午後三時の第三会議室はこのフロアの人間にはある意味で有名なスポットだ。
このフロアにはそもそも会議室が三つ存在する。その中でよく使われるのが第一会議室と第二会議室だ。それに反して第三会議室はなかなか使われる事は無い。それは幾つか理由があるのだが、大きく挙げるとブラインドが壊れているのと、半ば物置と化しているからだろう。だからお客様を通すなんてあり得ないし、そこで会議なんて出来るわけが無いのだ。
しかしこの会議室はあるスポットで有名なのだ。
「や、……そんな、わたし…」
「今更だろうが、ミラ。ほら早くしろ」
「でも、やっぱりこんな…っ!」
そう言ってぐっと制服のスカートを引っ張って抵抗するも目の前の男にはあまり効果は無い。さあ早くしろと男はじりじりと迫って行く。
「ちゃんと俺の指示通りにノーパンノーブラか見てやる」
「っ!大体仕事場にノーパンノーブラなんて非常識です!」
「生憎俺の常識はなかなか理解されなくてな」
「当たり前です!しかもノーパンでストッキングとかあり得ない!」
「いいから早くその中見せろ。もし履いてたらどうなるか分かってんだよなぁ、ミラ」
「う……うぅ、…」
どうしてこうなったか。理由はもう覚えていないが、何やら自分がリヴァイを不安というか不快な思いをさせてしまったらしく、その謝罪だというのだが、果たしてこれは謝罪になるのだろうか。
上司であるリヴァイと付き合って2年。付き合うようになってこの人気の無い第三会議室は二人の密会場所として使ってきた。思えば告白したのも触れ合ったのも初めてキスをしたのもここだった。
しかしここがいくら人気が無いからと言ってもこれは無いだろう。
「けど、…けどっ!」
「…ッチ。焦ってえな」
「え?えぇ?!」
そう言ってぬっと伸びて来る手は迷うこと無くミラの胸をぐわしと掴んだ。
勢いは良いがあまり力を入れていないのはリヴァイなりの優しさなのかもしれない。しかし、ふにゃりと感じるその感触といつもなら邪魔に思うそれが無い感覚にリヴァイはにやりと妖しく笑う。
「ほう、だからカーディガンか」
「あ、当たり前です!ブラウスだけなんてあり得ません!」
「そうだよなぁ。ブラウスだけならそのピンク色の乳首が透けちまうからな。いい心がけだミラ」
「そ、そういうこと…堂々と…っ、」
「ん?なんだもう乳首おっ立てんのか?随分エロい女になったな、ミラ。つい最近までは処女だったのにもうここまで…」
「や、やめてください!」
「なら、しっかりパンツも…」
「あっ!」
リヴァイに意識が向いたその一瞬をリヴァイは見逃さない。ミラの抑える手をやんわりと外し、その無防備なスカートをがばりと捲る。
「……本当にノーパンで来たのか」
「や…やれって言ったのはリヴァイさんじゃないですか!恥ずかしかったんですよ?!電車とか階段とか!」
「しかもノーパンでストッキングか…。いいな」
「よくありません!もう!もしこんなところ誰かに見られたら…」
「その心配は無いから安心しろ」
「え?……ひあっ!」
どうしてという問いは言葉にならずリヴァイの指先がミラのそこに爪を立てられた事により、悲鳴となって口を出た。
ビリッという嫌な音と共にビリビリに破かれるストッキングにミラはもう開いた口が塞がらなかった。
「な、なんで…破って……」
「ああ?破かねえと最後まで出来ねえだろう が」
「最後まで?!ここで?!」
「うるせえがなるな。そのための仕置きだろうが」
「こ、ここで…するの?本当に?」
「安心しろコンドームはある」
不安気にリヴァイを見つめるもリヴァイが「新作のヤツだ。結構値が張るやつだからいいやつかもな」と言ってミラに見せたのは新品未開封のコンドームの箱だった。
パッケージはシンプルなのにでかでかと書かれた超極薄の文字にミラの顔は段々と青ざめていく。
「せ、せめて…家で…」
「駄目だ」
リヴァイと身体を重ねるのが嫌なんじゃ無い。場所が場所なだけにミラはそそくさと準備をするリヴァイに何とか妥協してくれと言うがバッサリとそれを断つ。
「だって、こんな…」
「だってもでももねえ。散々忠告してやったのにそれを無視したのは誰だ?言ったよなぁ、ミラ。もしものためだって」
「ひ、ぅ……っ、」
「大人しく中で待ってたらこんな事にはならなかったのにな。安心しろ幾ら俺でも恋人に傷を作る趣味はねぇ。だが、…まぁ立てなくはなるだろうな」
「……っ、」
「安心しろ。ちゃんとノーパンノーブラで抱えて一緒に早退してやる」
だから思う存分喘いでいいんだぞ。そう言って笑うリヴァイは何よりも怖くて何よりもゾッとした。しかし悲しいかな、これが惚れた弱みなのか拒否する気持ちはもう残されておらず、ぐちゃぐちゃとミラの中を掻き回すその指先に更なる快感を求めてミラの腰はゆるゆるとイイトコロへと導こうとする。
そんなミラを見てしてやったりと笑いながら慣れた動作でリヴァイはテキパキとコンドームを装着する。
午後三時のこの会議室でひっそりと逢引するはずが、もはやこの会社ではひっそりではない。毎回悩ましい声が漏れるたびに男性社員は言うのだ。自分が可愛いなら午後三時の第三会議室には絶対近付くな、と。