私は一人、テーブルの上に置かれた雑誌を見つめて正座していた。
奴を開くにはまだ、勇気が足りない。
かれこれ一時間、雑誌を睨み付け大きく息を吸い、雑誌を勢いよく開いた。
そもそもこの雑誌は私の物ではない。親友であるペトラから借りた雑誌だ。
何時もの帰り道。何時もなら彼と帰るのだが、彼の仕事が立て込んでいるらしく、先に帰るように言われ久しぶりにペトラと帰る事にしたのだ。そもそも彼と同じ家に住んでいるのだから待っていてもいい気はしたのだけど。
けれど、女二人で帰る楽しみもある。
それはもっぱら私と彼の話だったけれど。
「え?じゃあ、夜はミラから誘ったりしないの?」
「す、するわけないじゃない!…まだ、するのも恥ずかしいよ…。」
「えー!それはリヴァイ課長可哀想だって!」
「だって私リヴァイさんが初めてだもん!…そんなのわからないよ…。」
「んもー、昔から奥手だから心配してたけどさぁ。仕方ないなぁ。」
これ、貸したげる。と渡されたのは今流行りのファッション誌。
「ファッション誌?」
「もちファッションもだけど、ここ。」
パラパラとページを捲り、ペトラが見せた記事に私は目を見開いた。
「な、"彼を誘惑する七つの技"?!」
「ついでにオススメコーデもあるよ。ほら、これとか似合うんじゃない?」
「むむむむ、無理だよ!こんな、スカート短いし!胸だって!」
「魅せるとこは見せなきゃ!あんた胸あるんだから隠さなくてもいいでしょうに。あと、マグロだと…飽きられるよ?」
「…え?」
「マグロが許されるのは最初だけ。やっぱり女からもいかなきゃ飽きられちゃうみたいだよ?」
「そ、そんな…。」
「だからこれで勉強しなって!ね?」
「う、うん…っ!」
「(なんて単純なのかしら。)」
ペトラは真剣な眼差しで雑誌を見つめるミラに少し罪悪感を覚えた。言えない。まさかリヴァイ課長からの差し金だなんて。
「ミラは単純だから少し煽るくらいで大丈夫だ。」
本当にそうだった。しかも理由も言えない。飽きたのではなく、ミラが困りながらも頑張る姿を見たいからだなんて。
ペトラは苦笑いを浮かべながら「まぁ、頑張って。」と言った。
「うーんと、まずは第一ね。第一は"自分からキスして誘いましょう"?!無理無理!だ、だってリヴァイさんとキス、すると…」
こっちが先に腰砕けになるし…。
「だ、第一はおいて置いて第二ね!第二は"彼の服のボタンを外しちゃいましょう☆"…無理だよ!無理!無理!だってリヴァイさんって細身だけど実はムキムキなんだよ?!…恥ずかしいよ。ってかこれって…。」
第三は自分から服を脱ぎましょう。第四は彼に上目遣いで「…シよ?」と言いましょう。第五は自分からコンドームを付けてあげましょう!もちろん口で☆第六は彼のモノを舐めてあげましょう!胸に余裕があれば挟んで舐めたら満点☆第七は自分から入れましょう!
「………無理ぃぃぃ!」
思わず膝に顔を埋めた。…え、私の胸にリヴァイさん…のが…。
思わず自分の胸を持ち上げた。挟め…なくはないか。
ゆさゆさと揺らして、挟むならこう?とかやっていると頭上から影がおりてきた。
「いい眺めだなぁ、ミラよ。」
「り、リヴァイさん?!こ、これはですね…っ!」
「…ほう、彼を誘う、ね。ミラはどうやって誘ってくれるんだろうなあ?」
「え…ぇ、と…。」
「じっくりと勉強の成果を見せてもらおうか、ミラ…。」
しゅるりとネクタイを外すリヴァイさんがとてもカッコ良くて見つめているとジリジリとにじりよってきた。
それに反応して思わず後退してしまう。
ドン、と背中がベッドにぶつかり、目の前には凶暴な肉食獣の姿。
もちろん、私が雑誌の七つの技全てをやらされたのは言うまでもないだろう。