぎに行ってしまう人なんだ!!...だったら僕も勝手に、姉上を取り返します!!」


「...新ちゃん、何も言わなかったのは...謝る。でも、こんな事は...もうやめて。柳生家相手にこれ以上無茶したら...タダじゃすまないわ。」


屋敷を走り回って、追っ手を振り払い...人の気配もない部屋の中に入ると、少し落ち着いて話ができて。新ちゃんがここに来た理由はやっぱり私で...。"私の気持ちは固まっている"と伝えると、再びぼそぼそと呟かれた。


「姉上はズルイ、いつもニコニコ笑ってばかりで。本当の気持ちなんて、これっぽっち見せてくれないんだ。...僕、姉上と名前さんって似ていると思っていたんですけど...全然違いますね。あの人は本当に"素直"で、姉上は"嘘つき"だ。」


「...。」


「なんで名前さんがここに出てくるんだ?って思いましたよね?...さっき、名前さんとお会いしたんですよ。その時に言われたました。...僕は、"信じるべきものを己で判断できる"って。...だから、僕は姉上の"嘘つき"を判断して今...いや、僕らはここに来ました。」


話によると、銀さんや神楽ちゃん...近藤さんに土方さん、沖田さんまで...私のせいでここに来て、柳生家と喧嘩をしているみたいで。名前さんもたまたまこちらに参ったみたいだけど...新ちゃんにそんな言葉をかけてくれてただなんて...、


「カッコつけんのはもうやめて下さい。辛い事があるなら、ちゃんと僕らに言ってください。ここにいる皆...姉上の泣き顔、それだけを理由にここに集まってくれたんだから。」


「...係ないわよ...。」


「姉上のためになんて...死んでも言いませんよ、あの人達は。でもね、姉上が泣けば同じく哀しく思う人がいる事...考えておいてください。」


「...関係ないわよ。来てくれって頼んだ覚えはないって言ってるの。...もう私の事は放っておいて。」


嬉しい...皆、私なんかのために、ここまで来てくれただなんて。それと同時にごめんなさい...どうしても私はここに残らなきゃいけない。九ちゃんの潰れた左目が、私をこの家に...九ちゃんの傍に固定していくの。

バシンッと新ちゃんが私の頬を叩いてきた...分かる、私がとんでもないことを言っているって。でも、だからといって私も退く訳にはいかない。その思いをこめて新ちゃんを殴り返すと...メガネごと畳の上に転がってしまった。...もう一度、私の思いを伝えようと拳を握りしめ、新ちゃんと向き合う。


「私だって...私だってみんなと...ずっと一緒に居たいわよ!!でも...でもダメなの!私が...私が九ちゃんの左目になってあげないと!!」


なみあふれる感情が、心から口から出てきてしまった。それに新ちゃんが"どういうこと"なのか...って、涙ぐむ私に近寄ってきたところで、"お妙ちゃん"と私を呼ぶ九ちゃんの声。そして、九ちゃんに引きずられる土方さん。

九ちゃんは新ちゃんに話を始めた。幼い頃、九ちゃんが左目を失った時に私が傍にいたこと..."責任を感じることはない"って言っているけど、そうとはいられない。だって、あれは私を助けるために負った傷なのだから。


「新八君...君のところは残り何人だ?...いや、何人残っていようと大将である君を倒せば全て終わりか。...それにすまないが、客人を待たせているようでね。とっとと終わらせたいんだ。」


「...客人って俺の上司のことかァ?...アイツならぷらぷら遊んでたぜ?...それにアンタもそうだろ?...オイ、メガネ。俺たちはとんだ茶番に付き合わされていたようだ。」


...そう、土方さんは分かってしまったのね。その剣を交わしたことによって、九ちゃんが..."九兵衛"という名前とは裏腹の性別だということに。


「女だ。」


10話 舞台の裏側


(女?...九兵衛さんが女?...姉上と結婚するとか言ってて、...まさかそんな、姉上を男と勘違いしているのか!?確かに姉上は胸が...、)
(違うだろ!!...九ちゃんは身体は女の子。...でも、心は男の子なの。女の人しか愛せないのよ。)
("男よりも、女よりも、お妙ちゃんよりも強くなって...きっと君を護るよ")
("私...あなたの左目になる"...そう、約束したの。)






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