ふたりの続き
「……ん、……」


隣から感じる確かな熱にどうしてだろうと思いながらゆっくりと目を開いた。
きっと彼はいない。またいつものように居なくて、いつものようにシャワーを浴びてハンジを間に挟んで食事をするのだろう。そう思いゆるゆると目を開けば目の前の光景にミラは空いた口が塞がらなかった。



「へい……ちょう?」


今だに目を閉じて穏やかに眠るはよく知るリヴァイその人。眉間に寄せられた皺は今はなく、寝息は穏やかだ。


「……え?夢?」


そう言って思わず右手で頬を抓ろうとしたら右手が動かずどうしてかと視線を右にやれば、ガッチリとリヴァイに抱きすくめられ身動き一つ出来やしないではないか。



「………そうか。これは夢。そう!こんな都合が良いっていうか私の願望丸出しのこの状況は現実な訳が……」

「うるせえ」

「す、すいませんんん!」

「朝くらい静かに起きれねえのか…」



そう言ってうっすらと目を開くリヴァイにミラはビクリと肩を震わせるが、それは恐怖からではない。しかし目の前の男はそうと取らなかったのか、罰の悪そうな顔で「怒っていない」と言う。


「…珍しい、ですね。朝までいるなんて」

「あ?先に言ったのはミラだろうが」

「………私?」



疑問に思っていたそれを投げかけても帰ってきた答えにミラは首を傾げた。はて、自分は何か言ったのだろうか。


「夜中もやれ寒いだの人肌恋しいだの素肌で抱き合わないなんて恋人じゃないだの……」

「わあああああ!わ、私そんなこと、寝ぼけて…っ!」

「…あぁ、起きる時は窒息するくらいのキスで起きたいとも言っていたな。やはり恋人としては要望は全て叶えないとな」



そう言ってゆっくりとシーツを取り去り、ミラの肩にグッと手をおくとゆっくりとリヴァイは唇を重ねた。寝起きのせいか、少しカサついていたがそんなのは気にせず焦らすようにミラの唇を舐め、薄く開いたそこににゅるりと舌を差し込めばミラは抵抗することなくすんなりとリヴァイを受け入れる。


「……ん、…ん、…」

「……っは、…腕、回せ…」

「ぁ、……ふ、…」



ゆるゆると背中に腕を回して来たのを確認すると、リヴァイはミラの華奢な背中に腕を回し、柔らかな頬を撫で身体をより密着させた。
何も纏わず、素肌で抱き合うことによって感じるミラの柔らかさと確かな熱にキスだけで終わらせるつもりが、リヴァイは膝をミラの割れ目へと当てがう。



「ひ、…ぁ、……」

「なんだ…コレだけで濡れたのか…」

「うそ、……そんな、私…」

「普段はそんなに濡れねぇってのに…。ほら、もう音が出やがる」

「や、……あさ、から…なんて…」

「先に仕掛けて来たのはミラの方じゃねえか。なら、文句はねえよな」

「え…え?……ひぅっ!」



そう言っていつの間にか膝ではなく指がぐちぐちと確実にミラを追いたてて行く。
身に覚えの無いセリフと確実に快感へと追いやるその指にミラは呆気なく果ててしまう。



「こっちが必死こいて我慢してやったのにそれをお前が嫌だと言いやがる。なら、我慢も何もいらねえな、ミラよ」



は、は、と息も絶え絶えにリヴァイを見るもリヴァイの台詞にミラは首を傾げた。


「……え?…」

「人を煽るだけ煽って間違いでした。なんて言う悪い子じゃねえよな、ミラ」


リヴァイが言うことの半分も理解出来ないが、こうして朝を共に迎えてこうして自分に触れてくれるぬくもりは決して夢では無いのだと思うとじわりじわりとミラの目尻に涙が浮かぶ。


「……来てください、兵長。兵長をたくさん、たくさん感じたいです。兵長でいっぱいに、なりたいです」

「……っ、…」

「わたし、幸せです。ね、兵長…はやく……っ、」


言葉は最後まで紡ぐ事はなく、声にならない声にかき消される。
ミラは今日初めてその逞しい背中に爪を思い切り立てた。ほんの少し湿ったシーツすらも、今は愛おしい。







続きを、との事で。この日から兵長の性欲は解禁です。




おまけ。



「……………」

「いやあ、若い若い。若さは素晴らしいね、リヴァイ」

「……………」

「確かに少しミラを元気付けはしたが、まさかリヴァイが、ね。やはり年若く可愛らしい恋人を持つとこうも変わるのかな」

「………エルヴィンてめえ、何が言いたい…」

「いやいや、素晴らしい事だと思うよ私は。誰も愛し合う二人を邪魔しないし、邪魔するつもりもないが…」

「…………」

「ミラ程有能な補佐役にいきなり休まれると私の仕事が、ね」

「…………」

「今日はいつ帰れるか…」

「………どれだ」

「なんだ、リヴァイ珍しいな。いやあ、まさかリヴァイが親切心でそう言ってくれるなんて助かるよ」



態とらしい、嫌味な笑顔でそう言うエルヴィンに盛大な舌打ち共に受け取った書類の束。
部屋で伏せるミラは全く悪くはない。あれから自分も驚きの三回戦にミラの足腰は立たなくなり、声もすっかり枯れてしまった。


「ミラが自力で休みの報告も出来ない程なんて。いやはやリヴァイも若いな」


そう笑う嫌味な友人に手にした書類の束を叩きつけてやりたいのをグッと堪え、リヴァイは何も言うことなく部屋を出ようとする。
しかしこの悪友はそれすらも許してくれない。


「ミラにお大事にと伝えといてくれよ、リヴァイ」


自分もまだまだだったとリヴァイは小さく溜め息をついて軽く右手を上げて部屋を出た。
これからこんなやり取りが増えるのかと思うと先が思いやられると思いながら。












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