宿題と彼女と不運な彼/学パロ
「先輩、ここ分からないです。」

「どこだ?」

「ここ、ここですー。この二次方程式の問題が分からないですー。」

「仕方ないな。全く、ミラは俺が居なきゃ駄目だな。」


可愛い奴め。そう言いながらもリヴァイは丁寧に教え始めた。教えられるミラは真剣な顔で問題と向き合っている。はたから見ればきっと微笑ましい先輩と後輩である。まぁ、付き合っていると言われたら分かるがそれでも二人は付き合う前から既に付き合っているカップルのような事をして来たのだから何とも言い難い。
しかし、目の前で繰り広げられる光景は決して良くはない。
あくまでここは図書室であり、公共の場だ。なのにも関わらず、二人は隠す素振りすら見せず堂々とミラをリヴァイは自身の膝の上に座らせていたのだ。ちなみに二人が座っている席は窓からも入り口からも丸見えだ。

「ほわぁ、先輩流石ですー!わかりやすいですー!」

「全く、ミラは可愛いな。いいか?何でも最初は俺に聞け。何でも、だ。」

「はいっ!先輩に必ず聞きます!」


よしよしと頭を撫でて可愛い可愛いと言えばミラはへにゃりと笑って喜んだ。ゴロゴロと猫でもないのに喉を鳴らしているように見えるのはなぜだろうか。
リヴァイはミラと付き合ってからは事あるごとにミラを可愛い可愛いと褒めちぎる。
女の子なら好きな人から可愛いと言われれば確かに嬉しい。だがそれは時々聞くからであって毎日聞くものではないだろう。それは言う側も言われる側も恥ずかしい。
だがこの二人は違った。リヴァイは毎日飽きる事なく可愛いと言い続け対するミラも毎日嬉しそうにその言葉を受け取るのだ。
そんな二人を見て目の前に座るエレンはすっかり立つタイミングを失っていた。
確かに寝ていた自分も悪いが起きて目の前でイチャコラしてる二人を邪魔する事は出来なかった。

ミカサとアルミンと三人で宿題をしていたのに、二人が担任に呼ばれたのでその間に一眠りと思って寝たのが運の尽き。
何やら声がするなと目を開いたらそこは地獄の入り口だった。早く二人とも来てくれ!と念じるが来る気配は無くむしろ人が散り散りになっている。


「ね、ね、先輩!次のテストで順位上がったらご褒美欲しいです!」

「褒美か…いいな。だが、ミラよ俺には何も無しか?」

「うーん、うーん……何が欲しいですか?」

「…ミラが欲しいな。」

「もう私は先輩のだからちがうのがいいですー!」

「分かった。ならばミラの初めてをもらうか。」

「んー?」

「なに、俺に任せておけば大丈夫だ。」

「はーい!」


おいおい、それはアンタへの褒美だろうが。頑張るのはミラであるし、なによりその意味も分からなくホイホイ喜ぶミラもミラだ。


「先輩!先輩!そろそろ帰りませんか?」

「そうだな。……ミラ、この本を返却して来てくれ。」

「はあい。お使いですー。」


なんと呑気なお使いなんだ。いやしかしこれで解放される。起きてからずっと俯せているせいで腰が痛む。


「おい、起きてんだろう、エレン。」


「……(ビックウ!)」


「そうか、生憎俺は嘘つく人間は嫌いなんでな。」


そう言ってリヴァイはガンッとエレンの座る椅子を蹴り上げた。もちろん机の下から蹴った。


「うわぁっ!」

ガタン!と派手な音を立ててエレンは後ろに転がってしまった。


「いてて…」

「俺のミラは可愛かったか?エレンよ。」

「い、いや、そんな事は…」

「ほう、ミラが可愛くないと言うのか。…立て、エレン。抵抗くらいさせてやろう」

「い、いえ!めっちゃ可愛いです!」

「なおのこといけないな。やっぱり立て、エレン。」


この人めんどくせえええ!とエレンは心の中で叫んだ。どっちにしたってリヴァイにやられるのだ。目の前のリヴァイは指をボキボキ鳴らしてこちらを見ている。


「大人しく歯を食いしばるか抵抗するかどっ……


「せんぱーい!返しました!」


もう終わりだ。グッバイ!俺の巨人駆逐作戦!と思っていると、なんと後ろから救世主が来た。


「…ミラ、偉いぞ。」


よしよしとそのボキボキ鳴らしていた指でゆっくりと撫でた。
ホッと胸を撫で下ろしたエレンだが、いそいそと帰り支度をするミラを背にリヴァイはエレンを見てスッと目を細めた。


「次は無い。……そのカラのアタマに叩き込んどけ。」


ミラに聞こえないようにドスを聞かせてリヴァイはそう言うとミラに優しく笑いかけて手を繋いで仲良く帰って行った。




「というか俺は被害者だ!!」



そう、ただ寝てただけだ。
戻ってきたミカサとアルミンが不思議そうな顔をするも怒りが収まらなくリヴァイの座っていた椅子を蹴ったらとても痛くて泣きたくなったのは別の話。
















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