一万打記念 | ナノ







「はい、じゃあ今日はここまで。今日やった所は試験に出すからしっかり復習しなきゃダメよ。」


そう言えば一斉に巻き起こるブーイングに思わず苦笑いした。
自分も彼らと同じ年頃に同じような思いをしたものだ。


「じゃ、みんな頑張ってね。」


そう言って教室を後にした。

私の勤める学校は男子高だった。
教師一年目にして男子高はちょっとハードルが高いような気がしたのだが、周りの先生方やなんと生徒の皆が優しくフォローしてくれたお陰で何とかやっていけている。
皆の優しさはもちろん彼の優しさにも助けれた部分も多いにあった。
恋人としても社会人としても彼は私を正しく導いてくれる。だからこそ私は彼を恋人としても社会人としても尊敬しているし信頼してる。


教室を出て階段を降りていると後ろから私を呼ぶ声がした。


「先生!ミラ先生!」

「…?どうしたの?アルミン君?」

「あの、先生に勉強を教えて欲しくて…」

「まぁ、いいわね!…私でいいの?私、数学しか教えられないよ?」


そう、私はなんと数学以外は赤点ギリギリな成績だった。よくそれで教師になれたなと今でも不思議に思うが、数学教師になれた今では苦い思い出だ。


「大丈夫です!皆数学を勉強したいみたいなんで。」

「そ、ならよかった。なら放課後直ぐに行くわね。自習室開けておくから自習室1に来てね。」

「はいっ!待ってますね!」


ああ、なんていい笑顔だろうか。アルミンは私が受け持つクラスの中でも比較的上位にいる子だ。皆と言っていたし、少しプリントも用意していこうかと鼻歌交じりに職員室に入るとピクシス教頭と出くわした。


「あ、教頭先生…。」

「おお、ミラか。」

「久しぶりですね。」

「さっき出張から帰ったばかりだよ。」

「まぁ、おかえりなさい。教頭先生?」


態とらしくそう言えばピクシス教頭先生はガシガシと頭を掻いて苦笑いを浮かべた。


「いやはや、どうも孫がいると敵わんなぁ。」


そう、なんと私はピクシス教頭先生の孫娘。昔から優しいお祖父ちゃんがまさか自分の上司になるなんて誰が予想出来ようか。


「これからは何か予定があるのか?」

「ええ、担当のクラスの子が勉強見て欲しいみたいで。」

「…ふむ。」

「だから自習室借りますね。」

そう言って祖父の脇を通り過ぎようとしたら、肩を掴まれ立ち止まった。


「あの子らも若いとはいえ男だ。…それを忘れてはならんぞ。特にミラは若い女教師だからな。」

「?わかったわ。」


祖父のその言葉をしっかりと聞いていればよかったと後悔したのはすぐだった。











「はぁ、まさかあんな事になるなんて…。」


放課後の勉強会にはアルミン君を初めとするエレン君ジャン君コニー君ライナー君ベルトルト君達がズラリと並んでいた。
さぁ、何が分からないの?と聞いたら先生の母校って何処ですか?から始まり誕生日や血液型まで様々な質問をされた。それだけならまだいい。段々質問はエスカレートして行き、初恋の人からファーストキスの相手から初体験はいつかなんて聞かれた暁には目が回りそうになった。


「先生ってやっぱり初心で可愛いですね。」


アルミン君の口からそんな台詞が飛び出た瞬間、もう思考はショートした。
しかも今の彼氏とはどうとか。夜はやっぱり激しいのかとか避妊はしてるのかとかもうセクハラもいい所だ。
実際私は彼としか経験が無いからそんなのは知らないし、比べることなんて出来やしない。しどろもどろになった私にトドメを刺したのはなんとエレン君だった。


「先生の事、知りたいんです。」


なんて子だ。私より身長が高いのにあえて腰を引き斜め45度に瞳を潤ませて上目遣い。その捨てられた仔犬のような眼差しにクラリとした。

「だから教えてください。中出しと口ならどっちが好きですか?」


どっちも知らないと言えなかった。
いや、彼はちゃんとスキンはするタイプだし、まだ私達には子供は早いだろうと言っている。
しかし、エレン君は私の左手薬指に光る指輪をそっとなぞって言ったのだ。


「あぁ、顔でもいいですよ。」


もう死にたくなった。
なにが悲しくて教え子にセクハラをされるのか。半泣きになって「もうやめてください」と言ったらさすがにやめてくれたけれど。


「もう、なんで今の子はあんなませてるのよ。」


帰っても顔の火照りは消えず、むしろ悪化している。
思わずペタリとキッチンに座り込んだ。

「明日からなんて顔すれば…」

力無くそう呟くとガチャリと鍵の開く音。


「帰ったぞ、ミラ…?」

そう言って入って来たのは只今同棲中の彼、リヴァイだった。








あの後何であんな所に座り込んでいたのか、そして何であんなにも火照ったかおをしていたのか問い詰められ、ミラは何故か正座しながら優雅にソファで足を組むリヴァイを見上げていた。


「ったく、ガキ共が…。」

「すみません…。」

「そんな怪しい勉強会は今後断れ。そんな顔してたらいつか取り返しが効かん。」

「……え?そんな酷い顔してます?」


そう言ってペタペタと自分の顔をしきりに触る恋人にリヴァイは溜め息しか出なかった。
ミラはその可愛らしい容姿の所為で何人もの男を虜にしている。しかし、今まではリヴァイがしっかりと虫除けをしていた。それこそ使える手段を全て使って。しかし、これからはそうは行かない。しかも目の前の恋人は未だに目を潤ませて頬を染めている。


「(これじゃあ、思春期のガキのいいオカズだな。)」


そう言ってその顔を辞められるならこんな苦労はしないだろう。全て無自覚なのが質が悪い。
しかし、とリヴァイは思った。


「ミラ、ここに座れ。」

「……え?」


そう言って叩いたのはリヴァイの膝。
ミラが戸惑うのも無理は無かった。


「…早くしろ。」


どうやらこれは命令らしい。おずおずとミラはリヴァイの膝に腰を降ろそうとすると「向きが違う」と向き合うように座らされた。


「っ、リヴァイ、さん?」


「ほう、悪くない。」


涙目に自分を見上げる恋人の可愛さたるや。
スルリとミラの首に指を這わせればビクリと震える肩。
ゆっくりと指を首から鎖骨へ、頬をなぞって唇へと這わせる。親指でそのふっくらとした唇をなぞればミラのその目の奥に微かに見える情欲の色。


「っ、……ぁ、…」


まだ唇を撫でただけだと言うのに。その素直でいじらしい反応に思わず加虐心に火が付いた。

頬を両手で挟み、ゆっくりと唇を重ねる。
初めはただ唇を重ねるだけ。
「…、…ん、ぅ……」

「…っは、舌、出せ。」


そう言えばおずおずと素直に舌を出す恋人に何とも言えない感情が芽生える。


「小せえ舌だな。」


そう言ってその舌を絡め取り、深く唇を重ねた。


「ん、……んぁ、……、」


微かに零れる互いの唾液が。ミラの蕩けきった顔が。全てがいやらしい。

「……ぁ、リヴァイ、さんっ、」

「…っは、嫌か?」


スルリとしのばせた右手が彼女の下着のホックをパチリと外せば戸惑う彼女に意地悪くそう問いかけた。

「…っ、やめ、ないでっ、」

嫌がる筈が無いと分かっていて聞いた自分は悪い大人なのだろうとリヴァイは笑った。

態とらしくゆっくりミラのボタンを外していけば、待ち切れないのかミラもリヴァイのボタンに手をかけた。


「っは、随分積極的じゃねえか。」

「…リヴァイさんの意地悪。」

「何とでも言え。」


そう言って露わになったミラの肌に思わず喉が鳴った。
相変わらずの白い肌にその可愛らしい容姿とは不釣り合いの豊満なその胸は最早リヴァイ好みの身体へと教育されていた。
リヴァイは態とミラのシャツを脱がさず、器用に下着だけを剥ぎ取るとパサリと足元へと下着を落とし、その瑞々しい白い胸をゆっくりと掬い上げて今か今かと待ちわびている突起へと親指を這わせ、ミラの首へと吸い付く。

「ぁ、…そんな、…とこ、…」

「ああ?なんだ?」

ゆるゆると腰を動かし、無意識だろう。胸も動かしてより快感を得ようとしている。


「や、…指、だけじゃ、」

「ああ?言われなきゃわからねえよ。」

「っ、!」


そう言えば真っ赤な顔をして黙り込むミラ。
あえて突起を避けてその周りをねっとりと舐めれば艶やかな声でミラは啼いた。


「ぁ、…ぁぁ、……、」

「して欲しいなら、言わなきゃなぁ。この可愛い口で、いやらしく。」

「…っ、!」

「別にいらねえなら話は別だがな。」

「ゃ、……、」

「なら、しっかりと言え。おねだりの仕方は教えただろうが。」


そう言えば一気に羞恥に頬を染めるミラにひっそりと笑った。

「ゆび、……だけ、じゃ、…」

「あ?……、」


ふるふると快感に震えながらもリヴァイのシャツを握り締める手は力を込めすぎたせいか白くなっている。
真っ赤な顔でこちらを見るミラが堪らなく可愛くて、リヴァイは思わずその白い首筋に噛み付いた。


「ひ、……ぅ、…ふぁ、…」


吸い付くのではなく噛み付いた。唇を離せば真っ赤に歯型が付いていた。
きっとこれ今日中に消えないだろう。薄っすらだが、血も滲んでいる。


「早くしろ。俺はそんなに気が長い方じゃないのは知ってんだろう。」

「……っ、」



そう言えば不安気に揺れる目を閉じてミラはゆっくりとリヴァイの首に腕を回した。
そっとリヴァイの耳元に唇を寄せる。


「もっと、いっぱい、リヴァイさんが欲しいです。」

「っ、!」

「ダメ…ですか?」


今にも涙が零れそうなそんな目で見つめられ、今更ここでアッサリと終わらせる気などリヴァイからは消え失せた。



「きゃあっ!」


勢いよくミラを抱き上げ、ソファから立ち上がるとズカズカと寝室へと向かう。


「煽ったのはミラだ。責任はしっかりと取れよ。」

「えっ、わ、私?」

「そうだな、まぁガキ共には今日した事でも話してやれ。」

「む、無理ですよ!教育者としていけません!」

「なら、」

そう言ってリヴァイは寝室へと入ると皺一つないシーツにミラをドサリと下ろした。


「せめてガキ共の前ではんな顔だけはするな。」


「……え?」



そう言って噛み付くようにその唇を奪えばミラはくぐもった声を上げた。


あぁ、きっと明日は立ちあがれないだろうなとミラはそう思いながらもそっとリヴァイの背に腕を回した。

抵抗する必要なんてない。これから訪れるであろう甘い時間にそっとミラは身を委ねた。



















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