真っ白ウサギ/学パロ
ジワジワと照りつける太陽に、耳に響く蝉の声。

夏真っ盛り。刺さるような日差しの中この進撃高校では今まさに体育祭が行われていた。



「せんぱーい!頑張ってくださーい!」


可愛らしいその声の先に誰があの顔面凶器の人類最強がいると予想出来ようか。
頑張って体いっぱい手を振るミラはそれはそれは可愛らしいく、同じ学年のクリスタと競う程の人気があった。
可愛らしい外見に不釣合いなその豊満な胸は男子を惑わせた。しかも本人の性格がユミルのように男勝りな訳ではなく、まさかの天然。付き合って下さい!と言った男子にどこへ?と返すのは当たり前。一回だけ遊ばない?と言った上級生によくわからないからリヴァイ先輩に聞いてきます。と言って本当にリヴァイに聞いたのも懐かしい。

そう、ミラはあの人類最強の最大のお気に入りであり、まさに人類最強の好きな女の子。
なんでもあのリヴァイが一目惚れしたなんて噂が流れた時は嘘だと周りが言っていたが、あのリヴァイの後ろにちょこちょこ付いては「先輩、先輩、あのね、」と可愛らしく話すミラと楽し気なリヴァイが多数目撃され噂は真実となった。
しかし、厄介なのはここから。リヴァイが周りに睨みを効かせるのは当たり前。しかも天然なミラを守るために「わからない事を言われたらまず先に俺に言え。」とミラに教え込み、周りの男子を躾けた後に彼女の友人達に「間違った知識埋め込んだら承知しねえぞ。ゴラァ。」の勢いで睨んだせいか、元々男女の付き合いに疎いのに拍車をかけてしまった。
同学年の女子に「子供はどうしたら出来るの?」と聞くミラに「リヴァイ先輩に聞きなさい」と口を揃えて言われるのだ。
もちろんミラはリヴァイにそれを聞いたし、聞かれたリヴァイも呆気に取られた。

よく最近ではハンジやエルヴィンに聞かれてしまう。本当にあの子を落とす気かと。
天然を絵に描いたようなある意味真っ白な彼女は確かに可愛らしく、純粋だ。だが、無知なのだ。全てにおいて。
学校の勉強は出来てなぜ子供の作り方然り男女の付き合いがわからないのか、それがわからない。
だが、リヴァイは毎回そう聞いてくる馬鹿共にこう言った。


「だからこそ最強の自分専用に育てるんだろうが。」


なんと恐ろしい男だろうか。
穢れなき真っ新な状態だからこそいいのだと。誰かの中古など以ての外。
確かに彼女に絆されているのは否定しない。あんなに可愛らしいのだ。可愛いお願いの一つや三つ聞いてやる。
そう、散々出席するものかあんなのは暇な豚共の遊びだと体育祭の実行委員をハンジに押し付けたのに、ミラに


「体育祭リヴァイ先輩を応援しますね!」


そんな可愛らしい台詞を言われたら出るしかないじゃないか。そう言ったらハンジはあんぐりと口を開けた。
何度自分が出ろ出ろと言っても、エルヴィンに説得されても首を縦に振らなかった男がたかだか小娘にそう言われただけであっさりと体育祭に出るのだ。これが驚かずにいられるだろうか。

そして、現在はぶっちぎりでゴールしたリヴァイに可愛らしくボンボンを持ったまま手を振るミラに手を振った。
何でもミラはチアガールに入ったらしく、今日は何とも可愛らしいチアガールの衣装に身を包んでいた。
あの綺麗な鎖骨も括れた腰もあの溢れんばかりの胸も。全ては自分の物だ。
今日、初めてミラを見たときこの世にはこんな可愛らしいチアガールが居たのだと初めて知った。
ただし、自分だけが見るならいざ知らずここには阿呆な男共が山のようにいる。そんな中でこんな刺激的で可愛らしい姿を晒すわけにいかず、リヴァイは急いで自分の学ランをミラの肩にかけてやったのだが、リヴァイの学ランですらぶかぶかなその姿に別な意味で破壊力があった。


「あれはあれでいいな。」

そう言ったリヴァイにミラはただ首を傾げるだけだった。








競技も大詰め。最後の競技は借り物競争。
もちろん活躍する姿が見たいとミラが言ったのだ。当然リヴァイだって出る。


よーい、スタート!の掛け声で一斉に駆け出す生徒達。
もちろんぶっちぎりで紙に最初に手を伸ばしたのはリヴァイ。
バッと紙をひろげて見てみればリヴァイは絶句した。


「ッチ!…あのクソメガネ!」

実行委員を押し付けた事を根に持っているのだろうか。しかし、やらなければミラとの約束も守れない。
リヴァイは恥を偲んで来た道を引き返した。


目的の人物が見えるとふと周りに気付いて思わずリヴァイは疑問に思った。…何故自分と同じく彼女を目指して走っている奴らがいるのだろうか。
まさか、と思いリヴァイは速度を上げた。


「ミラっ!来い!」

「は、はい!」


座って居たミラの手を引き、立たせるといそいでごまで走った。
しかし、体力の無いミラはすぐにバテてしまいぜえぜえと息を荒げてしまっている。
そんなミラを見兼ねて、リヴァイはミラを横抱きにして走り出した。


「…えぇっ?!先輩!」

「大人しく掴まってろ。」

「は、はい…。」

その腕の逞しさに思わず頬を染めてリヴァイに身を委ねるミラ。

もちろんぶっちぎりでゴールしたリヴァイにニヤニヤ笑うハンジがゴールした二人に近づいた。


「さてさて、借り物は正しく持って来れたかなー?」

「…ッチ!」

「…?先輩、紙にはなんて書かれたんですか?」


ミラにリヴァイは罰の悪い顔をした。
そんなリヴァイからハンジは紙を奪い取り中身を広げた。


「ふーん。ふふ、やっぱりね!」

「…てめえ、あの紙全部中身同じだろ。」
「えー?私わからないなぁ?」

「ったく。」

「えー、教えて下さいよぉ!」

「ミラ、それは後で……」

「はい、ミラ!」

「わぁい!」

「てめえ、クソメガネ!」

「へっへーんだ!」

「………っ!!」

ハンジを構っている間に中身を見たミラは顔を真っ赤にしてリヴァイを見た。
流石に鈍感な彼女でも分かったらしい。


「あの、先輩…、私…」

「…ミラ、」


顔を赤くしてモジモジとこちらを見ている。
そっと彼女の手を握れば大袈裟に反応する身体。


「ミラ、俺は…」

「は、はい…」

「俺は、ミラが、好きだ。…一人の女としてミラを見てる。」

そう言えばさらに顔を赤くしたミラはぽそぽそと言った。


「私も、先輩が…好きです。」

そう言ったミラを抱き締め、リヴァイニヤリと笑った。
ようやく、落ちたと。

「もしもーし?お二人さん?ここまだゴール地点だよ?」

「私、先輩にずっと憧れていたんです。」

「何を言ってんだ。俺のが先にミラに惚れてたぞ。」

「いいえ。私です!」

「いいや、俺だ。」

「え?いや、二人とも?」


公然の場だと言うのに堂々といちゃつき、どっちが先に惚れたか言い合う二人。
ハンジはゴールしたくても出来ない生徒達に苦笑いを浮かべるしか無かった。


「ま、いっか!」


じれったい二人のためにしたのだからこのくらいいいだろう。
ヒラリとミラの手から落ちた紙をチラリと見てハンジは笑った。

紙にはただ一言。「自分の好きな人」とだけ書かれていた。

二人が現状を忘れて公開キスシーンをおっぴろげるまであと五分。






















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